「これは大変、チェックだ」で誤誘導…御嶽山噴火に見る、ノイズな情報と釣りのはなし
気象庁でも先ほど公式に発表が成された通り、本日9月27日11時53分頃、長野県御嶽山で噴火が発生、同庁では同山の火口周辺の警戒レベルを平常状態の1から、入山規制の3に引き上げた(「火山名 御嶽山 噴火警報(火口周辺) 平成26年9月27日12時36分 気象庁地震火山部」)。
ほとんど予兆が無い状態での噴火ということもあり、噴火当時は周囲に少なからぬ登山客もいたことから、噴火の様子がツイッターや動画共有サイトに掲載され、一般報道よりも早い段階で御嶽山の噴火が知られることとなった。
↑ YouTube上で掲載されている噴火当時近くにまで足を運んでいた人の映像(YouTubeより)
一方、このような緊急性・速報性の高い状況ではありがちな、「とっさの判断の過ちを悪用した、誤誘導を狙ったニセ情報や情報の盗用」もすでに多数確認されている。
大よその手口は以前「動画の「慣れ」でトラブるダマシのテクニック」で説明した通り。「一刻も早く情報を見たい、確かめたい」とのはやる気持ちでチェックの優先順位が下がり、ついニセのリンクをクリックしたり、無意味な情報に誘導されてしまうというもの。要は「オレオレ詐欺」と同じ心理状況にあるツイッターや動画共有サイトなどの利用者がひっかかってしまうというものだが、動画共有サイトYouTubeではすでに複数の、その類の動画が確認されている。
ある程度時間が経つと情報も複数ルートから入るようになるのでコピーや編集の仕方も複雑になるが、早期の段階では大体このような「注目を集める対象のキーワードを盛り込んだタイトル」「該当する事案のサムネイル」で釣るスタイルが用いられる(中身は他のコンテンツのコピー)。またサムネイルで赤字や白抜き文字で大きく対象事案名が書かれていたり、「!!」が複数配されているものは、大体が中身は無く、アカウントへの登録や広告目当ての釣り動画で、検索の上ではノイズでしかない。さらにはアカウント名も大手報道媒体と類似する名称を使い、誤認させる手法も多々用いられている。
もっともこの手口は日本に限らず、海外でも同じなので、世界共通。恐らくは一両日中に、「サムネイルは噴火写真、タイトルも実況動画っぽいもの、しかし中身はドヤ顔で投稿主が他媒体のニュースを読みつつ、実質的に何の意味も無い語りで時間を埋める」といったスタイルのモノが登場するだろう。これも国内外問わずの傾向で、投稿主のファン以外にとっては、ノイズ的情報以外の何物でも無く、検索の上では単なる釣りでしかない。
以上は動画投稿サイトでの話だが、一方でツイッターなどのソーシャルメディアでは、実物は現時点では少数しか確認できていないものの、他者の「現場での実投稿写真」をあたかも自分が撮影したかのように披露する「コンテンツ盗用」、そして上記の「動画の「慣れ」でトラブるダマシのテクニック」で説明した通り、その書込みを釣りエサとして悪質なリンク先・ツイッターでのアプリ承認に連動する書込みが多数登場するのは、時間の問題と考えられる。
仕掛ける側はテンプレートを用意しておき、世の中で何か速報性の高い事案が生じたら、それに合わせてコンテンツを盗取してはめ込むのが常套手段。つまり詐称的行為をモデル化して、逐次新しいコンテンツを埋め込んでいくだけなので、似たようなスタイルでツイッターなどに登場するのはまず間違いない。
コピー動画やノイズ系動画、コンテンツの盗用による書込み・ツイート、さらには悪質アプリや悪質サイトへの誘導、いずれも行動理由は大きく分けて「注目を集めたい」「利益を得たい」のいずれか。そしてそれら動機そのものに問題があるのではなく、その手法に問題があるのは言うまでもない。
ソーシャルメディアの中でも特に足が付きにくく、情報のスピード感があるため、十分な考慮もせずにリンクをクリックしたり、公式のリツイートをしてしまいがちなツイッター上においては、十分以上に注意されることを強くお願いしたい。
もちろんこの注意は、今件の御嶽山での噴火に関する情報に限った話では無い。今後似たような速報性の高い事案が発生した時は、常に今件のような「釣り」のパターンがあることを思い起こしてほしい。
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