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ペレスの打算。ハーランドは新ベルナベウの目玉になり得るか。

森田泰史スポーツライター
今季ブレイクしたハーランド(写真:ロイター/アフロ)

未来に向けて物事が動き始めた。レアル・マドリーが、ボルシア・ドルトムントのアーリング・ハーランド獲得を検討している。

2018年夏にクリスティアーノ・ロナウドがユヴェントスに移籍して以降、決定力不足を指摘されているマドリー。加えて、長年主力を張ってきたカリム・ベンゼマが32歳となり、新たなストライカーを確保する必要性が生じているところだ。

■ペレス会長の施策

フロレンティーノ・ペレス会長は近年、「若手推進プロジェクト」を進めてきた。マルティン・ウーデゴール、フェデリコ・バルベルデ、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ・ゴエス、へイニエル・ジェズス...。世界中の若き才能に早い段階で目を付け、彼らを手元に置いた。

また、昨年夏に補強した選手は、エデン・アザールとレンタル加入したGKアルフォンソ・アレオラを除き、エデル・ミリトン、フェルランド・メンディ、ルカ・ヨヴィッチと24歳以下の選手である。リーガトップの補強費3億300万ユーロ(約348億円)を未来への投資につなげようとした。

つまり、19歳のハーランドはペレス会長の補強策に合致する存在である。若くしてハーランドほどの得点力を見せつけていた選手は数少ない。20歳時点ではクリスティアーノ・ロナウド(16得点)、リオネル・メッシ(26得点)、ベンゼマ(28得点)、ズラタン・イブラヒモビッチ(22得点)、ロベルト・レヴァンドフスキ(3得点)といったプレーヤーでさえ、ゴールを量産できていなかった。

それだけではない。今季、大ブレイクしたハーランドの得点力は本物だ。今季、ザルツブルクとドルトムントの2クラブで公式戦33試合に出場して40得点を記録。レヴァンドフスキ(33試合39得点)、キリアン・エンバペ(33試合30得点)、チーロ・インモービレ(33試合30得点)、ティモ・ヴェルナー(36試合27得点)を退けて欧州5大リーグでトップスコアラーとなっているのである。

ハーランドの契約解除金は7500万ユーロ(約86億円)だとみられる。それは複数クラブに適用される契約解除金であり、そこにはマドリーも含まれているようだ。

■新ベルナベウのお披露目に向けて

そして、ペレス会長とジネディーヌ・ジダン監督の両者が獲得を望んでいるのがエンバペだ。2022年夏にパリ・サンジェルマンとの契約が満了するエンバペだが、現時点で契約延長のオファーに対して首を縦に振っていない。

パリ・サンジェルマンが2022年夏にエンバペをフリーで放出するとは考え難い。すると、2021年夏がエンバペの「売り時」となる。

一方、マドリーは現在、本拠地サンティアゴ・ベルナベウの改修工事を行っている。2022年までに新ベルナベウが完成する見込みだ。ペレス会長としては、新ベルナベウのお披露目にスター選手の入団会見を添えたい。ゆえに、そのタイミングでのエンバペ獲得が考慮されている。

レンタルバック濃厚なウーデゴール、台頭してきたF・バルベルデ、ヴィニシウス、ロドリゴ、レイニエルのブラジルトリオを中心にチーム作りが進められていく。そこにハーランドとエンバペが加わり、新銀河系軍団が新ベルナベウで華麗なフットボールを披露する。ペレス会長は、そんな青写真を描いているのかもしれない。

新型コロナウィルスの影響で、各クラブが資金のやり繰りに四苦八苦している。だがマドリーは選手たちのサラリーを10%カットしたものの、ERTE(レイオフ/一時解雇)を避けた。ペレス会長の「健全経営」が、大型補強の可能性を高めている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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