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統一ミドル級王者、ゲンナジー・ゴロフキンは「咬ませ犬」とされたのか?

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
9.16、ドローで統一ミドル級タイトルを防衛したGGG(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 9月16日、WBA/WBC/IBF統一ミドル級王者、ケンナジー・ゴロフキンは、サウル・カネロ・アルバレスと引き分け、タイトルを防衛した。結果は、3者3様のドローであった。

 御存知のように、試合終了直後からジャッジの採点を巡って大論争が起こっている。特に非難の的となっているのが、8ポイント差で挑戦者カネロの勝利を唱えた女性ジャッジだ。カネロ側のプロモーターであるオスカー・デラホーヤでさえ、疑惑の目を向けている。

 私がここで思い出すのは、1999年3月13日にマジソン・スクエア・ガーデンで催されたWBA/WBC/IBF統一ヘビー級タイトルマッチ、イベンダー・ホリフィールドvs.レノックス・ルイス戦である。この時も3者3様のドローとなったが、ルイス勝利を唱える声が圧倒的に多く、8カ月後にリターンマッチが組まれた。そして、ルイスが勝者となった。

 ゴロフキンとカネロも、おそらく再戦となるだろう。ビッグマッチを2度手掛ければ、主催者は潤う。

 今回、私が引っかかるのは、両者のファイトマネーである。

 チャンピオンが挑戦者よりも安い。

 カネロの保証額が500万ドル(※1ドル=100円の単純計算で5億円)であるのに対し、チャンピオンのゴロフキンは300万ドル。ゴロフキンは、今年3月18日にダニエル・ジェイコブスを下したファイトでも、250万ドルしか約束されなかった。ミドル級最強のチャンピオン、Pound for poundファイターとしては、破格の安さだ。

 挑戦者の方が稼いだ点に、政治力を感じざるを得ない。こうした背景が、一人のジャッジをして、8ポイント差でカネロ勝利という採点になったのではあるまいか?

 現在35歳のゴロフキンは、4月8日にまたひとつ歳をとる。35歳とは、イベンダー・ホリフィールドが急激な衰微を見せた年齢でもある。36歳のホリフィールドは、坂道を転がるように衰えていった。

 

 ゴロフキンはベルトを守り、防衛を果たしたが、チャンピオンであるにもかかわらず、本人の知らぬところで負け役を宛がわれたのだとしたら……。私が長く追いかけた、あの3階級制覇の世界チャンピオン、アイラン・バークレーに通じるものがある(興味のある方は、是非、拙著『マイノリティーの拳』(新潮社)をお読みください。私が人生を賭けた1冊でございます)。

 今回の判定や悪条件に屈することなく、ゴロフキンにリターンマッチで胸の閊えを降ろしてほしいと願うのは私だけだろうか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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