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「ふつうの家族」じゃないとダメ? 誰もが「2分の1成人式」に悩まずに済む世の中に

大塚玲子ライター
(写真:アフロ)

*定形外家族に「あるある」な定番の悩み

最近いろんなところで話題になったのでご存じの方も多いと思いますが、昨今小学校で「2分の1成人式」というイベントが広まっています。成人の半分=10歳、つまり小学校4年生のとき、児童と保護者が体育館などに集まって、2分の1の成人を祝う、というものです。多くの場合、年明けの1~3月に行われます。

一見楽しげな催しですが、このイベントのため学校が子どもたちに、生まれたときや小さいときの写真を家から持ってくる、当時のエピソードを親から聞いてくる、などの指示を出すことが多かったため、さまざまな家庭環境、生育環境の子どもに対する配慮がないという点で、批判の声があがってきました。

とくにこの1年ほど、Yahoo!個人でもおなじみの内田良先生がこの問題を取り上げていることから、世間でも関心が高まっています。

このように「2分の1成人式」の問題が世に知られてきたことを、筆者はありがたく感じています。

筆者は編集者・ライターとして、ひとり親家庭、ステップファミリー(再婚家庭)、LGBT家族、里親・養親家族などなど、さまざまな形の家族の取材をしてきましたが、実際、それらの家族から共通して聞く「あるある」な悩みのひとつが、この「2分の1成人式」だったからです。

再婚家庭の継母や継父、里親や養親など、子どもの生育の途中から育児にかかわった親は、子どもの小さいころの写真やエピソードを求められても応えようがなく、辛く感じることがあります。

また対外的に「ふつうの家族」として暮らしている場合、このイベントによって真実が周囲に知れてしまうのを恐れる人もいます。

一方では離婚家庭など、子どもの幼少期(の家族の状況)を思い出すのを辛く感じる親もいますし、周囲の「ふつうの家庭」の子どもたちとわが子の違いに、引け目を感じてしまう場合もあります。

*いろんな形の家族が、当たり前に受け入れられる社会に

だったら、そんな家庭環境や生育環境に踏み込むような内容はやめれば済むじゃないか、と思われるかもしれません。

確かにその通りなのですが、ただ、それ「だけ」で終わりにするのも、違うと思うのです。

筆者が理想と思うのは、どんな家庭の子どもも親も、自分の家族の形に引け目をもたず、オープンにできるような社会です。

「お父さんと2人で暮らしています」

「おばあちゃんと、いとこのTちゃんと、3人で暮らしています」

「お母さんと、そのパートナーのSちゃんと、その子どものRちゃんと暮らしています。お父さんは別のところに住んでいます」

「お母さんが2人います」

「里親のパパとママと暮らしています」

「児童養護施設で、みんないっしょに暮らしています」

等々、それぞれの家族や環境を、誰もが隠すことなく、当たり前のものとして人に話せる社会になったら一番いいな、と思うのです。

しかし残念ながら、現実はまだまだ、そういう状況ではありません。

学校や社会は、「お父さん、お母さん、血のつながった子ども」という、いわゆる「ふつうの家族」を前提とすることが多く、それ以外の形の家族は「かわいそうな、変わったおうち」とみなされがちです。

そのような状況で、自分の子どもが「変わったおうちの子ども」であることを、わざわざ明かしたいと思う人は、あまり多くはないでしょう。学校のイベントで、そういったプライベートな情報を半ば強制的に開示させるのは暴力的なことと思います。

ですから現時点では、こういった内容はやめたほうがよいと筆者も思うのですが、それと同時に、これからは徐々に「いろんな形の家族が、実際にいるんだ」ということを社会で可視化し、それが当たり前に受け入れられる世の中にしていくことも必要と思います。

そのために、微力ながら情報を発信していけたらと思っています。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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