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通算9本塁打の投手がバットを持ってオンデック・サークルへ。10本目のホームランを狙った!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ザック・グレインキー(カンザスシティ・ロイヤルズ)Aug 6, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月6日、先発マウンドに上がったザック・グレインキー(カンザスシティ・ロイヤルズ)は、打席にも立とうとした。

 4回表、2死一塁の場面だ。オンデック・サークルには、バットを持ったグレインキーがいた。MJ・メレンデスが討ち取られ、イニングは終わったが、出塁していれば、次はグレインキーだった。

 グレインキーは、レギュラーシーズンの通算600打席で、打率.225と出塁率.262を記録している。ホームランは9本、三塁打は1本、二塁打は29本だ。

 最後の2021年は2打席で2打数0安打ながら、この年のワールドシリーズは3打席で3打数2安打。3打席目は代打として起用され、ヒットを打った。当たり損ねではない、文句なしのクリーン・ヒットだ。

 ア・リーグに加え、ナ・リーグも投手は打席に立たない「ユニバーサルDH」となったのは、2022年からだ。短縮シーズンの2020年もそうだが、これは特例。その前と、2021年のナ・リーグにDHはなかった。

 2年ぶりの打席が実現しかけたのは、アクシデントによるものだ。2回表に捕手のサルバドール・ペレスが死球を受け、その裏から、DHのフレディ・ファミーンがマスクをかぶった。DHの解除により、ペレスの打順にはグレインキーが入ることになった。

 グレインキーは、4回裏も投げた。だが、5回表の先頭打者として打席に立つことはなく、代打を送られた。

 なお、ワールドシリーズの最後の打席は、第5戦のこちらも4回表、その時点のスコアも同じ4対5だが、アクシデントではなかった。この試合はDHがなく――第6戦以降はア・リーグのチームのホーム・ゲームなので、公式戦最後のDHなし――投手に打順が回ってきた。ヒューストン・アストロズのダスティ・ベイカー監督は、代打を起用したいと考えたが、試合中盤の1死走者なしで打者を使うのはもったいない、終盤に残しておきたいと思ったのだろう。そこで、前日の試合に投げ、投手としてはよく打つグレインキーに白羽の矢を立てたというわけだ。

 グレインキーは、今年10月に40歳となる。今シーズン限りで引退するかもしれない。ロイヤルズは、先月下旬から今月上旬にかけて7連勝を記録したものの、それでも、シーズン全体の白星は黒星の半数に届いていない。思い出作りというわけではないが、シーズンが終わるまでに、グレインキーを打席に立たせてもいいような気がする。

 また、グレインキーは、ホームランのみならず、通算盗塁も二桁にリーチをかけている。グレインキーの盗塁については、2年前にこちらで書いた。

「大谷翔平のわずか3年前に、同じ試合で「打点」と「盗塁」を記録し、「5三振以上」を奪った投手がいた」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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