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勝つのは充実の豊島将之竜王か? 復調の羽生善治九段か? 延期されていた竜王戦七番勝負第4局始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月26日9時。鹿児島県指宿市・指宿白水館において第33期竜王戦七番勝負第4局▲豊島将之竜王(30歳)-△羽生善治九段(50歳)戦、1日目の対局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 七番勝負はここまで豊島竜王2勝、羽生九段1勝。第3局は豊島竜王の勝ちでした。

 予定では、第4局は11月7日・8日、福島県福島市でおこなわれる予定でした。しかし大きく報道された通り、羽生九段の体調不良により、日程は延期されました。

 こうした事情でタイトル戦が延期されるのは、史上はじめてのことです。ただし今年度はコロナ禍の状況の中、公式戦の延期はすでに何度かおこなわれていました。

 羽生九段の体調については、多くのファンが心配するところでした。そうした中、羽生九段の退院、対局復帰が発表されました。

 羽生九段は対局前日、ABEMAのインタビューに、次のように答えています。

羽生「おかげさまで、もう退院もしましたし。そのあとに対局も何局か指しているので、もう通常の状態というか、普通の状態に戻ったかなあ、というふうに思っています。数多くタイトル戦おこなってきて、初めて延期という形になってしまってですね。本当に多くの皆さまにご迷惑をおかけして、大変に申し訳なかったというふうに思っています。関係者の皆さまにはですね、本当に日にちがなくて、時間ギリギリのところで迅速に対応していただいて。とてもありがたかった、というふうに思っていますし。キャンセルする形となってしまった福島の皆さまにはですね、いつの日か、なんらかの形でお返しすることができたらいいな、というふうに今は考えています」

 羽生九段の今年度成績は15勝12敗です。

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 羽生九段は直近のA級順位戦で佐藤康光九段を相手に勝利を収めています。

 一方、豊島竜王の今年度成績は23勝14敗2持将棋です。

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 王将戦リーグでは羽生九段に勝ってプレーオフ(挑戦者決定戦)に進みました。

 これで両対局者の対戦成績は羽生九段18勝、豊島竜王19勝となりました。

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 また先日、豊島竜王は日本シリーズでも優勝するなど、充実したところを見せています。

 本局。対局場は指宿白水館。2017年、羽生九段はここで竜王に復位して永世竜王の資格を獲得。「永世七冠」を達成しました。

 8時47分、羽生九段。8時50分、豊島竜王。両者は対局室に姿を見せました。

 本局の立会人を務めるのは藤井猛九段(50歳)。竜王位を連続3期獲得した、竜王戦史上の主役の一人です。

 9時。藤井九段が対局開始の合図をします。

「それでは定刻となりましたので、豊島竜王の先手で対局を始めてください」

 両対局者は「お願いします」と一礼。豊島竜王は初手、飛車先の歩を突きました。

 後手番の羽生九段。第2局では豊島竜王得意の角換わりを受けて立ちました。本局も角換わりではないか。そう思われたところで、羽生九段は横歩取りに誘導します。

 先日の王将戦リーグ最終局も横歩取りでした。結果は先手の豊島竜王が勝ち。両対局者の間では、それまで後手番が10連勝という不思議な現象が起きていましたが、久しぶりに先手番の勝ちとなりました。

 進んで、豊島竜王が飛車を横に動かすモーションで3筋の歩を取り、横歩取りとなりました。

 横歩取りはここ90年ぐらい、先手の分がよいという認識が一般的でした。

 しかし後手番が何かしらの工夫をこらすことによってそのつど見直され、依然こうして、トップクラスの間でも指し続けられています。

 従来、後手番は2筋に銀を上がるのが一般的でした。最近では4筋に上がる形が流行しています。本局もまたそう進みました。現代最新の横歩取りが見られそうです。

 11時16分頃、豊島竜王は33手目を指しました。相手の歩を取った3筋に歩を伸ばす、この戦型のセオリー通りの一手。この先、難解な序中盤が続きそうです。

 竜王戦七番勝負の持ち時間は各8時間。1日目は昼食休憩をはさみ、18時の時点で手番の側が次の手を封じて指し掛けとなります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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