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本田圭佑に追い風ピュー。日本代表27人から削られる4人は誰か?

杉山茂樹スポーツライター
日本代表合宿初日(写真:田村翔/アフロスポーツ)

ガーナ戦の日本代表が発表された。

GK 川島永嗣(メス)、東口順昭(G大阪)、中村航輔(柏)

DF 長友佑都(ガラタサライ)、槙野智章(浦和)、吉田麻也(サウサンプトン)、酒井宏樹(マルセイユ)、酒井高徳(ハンブルガーSV)、昌子源(鹿島)、遠藤航(浦和)、植田直通(鹿島)

MF 長谷部誠(フランクフルト)、青山敏弘(広島)、香川真司(ドルトムント)、山口蛍(C大阪)、柴崎岳(ヘタフェ)、大島僚太(川崎)、三竿健斗(鹿島)、井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ) 

FW 岡崎慎司(レスター)、大迫勇也(ケルン)、武藤嘉紀(マインツ)、浅野拓磨(シュツットガルト)、本田圭佑(パチューカ)、乾貴士(エイバル)、原口元気(デュッセルドルフ)、宇佐美貴史(デュッセルドルフ)

 この27人のリストに名前が載っているか否かは、選手にとって大きな問題だ。まさに、シビアな判定が下された瞬間である。西野朗新監督にとって、これは事実上の初仕事。代表監督として1試合も采配を振るっていないうちから、高度な判断を迫られた格好だ。

 選ばれる人もいれば、落ちる人もいた。しかし、西野監督の判断が最も注目された知名度の高い3選手(本田、香川、岡崎)は、揃って27人の枠内に収まった。

 監督の交代は価値観の交代を意味する。ハリルホジッチを解任した理由は、なんのかんのと言っても、目指す路線の違いにあったはずだ。ハリルホジッチと西野監督の目指すサッカーは違っていなければならない。にもかかわらず、メンバー選考は、「西野色って何?」と言いたくなるマイナーチェンジに止まった。すなわち、”事件性”は低かった。

 知名度の高い選手、とりわけ海外組の落選は事件に相当するが、Jリーガーや若手選手の落選は騒ぎになりにくい。この27人の決定は、騒動が起きにくい無難な選択になる。

 西野監督の言動は常に控え目だ。言いたいことをズバッと言うことはない。慎重というより回りくどい言い方で、最後の最後に本音をポロリと呟く。人から突っ込まれることを恐れている様子にも見える。できれば敵を作りたくない、打たれ弱いタイプなのか。

 その結果だろうか。例の3人を含むベテランには甘い発表になった。27人のリストを見て、まず目にとまるのは30歳以上の選手の多さだ。その数9人(川島、東口、長友、槙野、長谷部、青山、本田、乾、岡崎)。実に全体の3分の1を占める。前回ブラジルW杯は5人(今野泰幸、遠藤保仁、大久保嘉人、川島、長谷部)。平均年齢でも今回は、前回を1歳上回り、27.8歳を示す。

 チームの高齢化は、その後の4年間に好ましくない影響を及ぼす。西野ジャパンはともかく、”日本”にとっては可能な限り避けたい、不都合な話なのだ。

 本田、香川、岡崎の中で、当確の匂いが最も漂うのが、本番直前に32歳の誕生日を迎える本田だ。そのポジションはどこなのか。27人の顔ぶれを見ながら想像すれば、8割方右ウイングになる。

 右サイドの話をすれば、それまでほぼ常連だった久保裕也が選外に漏れたことで、ライバルは1人減り、浅野のみになった。スピード系の浅野とキープ力のある本田。2人は編成的にも悪くない関係にある。

 左ウイングは原口、乾、宇佐美の3人で争う構図だ。おそらく、ここから1人落ちる。落選した中島翔哉(ポルティモネンセ)も、このポジションの選手なので、左は右より激戦だったことになる。

 この中で最も若い中島(23歳)が外れた理由について、西野監督は「ポリバレント(多機能性)ではない」と述べた。しかし、原口、宇佐美、乾の3人に、中島を上回る多機能性はあるのだろうか。

