日本でいちばん屋上を愛する男-岡崎富夢の物語<前編>
屋上リビングを一気に庶民に手が届く価格にした男、岡崎富夢の物語。豪快な半生を語ってもらいました。
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赤坂の何の変哲もないビルの階段を上がっていくと、屋上にはバリと見紛うような光景が広がっていた。アジアンテイストのソファーにテーブル、簾、そして一番奥にはゆったりと浴槽が構えている。「ラグジュアリーテラス」というその空間には、肉を焼く匂いが水の滴る音とともにゆっくりと漂い、ついここが東京だということを忘れそうになる。
人生を謳歌する男。それを象徴するかのように豪快に笑う。ラグジュアリーテラスを世の中に生み出した経営者、岡崎富夢とは一体どのような男なのだろうか。
岩佐)富夢ちゃんは今どういうビジネスをやっているの?
岡崎)株式会社PASIOという会社でCOLORSというラグジュアリーテラスを作ってるんだ。
普通の木造戸建て住宅の屋根の代わりに屋上を作って、俺が選んだデザイン・機能に優れたダイニングセットやホームバー、ジェットバスなどの屋上に必須のアイテムをすべてパッケージで設置するのがCOLORS。高級ホテルのリゾートテラスにいるような気分を日常的に味わえる。それを住宅ローンに組み込んだら、月々1万円以下で若い家族が手にできるんだ。
直接的にライフスタイルを変えられる、最も費用対効果の高い住宅オプションだと思うよ。
俺のビジネスのすごいところはさ、お金をかけたらどれだけでもいい屋上は作れるけど、それを本当に一般の若い家庭でも手の届く価格に設定したことなんだ。
COLORSがあったら生活が変わるよ。単純に屋根の代わりに1フロア分の居住空間が増えるということもあるけど、空の下って心が開放されるんだよね。親子・夫婦・友人とのコミュニケーションが増えて1日が楽しくなる。心にも、空間的にも余裕が出てくる。そんな日々が続けば人生が豊かになる。俺は、そういう豊かなライフスタイルを屋上を通して日本に広めたいんだ。そのために、価格帯をまず一番に設定した。
屋上リビング、ラグジュアリーテラスは、昔は屋上庭園とか言っていたんだけど、実際は管理が大変で高いんだよね。使ってないところも多いし。ラグジュアリーテラスはそんな面倒なことなしに、最初から手軽に恰好つけられる。だって『うちで飲もう』と誘ってこのテラスが出てきたらそれだけでやばくない?俺も毎週のようにクライアントの社長を呼んで講義をした後ここで飲んだり、友人を呼んでバーベキューしたりして、最高だよ。
岩佐)富夢ちゃんはビジョナリーだし、夢もでかいし、豪快だし、昔からそんな感じだったの?
岡崎)俺は基本的には子どもの頃から全然変わってないね。同級生に会うと、『富夢は絶対社長になると思ってたよ』とみんなに言われる。23歳の時に起業家になろうと思ったんだけど、俺の周りに起業家はいなかったし、親父もサラリーマンだったから、イメージがつかなかったんだ。だからとりあえず大学へ行って、とりあえず前の会社に勤めたわけ。営業マンだったんだけど、めっちゃ売ったね。その時の目標は早く一人前になることで、同期で一位になって最優秀新人賞をとろうと思った。6月くらいには一人前になっていたね。最初の2か月くらいで一位になった。
そうして1年間、1分1秒さえ惜しんで努力して、1年目に最優秀新人賞をとることができたんだ。目標は達成したんだけど、それで迎えた2年目にはなんと、また全く同じ1年が待っているわけよ。これはあかんな、と思った。最優秀新人賞は1年目しかないわけで、それを達成したら2年目はもうモチベーションがないよね。なのに去年と同じことしているなあと。先輩を見たら、5年目の先輩も同じことしてるなあと。そこに夢はなかったね。これが雇われのプレーヤーであるということなんだと思った。それで、2年目のGW明け、マンネリ化に嫌気が差して辞表を出したんだ。
岩佐)23歳の時ね。でもその時に結局会社を辞めなかったのはなんで?
岡崎)その時俺を一番可愛がってくれていた上司の言葉で踏みとどまったんだ。「分かった。辞めたい理由は分かった。それで、辞めて何がしたいんだ?」と。これが結構俺の中では重要な転機で、辞めて何がしたいのかと言われたときに、何もなかったんだよね。その時にその上司から、「現状が不満で辞めても、次の会社も絶対また辞める。現状が楽しくないからと他にパラダイスのような会社を探しても、絶対また辞めるよ。何がしたいかがあって、それがこの会社ではだめでどこかの会社ではできるというのであれば、辞めてもいいと思う」と言われたんだ。
その上司からの言葉がきっかけで、俺は初めて自分の原動力やキャリアパスについて考えてみたんだよね。
俺もともと中学高校と、弱いテニス部のキャプテンをやってたんだけど、その時に最強の学校にしたんだよ。みんなで勝とうよと。鬼キャプテンと言われながらも、最後には下関で有数の強豪校になった時に、『富夢がキャプテンでよかった』と言われたんだよね。そうやってリーダーとして仲間と勝利する喜びを味わうという、原体験があったんだ。俺らジャンプ世代やん。ジャンプの3つのキーワードって知ってる?『友情、努力、勝利』。全部の漫画がそれなの。ドラゴンボールも聖闘士星矢も、全部仲間と努力して勝つというストーリーなの。週に一回全部読んでいたから洗脳されてたね。しかも当時ちょうど日産のカルロスゴーンが日産を復活させる時代だったんだけど、それに触発されて、よっしゃ、じゃあ俺もいずれそういうプロの経営者になろう、と思ったんだ。好き嫌いに拘らずどんな事業でも、どんなに赤字でも、俺が一人で乗り込んでいって立て直してやろう、という。
俺は「創造と変革」の「変革」側の人間だと思う。そうして辞めずに続けた会社で、文字通り大きな変革を起こすことになるんだ。
岡崎富夢
1977年1月23日、山口県出身。株式会社PASIO代表取締役。日本に「ラグジュアリーテラス」を広め生活を豊かにしたいとの思いから、株式会社PASIOを創業し「COLORS」という屋上テラスの開発・販売・施工を行う。