日本のアイドルとたこ焼きはモンゴルで受け入れられるか?(前編・アイドル編)
女性アイドルグループがステージに現れるや、ノリノリの音楽に合わせて歌い始めた。飛び跳ねたりペンライトを振ったりして声援を送る観客たち。だが、ここは日本ではない。モンゴルの首都ウランバートルで開催中のジャパン・フェスティバル・イン・モンゴリア。日本の商品と文化を伝えるため、今年初めて開かれた。そこに3組の日本のアイドルが招かれたのである。
スマホでペンライト「モンゴルの人って温かい」
最初にステージに登場した「FES☆TIVE」は6人組のアイドル。お祭りを意識したステージを展開する。去年もポップ・カルチャー・フェスティバルという別の催しでモンゴルに来ている。この国にどういう印象を持ったのだろうか?ライブ後に聞いてみた。
「この国では日本のアイドル文化って知られてないじゃないですか。例えばペンライトを振ったりというのも知らないんです。でも日本から来てくれたファンもいて、ペンライトを振っているのを見て、スマホを光らせて振ってくれたんですよ。モンゴルって温かい人がいっぱいいる国だなあって思いました」
「私たち、モンゴルは2回目ですけど、気温のことをすっかり忘れていました。暖かかった気がしていたので、着いたとたんに『あれ、寒くない?』って思って。ホテルのお店でマネキンがコートを着てるのを見て『そうだ、そういう時期なんだ』と思い出しました。昼と夜ですごく温度差がありますよね。半そでの服ばっか持ってきたんで寒いです」
モンゴルはカシミアが有名だから、買っていったら?とオススメしたところ、「最終日の自由時間にモンゴルで買い物をしていきます」とうれしそうに話していた。
下の動画はFES☆TIVEがモンゴルで披露した『ハレとケ!あっぱれ!ジャパニーズ』撮影・田口雄也氏(アイドル文化に詳しい)
アウェーかと思ったら…「女の子に受け入れられると また違ううれしさ」
次にステージに登場したのは「ワンダーウィード」。5人組で「かっこカワイイ」がテーマ。音はバンドサウンドをイメージしている。
ワンダーウィードも去年に続き2回目のモンゴルだ。彼女たちもFES☆TIVEと同じく好印象を語った。
「モンゴルはK―ポップ(韓国のポップソング)が主流ですよね。『日本のアイドルはアウェーかなあ』と思ってライブをしたら、そんなことないんですよ。携帯ライトをペンライトの代わりにしてくれたり、温かく迎えてくれたんです。きょうも要所で『フー!』とか歓声を送ってくれました」
「若い女の子(の客)たちが客席のノリを引っ張っていく感じですね。フリ(振り付け)もマネしてもらえて、うれしかった。日本だと若い女の子(の客)はこんなにいません。このイベント自体、いろんな日本のものを紹介しているから、女の子が来やすいのかな?」
「女の子に受け入れられると、また違ううれしさがありますね。今回のライブは少し自信になります。うれしかった」
下の動画はワンダーウィードの『バルタン星人』撮影・田口雄也氏
「私たちが日本のアイドル浸透の序盤に」
最後にステージに上がったのは「わーすた」。5人組のアイドルで、名前は「ワールド・スタンダード」からきている。「わーすた」は今回が初めてのモンゴルだ。世界標準をめざしアジアやヨーロッパなど各国でライブをしてきた彼女たちのパフォーマンスは、モンゴルで受け入れられただろうか?
「これまで行った国は事前にSNSで情報が出回ったんですけど、モンゴルはそれがなくて、『わーすた』のこと知ってるか不安でした。でもライブでは本当に盛り上がって、歓声もすごくて、音楽を楽しんでくれました。日本から来てくれたファンが最前列で盛り上がってくれたから、まわりにいたモンゴルの人もつられて躍ってくれたり、ファンをマネしている。一緒にライブを作ってくれる感じです」
「モンゴルは教科書で習ったイメージよりすごく発展していると思いました。おしゃれで自分の個性を持っている人が多くて、髪型もおしゃれでかっこいい。これからも発展するだろうし、また来たいです」
「私たちはカワイイを全面に出したライブをしていて、衣装もフリフリに憧れる女の子に好かれるんです。それがモンゴルの女の子にも受け入れられた。いろんな国に行きましたけど、モンゴルでは特に女の子に受け入れられました。すごく手を振り返してくれたり」
「日本の文化を愛してくれている方がこんなに多いんですね。アニメのコスプレしたり、日本が好きで来てくれる。アイドルのことはどのくらい知っているかわかりませんけど、単純に音楽を楽しんでくれているのが伝わりました。(日本の)アイドルが浸透していないモンゴルでやりがいがあります。これからアイドルが浸透していくように、私たちがその序盤になりたいです」
下の動画はわーすたの『最上級パラドックス』撮影・田口雄也氏
モンゴル進出のメリットは?
この催しは、日本とモンゴルの企業7社の協賛で開かれ、日本大使館も後援。17日と18日の2日間、50ほどの企業・団体がブースを並べ、日本の製品やサービス、文化を紹介している。
開催の中心メンバーの1人、中村功さん(48)は、モンゴルと日本のビジネス交流を支援する専門家で、JICAで働いている。モンゴル滞在歴は17年。現地では「コー」の愛称で呼ばれる。人一倍モンゴルを愛しているコーさんは、日本企業の進出が鈍いことに歯がゆい思いをしてきた。
「マンガ、アニメ、コスプレ。日本のポップカルチャーはモンゴルでも人気です。ところがアイドルは、モンゴルではK―ポップが全盛です。街中のコンビニも韓国資本です。モンゴルは世界有数の親日国で、日本企業が来れば相当有利なのに、なかなか進出しようとしない。『人口300万でしょ。商売にならないよ』と言うんです。でもそんなことはありません。モンゴルを押さえると、隣の中国の内モンゴルに進出しやすくなります。内モンゴルはモンゴルの数倍の人口があります。そこからさらに中国本土もにらむことができる。小さい国だけに、最初に足がかりを作るのは比較的容易です。今がチャンスです。他社に先んじてモンゴルで足場を築いてほしいんです」
次回は「たこ焼き」編
コーさんのアドバイスでモンゴルに出店したたこ焼き店がある。今回のフェスティバルにも出店している。18日に出す後編では、大阪のソウルフード、たこ焼きをモンゴルで広めようという関西人をご紹介する。
【執筆・相澤冬樹】