Yahoo!ニュース

30歳を超えて急成長。引退を決意したアドゥリスが見せた意地。

森田泰史スポーツライター
バルセロナ戦のアドゥリス(写真:ロイター/アフロ)

ベテランの一発が、バルセロナを沈めた。

リーガエスパニョーラ開幕節、アスレティック・ビルバオ対バルセロナの一戦。スコアレスで迎えた後半42分、アンデル・カパが右サイドからクロスを送る。アリツ・アドゥリスが身を翻しながら鮮やかなボレーシュートを放ち、バルセロナGKテア・シュテーゲンが一歩も動けないまま、ネットが揺れた。

アスレティックの本拠地サン・マメスが歓喜に揺れる。そのなかで、喜びと哀しみが混じった声が、どこからともなく漏れ聞こえる。アドゥリス、辞めないでくれーー。素晴らしいゴールと、これから訪れる未来が、対照的な感情を引き起こした。

話は少し前に遡る。2019年8月9日に、アスレティックのファンに衝撃が走った。アドゥリスが、今季限りでの引退を表明したからだ。来年2月に39歳を迎えるアドゥリスだが、肉体的な衰えは感じさせない。そのアドゥリスがいなくなる喪失感は想像に難くない。

■年齢層

昨季リーガ序盤戦の10試合で、20歳以下の選手で試合に出たのは9選手のみだ。

ヴィニシウス・ジュニオール(当時所属レアル・マドリー)、フラン・ベルトラ(セルタ)、ペドロ・ポーロ(ジローナ)、クチョ・エルナンデス(ウエスカ)、ペルー・ノラスコアイン(アスレティック・ビルバオ)、マヌエル・モルラネス(ビジャレアル)、フェラン・トーレス(バレンシア)、ボルハ・ガルセス(アトレティコ・マドリー)、セルヒオ・モレノ(ラージョ・バジェカーノ)が檜舞台に立った。

彼らは460選手のうちの限られたプレーヤーである。

リーガの平均年齢は27,1歳で、過去10年で最も高いものだった。

■稀有な選手

しかし、アスリートでいえば、30歳という年齢はベテランと呼ばれる域に達する。ただ、その年齢から急成長を遂げた選手が、アドゥリスだった。

アドゥリスは、30歳を超えてから、149得点を記録している。アスレティックの選手では、サラ(30歳以降64得点)、ウルサイス(61得点)を優に超える数字だ。

先のバルセロナ戦で、アドゥリスは38歳186日で得点を記録した。リーガの最年長得点記録において、ドナト(40歳138日)、セサル(39歳279日)、ディ・ステファノ(39歳231日)、ベン・バレーク(38歳363日)、プスカシュ(38歳233日)に次いで、6番目に位置している。

試合後、アドゥリスはテア・シュテーゲンと抱擁を交わした。デポルティビダッド(スポーツマンシップ)に則る彼は、若い選手たちの模範だ。その姿を見られるのも、あと9カ月余り...。ノスタルジーを感じるのは、アスレティックのファンだけではないかもしれない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事