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Space X有人宇宙船クルードラゴン、米政府機関閉鎖で打ち上げ試験の遅延の見込み

秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
クルードラゴン宇宙船とFalcon 9ロケット。Credit: SPACEX

2019年1月に実施されるはずだった、スペースX開発の有人宇宙船クルードラゴンによる無人打ち上げ試験および国際宇宙ステーションへのドッキング試験は、米政府機関の閉鎖により1月17日の予定日から遅延が見込まれている。

Demo-1打ち上げ試験を待つクルードラゴン宇宙船 Credit: SPACEX
Demo-1打ち上げ試験を待つクルードラゴン宇宙船 Credit: SPACEX

2011年7月のスペースシャトル退役以来、行われていなかったアメリカ国土からの有人宇宙飛行を目指して、NASAは2014年にスペースXとボーイングの2社を開発企業として選定した。スペースXはクルードラゴン宇宙船を、ボーイングはCST-100:スターライナー宇宙船を開発し、それぞれ2019年には無人、有人の打ち上げ試験を経て今年後半にはISSへの宇宙飛行士輸送を開発する予定となっている。

スペースXのクルードラゴンによる無人打ち上げ、ISSドッキング試験は当初1月7日に行われる予定だったが、2018年12月初頭に行われたISSへの物資輸送打ち上げに伴うスケジュール調整のため、1月17日に延期されていた。

1月17日の試験では、地上設備やFalcon 9ロケットと宇宙船の統合、自律型ドッキングシステム、次回行われる有人打ち上げ試験に備えた着陸プロセスの確認などの試験が行われる予定だった。1月3日には、フロリダ州のケネディ宇宙センターの射点にFalcon 9ロケットとクルードラゴン宇宙船が登場し、準備が進められてきた。

1月5日に公開された準備中のクルードラゴン。搭乗設備と見られる。Credit: SPACEX
1月5日に公開された準備中のクルードラゴン。搭乗設備と見られる。Credit: SPACEX
1月5日に公開された結合後のクルードラゴンとFalcon 9。Credit: SPACEX
1月5日に公開された結合後のクルードラゴンとFalcon 9。Credit: SPACEX
1月5日に公開されたFalcon 9。Credit: SPACEX
1月5日に公開されたFalcon 9。Credit: SPACEX
1月5日に公開された準備中のクルードラゴン宇宙船。Credit: SPACEX
1月5日に公開された準備中のクルードラゴン宇宙船。Credit: SPACEX

しかしアメリカでは予算案をめぐって与野党が対立しており、政府機関の一部閉鎖が続いている。NASAの活動も閉鎖の影響を受けているほか、アメリカで民間有人宇宙飛行に関する許認可を担っている連邦航空局も政府機関閉鎖によって業務が停止している。SpaceXが現在持っているライセンスはドラゴン輸送船の打ち上げに関するもので、これがクルードラゴン宇宙船の打ち上げの場合も使用できるかどうかは明らかでないという。こうした影響により、1月17日のクルードラゴン打ち上げ試験はさらに遅れるとの見方が浮上している。NASAの民間有人宇宙輸送計画に関する状況はCommercial Crew Programの公式ブログで発表されるが、12月21日を最後にブログの更新は行われていないため、延期に関する状況は不明だ。

12月にはボーイングのCST-100宇宙船を搭載するAtlas Vロケットもフロリダ州ケープカナベラルに到着した。3月に予定されている無人打ち上げ試験への影響は不明。Credit: ULA
12月にはボーイングのCST-100宇宙船を搭載するAtlas Vロケットもフロリダ州ケープカナベラルに到着した。3月に予定されている無人打ち上げ試験への影響は不明。Credit: ULA

米政府機関の一部閉鎖は、トランプ大統領が要求するメキシコ国境での壁建設予算に関して与野党が対立する状況に端を発している。12月12日、国境の壁建設予定地付近にSpaceXのイーロン・マスクCEOが将来の民間宇宙港を建設する予定地となっているテキサス州の土地があり、壁建設により影響を受ける可能性があるとニューヨーク・タイムズ紙が報じた。

有人宇宙飛行と将来の火星植民構想を表明しているイーロン・マスクCEOだが、その重要なプロセスとなる有人宇宙船の開発がトランプ大統領の国境の壁建設構想に何度も阻まれるという事態が起きている。

サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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