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台風2号が那覇市付近を通過して西日本の南海上を東進 梅雨前線に暖湿気流入で線状降水帯が発生か?

饒村曜気象予報士
台風2号の雲と前線の雲(6月1日15時)

台風2号が那覇市付近を通過

 大型の台風2号が6月1日23時から2日0時にかけて那覇市付近、1時に沖縄市付近、2時に名護市付近を通過し、奄美諸島近海から西日本の南海上を東進しています。

 南西諸島では高波に厳重に警戒し、暴風に警戒が必要です。

 台風2号は、今後、東日本の南海上を通って、3日夜には温帯低気圧に変わる見込みです(図1)。

図1 台風2号の進路予報と海面水温(6月2日0時)
図1 台風2号の進路予報と海面水温(6月2日0時)

 台風2号は、発達の目安となる海面水温27度より低い海域を進んでいますので、一頃からみれば最大風速は弱まっていますが、最大風速が15メートル以上という強風域の範囲が広く、大型の台風となっています。

 このため、日本列島の梅雨前線に向かって広い範囲で暖かくて湿った空気を送り続けています(タイトル画像、図2)。

図2 予想天気図(6月2日9時の予想)
図2 予想天気図(6月2日9時の予想)

活発になってきた梅雨前線

 台風からの暖かくて湿った空気の流入で、梅雨前線の活動が活発となり、2日から3日にかけて、西日本から東日本にかけての広い範囲で大雨が予想されています(図3)。

図3 36時間予想降水量(6月2日6時から3日18時)
図3 36時間予想降水量(6月2日6時から3日18時)

 特に四国から東海地方は200ミリ以上、所によっては300ミリ以上の雨が予想されていますので、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒してください。

 ただ、懸念もあります。

 この予想雨量は、線状降水帯が発生していない場合の予想雨量です。

 気象庁では、中国地方と四国地方では2日午前中から夜にかけて線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があるとして、情報を発表しています。

【大雨に関する中国地方気象情報】

2023年6月1日16時0分 広島地方気象台 発表

(見出し)

中国地方では、2日午前中から午後にかけて、線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があります。1日夜のはじめ頃から2日夜遅くにかけて広い範囲で大雨となる見込みです。土砂災害、浸水害、河川の増水や氾濫に警戒してください。

【大雨に関する四国地方気象情報】

2023年6月1日16時1分 高松地方気象台 発表

(見出し)

四国地方では、2日午前中から夜にかけて、線状降水帯が発生して大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があります。土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫に警戒してください。

【 追記( 6月2日9時0分)】

 気象庁では、6月2日8時10分に、次のような「顕著な大雨に関する情報」を発表しました。

2023年06月02日08時10分 気象庁発表

 高知県では、線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いています。命に危険が及ぶ土砂災害や洪水による災害発生の危険度が急激に高まっています。

線状降水帯に関する情報

 線状降水帯は、次々と発生する発達した複数の積乱雲が一列に並ぶことで形成されます(図4)。

図4 線状降水帯の説明図
図4 線状降水帯の説明図

 線状の積乱雲の集合体です。厳密な定義はありませんが、気象庁では「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300キロメートル程度、幅20~50キロメートル程度の強い降水を伴う雨域」と説明しています。

 毎年のように、線状降水帯による顕著な大雨が発生し、数多くの甚大な災害が生じていますが、線状降水帯という言葉が頻繁に用いられるようになったのは、観測網が充実してきた「平成26年8月豪雨」による広島市の土砂災害以降です。

 ただ、発達した積乱雲が直線状に並んで長時間、大雨を降らせ続ける線状降水帯の発生を精度よく予測することは技術的に難しく、線状降水帯ができても、長期間存在し、しかもそれが停滞しなければ、一時的に猛烈な雨が降っても、総雨量はそれほど多くはなりません。

 気象庁では、令和2年(2020年)からの10年計画で「線状降水帯を含めた集中豪雨の予測精度向上」に取り組んでいます。

 とはいえ、令和12年(2030年)の計画終了まで待つことなく、完成した技術を用いた情報の発表を計画しています。その第1弾が、令和3年(2021年)6月17日より始まった「顕著な大雨に関する情報」です。

 非常に激しい雨が同じ場所で降り続いている状況を、「線状降水帯」というキーワードを使って解説する情報で、警戒レベル4相当(自治体が避難指示を発令する目安)以上の状況を示しています。

 そして第2弾が、令和4年(2022年)6月1日から始まった、早めの避難につなげるための「線状降水帯の半日前予報」です。

 現在は、国内を11の地域(北海道・東北・北陸・関東甲信・東海・近畿・中国・四国・九州北部・九州南部・沖縄)に分けての情報発表ですが、令和6年(2024年)には都道府県単位、令和11年(2029年)には市町村単位での発表が計画されています。

タイトル画像、図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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