将棋めしの「量」にも注目が集まった叡王戦第2局、永瀬七段が制して初タイトルへ視界良好
高見泰地叡王(25)に永瀬拓矢七段(26)が挑戦している第4期叡王戦(株式会社ドワンゴ主催)七番勝負の第2局は13日、北海道斜里郡「北こぶし知床ホテル&リゾート」で指され、19時39分、98手で後手の永瀬七段が勝ち、2連勝とした。
将棋めし
本局は将棋の内容と合わせて、将棋めしの「量」に注目が集まった。
昼食
高見叡王:鮭といくら親子丼御膳、牛かつ御膳(ご飯なし)
永瀬七段:うに丼御膳。
3時のおやつ(デザートはどれもローソンの商品)
高見叡王:プレミアムロールケーキ、とろけるティラミス、バスチー(バスク風チーズケーキ)、メロンソーダ、ホットコーヒー
永瀬七段:ビターチョコエクレア、とろけるティラミス、もっちりとした白いたい焼き、オレンジジュース、ホットコーヒー
夕食
高見叡王:海鮮丼とざるそば、たらばかにすき鍋と握り寿司御膳
永瀬七段:道産和牛のステーキ御膳
北海道ならではの海の幸と美味しそうなデザートにも目が行くものの、なんといっても注目すべきはその量だ。特に高見叡王は昼夜ともに2人前を注文している。
おやつは3品ずつ。そして永瀬七段はおやつとは別に10本分のバナナも注文している。
両者ともに食欲旺盛な年齢ではあるし、対局はエネルギーを使うものだが、それにしても尋常ではない食べっぷりに驚かされる。
横歩取り
さて将棋の内容について。序盤は、後手の永瀬七段が横歩取り戦法に誘導した。永瀬七段は今期叡王戦では後手番で横歩取りを選択するケースが多い。本戦1回戦では筆者に、本戦準決勝では郷田九段にそれぞれ横歩取りで勝利をあげた。その点ではゲンを担いだ意味もあったか。
現在のプロ棋界では横歩取りは青野流と呼ばれる対抗策に分が悪い。
現に、先日の第77期名人戦第1局千日手指し直し局では、佐藤天彦名人の横歩取りに挑戦者の豊島将之二冠は青野流で対抗して快勝した。
本局、高見叡王は青野流を採用しなかった。序盤戦は早いテンポで進んだこともあり、高見叡王は永瀬七段の横歩取りを予想していたことがうかがえる。おそらく青野流ではない格好に研究を定め、その研究範囲内で進んでいたのだろう。序盤は高見叡王のペースで進んでいた。
2度の「▲4七歩」
勝敗を分けたのは2度の「▲4七歩」だった。
この▲4七歩は飛車道を止めた手で、局後の感想によると△4九飛成▲同銀△2六金という攻めを嫌ったようだ。しかしやや消極的だったか。飛車道を止めるなら▲4五歩と飛車取りに打つのが勝ったように思う。
▲4七歩と打ったことで後手に△2三銀と活用する余裕を与えた。後にこの銀が2四~1五~2六と駆け上がって馬と交換になる大戦果を挙げ、後手に形勢が傾き始めた。
しばらく進んだ第2図。ここから▲7七玉△3七馬▲4七歩△6六飛▲同歩△5五馬と遊んでいた馬が急所にきては勝負あった。
第2図ではすぐに▲4七歩と打つほうが勝ったように思う。△6六飛▲同歩△5七馬の強襲は怖いが、▲7七玉と逃げれば後手の馬が1九に遊んでいるので後手も簡単には攻めきれない。
△5五馬以下は永瀬七段が押し切った。
第3局は新元号で
叡王戦七番勝負第3局は5月4日(土)に長崎県長崎市で行われる。
永瀬七段は3連勝とすればシリーズの流れを完全にものにできる。一方、高見叡王としてはなんとか一番返して流れを引き戻したい。
第3・4局は持ち時間3時間となるため、ぐっとスピーディーさが増しそうだ。
高見叡王は1局目の事前インタビューで「番勝負では持ち時間によって作戦を変えようと思う」と話していただけに、どんな作戦を採るか注目される。
第3局は元号が「令和」に変わって最初のタイトル戦の対局となる。おそらく「令和」で最初に決着のつくタイトル戦も叡王戦となりそうだ。その叡王戦を制して新時代の扉を開くのはどちらになるか。