深夜まで賑わう繁盛店! ディープスポット「裏公設」で大阪焼鳥を味わう【鶏尽/沖縄】
今回、冒険するのは沖縄県那覇市の「鶏尽」。ここは大阪に本店を置きながら那覇に進出したという、一風変わった焼鳥屋。店名に「鶏にとことん尽くす」という意味が込められているように、焼鳥を1本1本丁寧に焼き上げる専門店だ。よくある若鶏だけでなく、奈良県の地鶏「大和肉鶏」を使っていることも見逃せない。
セットでも、アラカルト注文でも
那覇で飲みといえば、公設市場の裏手……通称「裏公設」がお決まり。真昼から堂々と始まる宴。迷路、迷宮のように入り組む通路に新旧様々な飲み屋がひしめく、沖縄県屈指のディープスポットだ。
その一角に「鶏尽」もある。カウンターは8席、店の外にもテーブルが1卓。若鶏だけでなく地鶏を扱っていることもあって周りの店に比べればどうしても値が張るものの、そこは「味で勝負」。連日・連夜、焼鳥好きで賑わっているらしい。
シックなカウンターに座り、早速のビールで喉を潤す。お通しは……まさかのガスパチョ。これがまたコク深く、酒にもよく合うわけだ。ほのかに、アンダルシアの香り。南国のじわりと熱を帯びる夜にピタリとくる。
胃がこなれたところで、メニューをのぞく。焼鳥は奈良県の地鶏「大和肉鶏」と朝びきの若鶏がメイン。おまかせのセットもあるのだけれど、「お好きなものを頼んでください」と店主の浜本さん。アラカルト注文もできるのだという。ちょっと悩んだものの……
せっかくだ。ここは大和肉鶏を中心に攻めることに決めた。
まずは地鶏の醍醐味ともいえる「かた」と「もも」から。淡泊ながら肉汁をたっぷりと含んだ肩肉は、1本目にふさわしいネタだ。続くももはフラットな串打ちで、パリリッ! とクリスピーな仕上がりがたまらない。うん。これは、いい幕開け。
そもそも、奈良県産の大和肉鶏は関東ではあまり馴染みがない。名古屋コーチンや軍鶏の血を引く地鶏で、脂の甘みよりも肉のうまみや弾力が際立つ鶏。「鶏尽」ではそれをたくましく、力強く焼き上げている。
さらに、砂肝。このジャクッ! とした歯触りを味わうと、焼鳥屋に来たことを実感するんだ。かた、もも、砂肝。大和肉鶏の串がテンポよく差し出される。
そう。「鶏尽」の焼き台は〝関西仕様〟。格子状に並んだ鉄棒に寝かせるように焼くのが関西流だ。鉄棒に触れている面が多くなるぶん熱伝導率もいいので、当然、焼き上がりも早い。せっかちさんも「鶏尽」ならきっとストレスフリー。
一品料理も沖縄の風が吹いている
せっかく来たなら、一品料理も味わいたい……。なかでも気に入ったのがこのポテトサラダ。3種だったか、ナチュラルチーズを加えていっそうコク深く。ポテサラの中に加えた軟骨のコリコリ感もアクセントになる。うーん。抜かりない。これは、酒も進むというもの。
それに、パリッパリのゴーヤチップスや紅芋ソース、鮮やかな花弁を添えているあたり、なんとも華やかで沖縄らしいじゃないか。
「パリピーチリコンカン?」と不思議に思い頼んでみれば、「パーティーピーポー」ではなく「パリパリピーマン」だった……。いや、いいのだけれど。
若鶏と地鶏の食べ比べも楽しい
ここで緩急を付けるように、若鶏の焼鳥にシフト。焼鳥屋だとささみはわさびや梅を添えて出されることが多いのだけれど、これは〝そのまま〟だ。
噛めばほむっとやわらかで、芯温もちょうどいい。意外だったのは、ほのかにわさびが香ること……。「わさびオイルで仕上げているんですよ」と浜本さん。
さらに、骨抜き手羽につくね。せっかく「裏公設」に来たならハシゴ酒も楽しみたい。「鶏尽」はこれで締めようと思っていたのに、あともう少し串を食べたくなってしまうのは焼鳥好きの性なのかもしれない……。
というわけで、大和肉鶏の抱き身と手羽元も追加だ。お、独特な串打ち。直前まで若鶏のネタを食べていたからか、このギュッとした肉質(とくに手羽元)、うまみが改めてうまく感じる。
浜本さんが「大和肉鶏はたたきもおいしいですよ」と言う。それを聞いて食べたくなったものの、ここは我慢、我慢。
そろそろ店を出て、裏公設でハシゴ酒に興じようと思っていたら、隣客に大きな焼きおにぎりが差し出されているのが目に入った。発酵バターをのせて炭火を押し当てればジュッ! と音を立てて煙が立つ。いいね。〆の演出まで抜かりない。
店を出る頃にはもう21時。いや〝まだ21時〟か。周りの飲み屋もいっそう熱気と活気を帯びてきた。昭和遺産ともいえる横丁の雰囲気。ノスタルジックな匂い。この独特な空気感は、他ではそうそう味わえないだろうな。
裏公設で焼鳥を摘まんで、せんべろのハシゴ酒へ。那覇の夜は、長くなるわけだ。
店舗情報
【店名】鶏尽 那覇店
【最寄り駅】牧志駅
【住所】沖縄県那覇市松尾2-11-13-1
【予約】050-5570-0965
【定休日】無休
【串のアラカルト】あり
【鶏メモ】大和肉鶏ほか