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韓国のテレビ、新聞は「安倍国葬」をどう伝えたのか?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
安倍晋三元首相の国葬(首相官邸HPから)

 安倍晋三元首相の国葬への韓国の反応は淡泊だった。歴史認識を巡り、また韓国に対して半導体素材輸出規制措置を取ったことから「安倍憎し」だったメディアの扱いも大きくはなく、客観報道に徹していた。

 ほとんどのメディアが一面で取り上げることはなく、国際欄で扱っていた。日韓関係絡みで取り上げたメディアは1紙もなく、国葬に関する特派員の現地ルポや日本のメディア報道を引用し、淡々と伝えていた。従って、韓国メディアの報道は見出しに表れているように「横並び」であった。どれもこれも国葬を巡り、日本の国論が真っ二つに割れたことにウェイトが置かれていた。

 韓国3大テレビの見出しをみると、「KBSテレビ」は「安倍81日ぶりに『国葬』を行う・・・割れた日本」、「SBSテレビ」は「『業績残した』vs『税金乱費』・・・岸田内閣を強打した『安倍国葬後爆風』」、そして「MBCテレビ」は「『花道』でも反対集会・・・混乱の中で」となっていた。

 「KBS」はニュースの最後を「安倍元総理が亡くなって2か月余の葬儀はやっと終わったが、国葬を巡る葛藤と分裂など日本社会はまたもう一つ新たな課題を抱えることとなった」と結び、「SBS」も「岸田総理は国葬を行う理由として『弔問外交』を強調していたが、G7首脳は全員不参加だった。国葬を強行した岸田内閣の支持率は20%台まで墜落していることから当分の間、岸田内閣に『国葬後爆風』が吹くだろう」との言葉でニュースを締め、「MBC」も「SBS」同様に「国民の半数以上が反対したのに弔問外交を名分に国葬を強行した岸田総理はG7の首脳が全員不参加したことで政治的負担を背負うことになる」と伝えていた。

 日刊紙では保守系大手紙「東亜日報」が「『独法的リーダシップ』vs『憲法を踏みにじる』・・・安倍国葬が行われた日、割れた日本」、「中央日報」が「安倍国葬の日、日本は二分された」そして「朝鮮日報」は「安倍最後の追送・・・4km弔問行列 国会までは『国葬反対』集会」の見出しを掲げていた。

 「中央日報」は「この日、東京の市内のいたるところで安倍元総理を追慕するための献花台を訪れる市民と反対の意思を表したデモ隊で混雑するほど国葬は厳しい国論分裂の中で執り行われた」と報じていたが、進歩派から親日的と揶揄されている「朝鮮日報」は記事の中では日本の世論が二分されていることについては旧統一教会系の「世界日報」(「日本安倍国葬始まる・・・韓悳洙総理、ハリス副大統領などが参席」)同様にほとんど触れることはなかった。

 この他に「京郷新聞」が「統一教癒着・国政乱費論議・・・安倍国葬、日本を二つに裂いた」、「韓国日報」が「最後まで論争的人物の安倍・・・『国論分裂』の中で行われた国葬」、日本に辛辣な論調で知られる「ハンギョレ新聞」が「安倍国葬、国会無視して強行・・・二つに割かれた日本」の見出しをそれぞれ掲げ、国葬を伝えていた。

 この中では「京郷新聞」だけが日本で政治問題化している旧統一教会を取り上げて「故人が亡くなって81日目に自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との癒着騒動の中で行われた国葬を巡り日本社会の賛否は分かれた」と報じていた

 経済紙では「アジア経済」が「論争の中、安倍国葬を強行・・・岸田総理『安倍業績は記憶される』」、「韓国経済」が「安倍国葬の日、割れた日本・・・市民献花一方で国葬反対集会」の見出しの記事を載せていたが、「ソウル経済」だけは前日にも「『岸田弔問外交惨事』・・・G7首脳全員不参加」の見出しの記事を掲げていたことから当日は「安倍国葬挙行・・・分かれた日本の民心」との表題を着け、写真だけを掲載していた。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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