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「好きなことに夢中で取り組んできたのがここまでつながった」藤井聡太新棋聖、一夜明け会見全文まとめ

松本博文将棋ライター
写真撮影:悟訓

(藤井聡太棋聖、『探究 棋聖 藤井聡太』と揮毫した色紙を掲げてのフォトセッション後、記者会見)

司会「それでは棋聖獲得から一夜明けての会見を始めさせていただきます。それではまず主催の産経新聞様よりお願いします」

中島「藤井棋聖、おはようございます」

藤井「おはようございます」

中島「主催の産経新聞社の中島といいます。棋聖就任、おめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

中島「昨日もおうかがいしたところですけれども、改めまして、一夜明けて、棋聖就任のご感想をおうかがいしたいと思いますが、いかがでしょうか」

藤井「まだ棋聖獲得ということについてはあまり実感がないんですけど、これから徐々に実感する場面が増えてくるのかな、というふうに思います。今回、渡辺先生と五番勝負を戦えたということは、本当に自分にとって非常にいい経験になったなというふうに感じています」

中島「ありがとうございます。次にですね、先日も『ご家族との連絡どうでしたか』とお尋ねしたところですけども、昨日、宿舎に帰られてですね、ご家族と連絡があったり、連取ったりとかされましたでしょうか?」

'''藤井「あ、そうですね、昨日電話で家族に報告しました。喜んでもらえたのかな、というふうに思います」

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中島「何と報告されたんでしょうか?」

藤井「(笑顔で)家族も結果は知っているかな、と思うので、自分からは特に何も・・・だったんですけど『よかったね』というふうには言ってもらいました」

中島「お母様ですか? お父様に?」

藤井「母に、電話で」

中島「はい、次参ります。杉本先生とはどんなお話とかされましたですか?」

藤井「はい、師匠には昨日の会見の方にも同席していただいたんですけど。非常に喜んでいただいたと思いますし。先日、竜王戦の方で師弟戦があったんですけど(竜王戦3組決勝で弟子の藤井現棋聖が勝ち)なんというか、『竜王戦の方も頑張ってほしい』というふうに言われました(笑顔)」

中島「ありがとうございました。それで、色紙に『探究』と揮毫されたんですが、この思いについて教えていただけますか?」

藤井「このたびタイトルは獲得できましたけど、うーん、やはりまあ、将棋っていうのは難しいゲームで、この立場になっても『まだまだわからないことばかりだな』というふうに感じるので『これからも探究心を持って盤上に向かっていきたい』という思いを込めました」

中島「ありがとうございます。私からは最後の質問なんですけれども、藤井棋聖というふうに呼ばれてですね、慣れますでしょうか? どうでしょうか?」

藤井「(笑顔で)現状ではまだ慣れないという感じはしますけど、これから徐々に、タイトルホルダーとしての立ち居振る舞いだったり、そういったところを勉強していければなと思っています」

中島「ありがとうございました」

藤井「ありがとうございました」

司会「では他に質問のある方は挙手をお願いします。質問は一人一社一つまででお願いします」

柏崎「日本経済新聞の柏崎です。藤井棋聖どうも、昨日はおめでとうございました」

藤井「ありがとうございます」

柏崎「一個だけお聞きしたいんですけども、藤井棋聖、5人目の中学生棋士ということでですね、これまで4人の中学生棋士の皆さん、皆さんタイトル取られてて、藤井さんもそういう意味で期待される立場で、一部のファンからは『中学生棋士はタイトル取るのが義務だ』みたいなことを言われることもあったと思うんですけども、ある意味で義務を一つ果たされたことに、ほっとされたのか、どうなのか、どんな感想を抱いてらっしゃいますでしょうか?」

藤井「そのことについてはあまり、自分としては意識はしていなかったんですが。ただ、過去に中学生棋士になられた方というのは本当に、素晴らしい実績を残された方ばかりですので。少しでも近づけたのはよかったな、と思いますし、これからもそういった先輩方の姿勢を見て、自分自身成長できたらな、というふうに思っています」

福島「デイリースポーツの福島と申します。よろしくお願いします。先日、タイトル挑戦を決めた時の会見でも、デビューから4年でタイトル戦というのは、自分ではもうそんなに経ったのかなという気もする、ということもおっしゃっていたんですけれども。改めて17歳11か月でタイトルを取られたことを、ご自身の思い描いていた理想図、未来予想図といいますかね、に比べて早かったのか、遅かったのか、それともまあだいたいこれぐらいだったのか。どういうふうにそのへんお考えでらしたら、ちょっとうかがえますでしょうか?」

藤井「棋士になった段階でタイトルは当然目指してはいたんですけど、やはりなかなか遠いものでもあったので、棋士になってからの3年半の経験でなんとか成長できたというのが、今回の結果につながったのかな、というふうには感じています」

