好調ソニーの“命運”握るPS5の生産能力アップ【決算解説】
ソニーの2020年度第2四半期連結決算が発表されました。2020年7~9月期(3カ月)の売上高は、前年同期比並みの約2兆1135億円、営業利益は同14%増の約3178億円で、新型コロナウイルスの経済停滞にもかかわらず好調でした。
◇7年前の業績と天地の差
理由はゲーム事業(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)で、売上高が約5066億円、営業利益が約1049億円を稼ぎ、第1四半期(4~6月)に続いて好調でした。売上高に対する営業利益の率は、業種によって違いはありますが10%が合格ラインとされ、ゲームの事業は好調時に上振れしやすいとはいえ(不調になると下振れしやすい)、20%はホクホクでしょう。とはいうものの、数字が大きすぎてピンとこないかもしれません。そこで、7年前のPS4発売時の業績を振り返ります。
PS4発売直前の2013年7~9月期の決算ですが、ゲーム事業の売上高は約2685億円、営業利益は約46億円でした。発売開始時の2013年10~12月期の売上高は約4418億円、営業利益は約180億円でした。新型ゲーム機が出る前は厳しく、出た瞬間に売上高が跳ね上がるのが分かります。営業利益が売上高の10%どころか5%に届いておらず、7年前は相当苦しいことが伝わります。天と地の差があるのです。
ゲーム事業の今年度の中間決算(4~9月の半年)ですが、売上高は約1兆1127億円、営業利益は約2290億円です。そして「通期予想」から「中間実績」を差し引くと、残り半年(10月~2020年3月)の目標が見えます。目標到達までの残りの売上高が1兆5000億円、営業利益が800億円となります。PS5の発売で売上高が爆発的に伸びるのですね。
ただし、売上高の爆発的な伸びに対して、営業利益も比例して伸びたわけではありません。約4600万人の有料会員を抱え、巨額の安定収益が見込めるサブスクサービス(PSプラス)があるにもかかわらずです。要するに「ゲーム機本体から利益は出づらい」ことを数字が語っています。
◇PS5の生産 MSとの対決も
ゲーム事業としては、新型ゲーム機の発売直前で苦戦するはずの第2四半期(7~9月)を好調で乗り切ったことが大きく、この半年で“貯金”を稼ぎ、余力がある状況です。そしてさらなる大勝を狙い、勝負となるのは年末商戦の第3四半期(10~12月)です。ゲーム事業のミッションは、PS5本体を1台でも多く世界各地に並べることです。ネットで発言力の高いコアゲームファンの需要に対して、どれだけ速やかに供給できるか、消費者の興味を引き付けられるかが“命運”を握ります。
PS5の出荷数は、今年度中(~3月)にPS4の初年度(760万台)を上回りますが、現時点では不足の可能性が高いと言えます。「PS4 Pro」の生産を9月の段階で止めて(通常版は生産継続)、空いた分をPS5に割り当るのも、需要を見越しての判断でしょう。生産能力のアップは至上命題で、PS5は当面出せば出すだけ売れるでしょう。頑張りの結果が分かるのは、来年春の通期決算発表ですね。
同時に、ライバルであるマイクロソフト(MS)の新型ゲーム機「Xbox Series X」と「Xbox Series S」の動向も注視する必要があります。現行機でPS4とXbox ONEの対決は、割高だったXbox ONEが苦戦し、半年足らずでPS4の勝利で決着が付く流れになりましたが、今回は価格差もなく、むしろ低価格の「Xbox Series S」(299ドル)の存在は不気味でしょう。
また「巣ごもり効果」は継続していますが、経済活動の本格再開と共に一段落する兆候が見られます。PSプラスの会員の増加は第1四半期(4~6月)こそ350万人の大幅増でしたが、第2四半期(7~9月)は90万人増でした。他社のサブスクサービスでも、同様に会員数の急増が一段落しており、“ボーナスステージ”は終わりつつありますから、大勝負となる第3四半期(10~12月)のPS5の売れ行きは、今後数年にわたって大きな影響を及ぼすため注目です。