 原口は左のみだ。ハリル時代、右でプレーしたこともあったが、出来はサッパリだった。多機能型ではない。宇佐美も同様。所属クラブでは、原口と左右の関係を築いているが、適性があるのは明らかに左。右サイドでタテに抜いて出る雰囲気は持ち合わせていない。対応力が最も高そうな柔軟性を備えるのは乾だが、彼にしても適性が高そうなのは左だ。右の本田を脅かす存在とまではいかない。

 宇佐美、乾を右に持ってくるなら、本田を右で使う方が収まりはいい。やはり左候補の3人の中から1人、落選者は出る。そう考えるのが自然だ。

 本田に押し出される格好になった久保だが、西野監督は、彼の選考に含みを残す言い方をした。所属するゲントがプレーオフを戦っていることを考慮して選ばなかったとのこと。状況によっては追加招集もあり得そうなムードだ。

 その場合、浅野と本田のどちらかが外れる可能性が出る。ガーナ戦にはどちらが先発し、好プレーを見せるか。その出来次第では追加招集の動きに拍車がかかる可能性もある。

 とはいえ、そうなったとしても本田が有利に映る。左利きであることがその最大の理由だ。今回、車屋紳太郎が選外に漏れたので、招集された27人の中で左利きは本田ただ1人。本田を外してしまえば皆無になる。チーム構成のバランスを考えたとき、これは好ましい話ではない。本田にはそうした意味でも追い風が吹いている。

 本田、香川、岡崎の中で、本田の次に優位な立場にいるのは岡崎だ。ライバルの小林悠が27人の枠から外れたのは発表当日だそうで、ケガで治療に2週間ほど必要になったとチーム(川崎F)から連絡が入ったためだと西野監督は語った。岡崎の魅力と選考した理由について、西野監督はとうとうと語ったが、メンバー入りした理由は、小林の代役と考えるのが自然だ。

 小林は、川崎FではCFと右ウイングの2役をこなしている。つまり、彼のケガも本田には追い風になっている。

 しかし本来、小林の代役を探すなら、これまでの実績を踏まえれば杉本健勇だろう。ハリル時代にはコンスタントに選ばれていたし、それなりに出場し、まずまずのプレーを見せていた。

 今回、最も驚かされたのは、この杉本の落選だろう。西野監督の”好み”を垣間見た瞬間だ。相性が悪かったと言うしかない。その代わりに27人の枠内に飛び込んだのが武藤。まだ当選確実というわけではないが、彼の場合は逆に、監督との相性がよかったと言うべきだろう。

 監督の好みの話をすれば、西野監督のイチオシは今野だった。35人の予備登録メンバー決定後、ケガで参加が困難になり、対象から外れたとのことだが、西野監督はいかにも残念そうな顔で、その経緯について語った。

 青山の抜擢は、その今野の欠場と関係するものと思われる。今野(35歳)と青山(32歳)、そして長谷部(34歳)の3人を、守備的MFとして最初から同時に選ぶことはさすがにできないのだ。

 小林と今野をプレー不能な選手とすれば、出場可能な予備登録選手は33人になる。今回の発表されたメンバーが27人なので、可能性が残されている選手は、他に6人いる計算になる。

 確実なのは久保裕也1人だが、これまでの経緯を踏まえれば、西川周作、森重真人、車屋紳太郎、倉田秋、杉本健勇、堂安律らがそれに該当するような気がする。また、ガーナ戦メンバーから削られる4人は、ディフェンダー1人、中盤1人、アタッカー2人だろう。

 前にも述べたが、まず削られるべきはベテランだ。選手の寿命は延びているとはいえ、30歳超の選手が27人中9人もいるチームは健全とは言えない。23人中9人になったら、それこそ一大事だ。

 つまり、西野監督は香川の扱いを含め、ベテランを切るという難しい選択を、後に持ち越すことになった。喋りは別にしても、決断をズバッとしないと、監督としてのカリスマ性は生まれないと思うのだが。

(集英社 webSportiva 5月19日掲載原稿に加筆)

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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