習近平は中国の台湾侵略で払う代価を知るべき
台湾の蔡英文総統は、退任を前にイギリスBBCとのインタビューに応じ、中国による軍事侵攻の脅威に対し、「台湾侵略の代価を高めること」が抑止力になるなどと考えを語った。台湾総統府が18日、インタビューの内容を公表した。
台湾占領には大きな代価を払う
「台湾を占領することは大きな代価を払うことになります。中国の指導者は、そのような代価を払う準備ができているかどうかを慎重に検討しなければなりません」
蔡英文氏は8年に亘り総統を務め、明日5月20日、新総統に職務を引き継ぐ。蔡氏は就任中に、積極的にアメリカからの武器購入を進めた他、初の自主開発の潜水艦を完成させるなど台湾の防衛力強化に注力した。そうした方針について、中国の強大な軍事力を前に無駄ではないかという批判があると問われ、こう述べた。
「私たちがすべきは侵略の代価を高めることです。一つは軍事能力を強化すること、もう一つは地域の友好国と協力して共同の抑止力を形成することです」
中国の侵略の可能性は排除できない
蔡氏の就任中、中国は台湾周辺で軍事活動を活発化させた。台湾にとっては以前よりも中国の軍事的な脅威は高まったといえる。それに対し蔡氏は、「軍事衝突や中国の侵略の可能性は排除できないが、地域の関係当事者が協力して中国に実際に圧力を感じさせることが大事」と考えを示した。その上で、やはり侵略によって支払う代価について強調した。
「中国は事実を認識しなければなりません。戦争は経済発展上の代価を払わせ、中国の経済発展を数年あるいは数十年遅れさせる恐れがあります」
台湾は自国の一部だと主張する中国に対し、蔡氏は中国と距離を取り、台湾の主権を強調してきた。その中で、中国の習近平国家主席が台湾の武力統一のタイムテーブルを描いている、などという報道も何度かなされた。
習近平は怖いか?
蔡氏は、習近平氏が怖いですか?民主主義世界は習氏とその野望を恐れるべきですか?と問われ「恐れるほどではないですが、私たちは中国の発展を非常に慎重に見なければなりません。なぜなら、中国は世界の他の地域の不確定要素の源だからです」と応じた。そして次のような認識を示した。
「習近平氏には特定の計画があるかもしれませんが、私は明確な計画ではないと思います。世界は変化し中国の状況も変化しているので、彼はその計画を適宜、再検討し調整の必要があるかどうかを見なくてはいけません」
台湾では明日、新総統の就任式が行われる。蔡氏に代わり総統に就く頼清徳氏が就任演説で中国との関係をどのように語るかが注目される。
同性婚の合法化は「誇り」
台湾は、蔡氏の政権下の2019年、アジアで始めて同性婚を合法化した。その意義について蔡氏は「若い世代の希望であり、私たちが進歩的な価値を持つ先進国であることを意味します。その価値をどこまで推し進められるかは社会に対する試練」と述べた。そして「意見の相違を乗り越えて、皆が受け入れられる法案を一緒に作ったことを誇りに思う」と振り返った。
今月15日、蔡氏はアメリカのテレビ番組のコンテストで優勝したドラッグクイーンのニンフィアさんらを総統府に迎えた。それは台湾が守っている民主主義の価値を強調してきた蔡氏の功績を象徴する一幕でもあった。蔡氏はパフォーマンスを鑑賞し、謝辞と賛辞を送った。
「ニンフィアさんの成長の過程が、多くの台湾の若者に、恐れず本心のままで自分らしくいられるような勇気を与えると信じています」