福島「ありがとうございました」

溝田「神戸新聞の溝田です。このたびはおめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

溝田「王位戦についておうかがいさせてください。棋聖戦、今回五番勝負を勝たれて、今度、王位戦第3局からは棋聖として木村王位と相まみえることになるかと思いますけれども、ちょっと改めて意気込みをお聞かせ願えますでしょうか?」

藤井「ここまで王位戦の方、2局指して、木村王位の力強い指し手に苦しめられる場面も多かったかなというふうに思うので、そのあたりを反省して、また第3局以降、いい内容の将棋を指せるようにがんばりたいな、というふうに思っています」

溝田「ありがとうございます」

粟田「サンデー毎日とかに書いてます、ジャーナリストの粟田と申します。このたびはおめでとうございました。おつかれさまでした」

藤井「ありがとうございます」

粟田「藤井さんの将棋を見てますと、相手が今回の渡辺さんとか、あるいは羽生永世七冠とか、ものすごい大棋士であっても、あるいはそうじゃない格下の人と当たっても、あるいはコンピューターであっても、何も関係なく盤面に集中してるだけだというような印象を持つんですけども、何か、目の前の人がこういう人だから、ということはあまり気にされない、将棋やってる中では、指してる中では関係ないんでしょうか? そういう印象を持っちゃうんですけど」

藤井「そうですね、しかしやっぱり、将棋というゲームは盤上を通じてのコミュニケーションという面もありますし。直接的ではないかもしれませんけど、相手の指し手を見て『こういう手もあるのか』と、まあそういったふうに思うこともありますし、相手の対局者によっても本当に、それぞれいろいろな発見があるのかな、というふうには思います」

粟田「はい、ありがとうございました」

池松「共同通信の池松です。おめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

池松「藤井さん、デビュー以来ずっとわれわれが取材してても『実力をつけたい』とかですね、非常に謙虚な言葉をずっと並べてらっしゃったと思うんですけれども、今回、一つ目標を達成されて、ご自身で、どこが一番成長されたと思っていらっしゃいますでしょうか?」

藤井「やはりプロになってから、トップ棋士の方とも対戦する機会を得ることができて、その中で自分の将棋の課題というのを見つけることができたかな、というふうに思っています。特に中盤の指し回しなどは、デビュー当時と比べたら成長できたのかな、というふうには感じています」

池松「わかりました、ありがとうございます」

長尾「毎日小学生新聞の長尾です。よろしくお願いします。藤井棋聖のような棋士を目指している、将棋をがんばっている小学生や、何か夢中になれるものを探しているような子どもたちに向けて、励ましのメッセージなどあったら教えていただきたいんですけれども」

藤井「自分としても、好きなことに夢中で取り組んできたというのが、ここまでつながったのかな、というふうには感じているので、好きなことに全力で取り組むということを大切にしてほしいな、というふうに思います」

渡辺「読売新聞の渡辺です。どうも、おめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

渡辺「藤井さんはこのところ、本当にトップの棋士の皆さまと戦って、このように結果も出てきたんですけども、これからまだまだ戦いが続く中でですね、今回の経験もふまえて、大勝負の中でどういうところをですね、大切にしていきたいというふうに考えているのか、考えを聞かせてください」

藤井「今回、棋聖戦であったり、王位戦についても、渡辺先生、木村先生に対して番勝負で教わるというのは非常に貴重な機会だというふうに感じていましたし、シリーズを通して成長したいという思いはありました」

津村「関西テレビの津村と申します。このたびはおめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

津村「先ほど『探究』という文字を掲げられてましたが、ご自身の中で、今後どういった将棋を目指されたいかなど、目標があれば教えてください」

藤井「自分の将棋はまだまだ課題が多いかなというふうに思っているので、どのような局面であっても少しでも最善に近づけるような対応力というのを伸ばしていきたいな、とは思っています」

津村「ありがとうございます」

村瀬「藤井棋聖、おめでとうございます」

藤井「ありがとうございます」

村瀬「朝日新聞の村瀬です。昨日の将棋の内容になるんですけれども。渡辺前棋聖はですね、終盤けっこう、藤井棋聖に意外な手を指されたようだったんですけれども。藤井棋聖自身は自分がわるいと感じてからですね、形勢を盛り返すためにどんなことを考えて、どんな展開に持っていこうというふうに考えたんでしょうか? たとえば△4六歩▲同銀に△2五金とかですね、△3八銀とか、飛車取りに打ったところとか、そういうところがけっこうポイントだったのかなあ、と渡辺前棋聖自身もブログで書いてるんですけれども。藤井棋聖自身は対局中、どんなことを考えて、どういうふうな展開に持っていこうと思ったのかということを教えて下さい」

藤井「中盤、渡辺先生の方に厳しく攻められて、受けに回る手もあったかなとは思うんですけど、なかなかうまく受かる手というのが見えなかったので、先手玉の方に少しなんとかいやみをつけて、勝負できればというふうには考えていました」

司会「それでは以上で記者会見終了させていただきます。ありがとうございました」

藤井(一礼し、記者会見場から退出)

(7月17日朝、関西将棋会館にて)

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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