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出掛ける前からジャズ気分:“攻め”のツアーを続ける旋律の魔術師(村井秀清Merged Images)

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家
村井秀清『ステップ・フォワード』
村井秀清『ステップ・フォワード』

テーマ曲や挿入曲の制作は独特のスキルを必要とする。主役である映像作品を差し置くのは論外だが、存在感がなさすぎても使う意味がなくなってしまう。おまけに時間の制約がことのほか厳しく、印象的なフレーズがタイムラインの適切な部分になければならない。これらをクリアして、聴いただけでその番組や作品のタイトルと映像が浮かんでくるようにさせるのは“職人芸”と言うべきだ。その“職人芸”の世界で確実に実績を積んでいるのが村井秀清。すでにこうした作品を集めたアルバム『マージド・イメージ』は第3集までリリースされている。

ボクが最初に村井秀清の存在を知ったのは、彼がコンテンポラリー・ジャズのピアニストとして活動しているライヴでのことだった。だから、流麗なピアノ・タッチでナチュラル系フュージョンの世界を自由に泳ぎ回っていた彼の姿と、制約だらけのスタジオ・ワークへの挑戦にギャップがありすぎて、うまく結びつかない時期があった。

そこで取材をする機会があったさい、ステージでアドリブを展開するときのようなひらめきと瞬発力で、課題にマッチしたメロディやアレンジを一気に生み出しているのかと聞いてみると、まったく違うと言うので驚いた。呻吟して練りに練る。なるほど、その行程があるからこそ、メロディに耐久性が生まれるのだろう。

その村井秀清、2014年は“攻めのライヴ・ツアー宣言”を掲げていた。3月のVol.1から7月のVol.5まで毎月、数日という短い日程ながら全国を回るツアーを続けてきた。Vol.6となる今回は仙台、水戸、東京、名古屋、大阪というスケジュール。さらに年内11月の前半と後半にも予定されているというライヴ三昧の1年だ。

これだけのスケジュールをこなせるのには、ミュージシャン側のモチヴェーションが高いことはもちろんだが、各地で待っているファンが多いという大前提があることを指摘しておきたい。それもまた、繰り返し聴きたいという村井秀清ならではのサウンド・マジックのなせるワザと言えるかもしれない。

東京でのライヴには、彼が2013年にリリースした最新ソロ・アルバム『ステップ・フォワード』にも参加していたチェロの結城貴弘をゲストに迎える。レギュラー組がツアーで熟成させてきたサウンドに、ゲストが醸し出す新たな彩りがどんな調和をもたらすのかーー。楽しみだ。

では、行ってきます!

●公演概要

村井秀清Merged Images『Live Tour 2014 Vol.06』

10月3日(金) 開場 18:00/開演 19:30

会場:ブルース・アレイ・ジャパン(目黒)

出演:村井秀清(ピアノ)、宮崎隆睦(サックス)、新村泰文(ドラム)、鈴木正人(ベース)、ゲスト:結城貴弘(チェロ)

♪村井秀清3rd Album『Step Forward』PV後半

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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