「神戸ビーフ」の淡路島で牛品評会 最高賞は気品漂う「いちふく」!
食料自給率100%以上を誇る食の島、兵庫・淡路島。全国的にはタマネギの産地として有名ですが、実は、おいしい牛が育つ島でもあります。有名ブランドである「神戸ビーフ」や「松阪牛」の6、7割は、淡路島で生まれ育った子牛です。
そんな淡路島に、2018年も牛の品評会、共進会のシーズンが到来しました。島内で飼育される牛のブランド力や生産者の意識を高めることが目的の共進会は、畜産農家たちの研さんの成果が試される島の一大イベントです。9~11月に島内で開かれる牛の共進会の一つ、9月11日に兵庫県淡路市で行われた「第14回淡路市畜産共進会」を取材しました。
18年の淡路市畜産共進会では、市内の91農家から出品された、17年生まれの繁殖用のメス160頭が「美」と「スタイル」を競いました。会場となった淡路家畜市場は、関係者らの熱気に包まれていました。皆さん、どの牛が共進会の最高賞「名誉賞」に輝くのか、興味津々です。老いも若きも、出品される牛の一覧が掲載された目録にメモをしながら、食い入るように牛たちを見ています。
共進会では、一次、二次、最終の3回審査が行われます。審査員を務めるのは、地元の淡路日の出農業協同組合畜産事業部の記虎貴部長ら牛のプロフェッショナル4人。月齢ごとに順調に育っているか、体形や肉質に子孫を残すのにふさわしい資質・品位があるか、輪かくの鮮明さといった体形のバランスなどから優劣を判断していきます。
生産者は、自分の牛の番号が呼ばれると、小屋内に待機している牛を審査場所に連れていきます。品位も重視されるため、暴れずに落ち着いて立っていることが要求されます。ブラッシングなどできれいに外見を整えられた牛たちが並ぶ様子は壮観です。牛のかたわらに立つ生産者から緊張している様子が伝わってきます。
顔から首のラインが美しい「いちふく」が名誉賞に
午前中の一次審査を通過したのは56頭、そのうち36頭が二次審査を通過し、最終審査に進みました。最終審査となると、さすがにどの牛も美しい。審査員だけでなく、審査の様子を見守る関係者の表情も真剣です。そんなことを知ってか知らずか、会場には牛たちの「ウモオーッ」「フモオーッ」という鳴き声が響き渡ります。
最終審査が終わると、いよいよ淡路市内で一番となる牛が発表されます。18年の名誉賞に輝いたのは、籾谷州彦さんが育てた17年5月生まれの「いちふく」でした。輪郭の鮮明さや顔から首にかけてのラインや毛並みの美しさ、良好な発育が高く評価されました。受賞の決め手となったのは、顔の美しさだそうです。
籾谷さんにとっては、17年の共進会で名誉賞に輝いた「まさふく」に続き、2年連続の受賞となりました。籾谷さんは、夏の猛暑を乗り切るため、いちふくにえさをよく食べさせ、換気扇を回して牛舎の温度管理を徹底しました。その苦労が実り、「いちふくはおとなしい性格で育てやすかったが、順調に大きくなってくれてうれしい」と喜びをかみしめました。
いちふくを含め、今回の共進会で上位に入った33頭は、9月29日に開かれる「第25回淡路日の出畜産共進会」に出品されます。さらに上位に入ると、「第100回兵庫県畜産共進会」に進むのです。牛たちの熱い戦いが繰り広げられます。
ちなみに、淡路市の畜産共進会は、「淡路牛」として島で育てるに値するかを調べる「保留検査」も兼ねています。いちふくをはじめとした牛たちは、3年間は島内で飼育され、その後、繁殖用として市場で売られたり、島内にとどまったりして子孫を残します。
共進会は、淡路島だけでなく、全国各地で開かれています。乳製品や野菜の販売なども同時に行われ、気軽に立ち寄れる共進会もあるので、興味がある人は行ってみてはいかがでしょうか。会場の独特な盛り上がりは、見ていておもしろいですよ。
撮影=筆者