未だ闇のなか 柔道教室の重大事故――日本で2例目の刑事裁判【傍聴リポート(1)】
日本で2例目、柔道事故の刑事裁判
2011年10月、日本でおそらく初めてであろう、柔道事故の刑事裁判で、柔道教室の指導者に対して有罪判決(罰金刑)が言い渡された。大阪市此花区で一年前の11月に起きたもので、指導者が小学1年の子どもを投げて死亡させた事案である。
そして今日30日、午前10時から長野地裁で、柔道事故では日本で2例目の刑事裁判(第8回公判)が開かれる。2008年松本市の柔道教室で、指導者が小学6年の澤田武蔵さんを投げて、重度障害(意識障害と全身麻痺)を負わせた事案である。検察審査会による二度の「起訴相当」の議決を経て「強制起訴」となった点でも、世間の関心が高い。今日は、被告人への質問がおこなわれ、さらには被害児の父親(「全国柔道事故被害者の会」副会長)も意見を述べるとあって、裁判は大きな山場を迎える。
未だ闇のなか
これまで日本の柔道で、30年間に118人の子どもが命を落としてきた。しかしこの言い回しは、厳密にはまちがっている。正しくは「“少なくとも”30年間に118人」というべきである。
118という数字は、学校管理下で起きた事例だけを指している。学校の外、つまり町道場などでのいわゆる「柔道教室」で起きた事例は、ここには含まれない。「30年間に118人」が一人歩きするいっぽうで、柔道教室の事故実態は未だ闇のなかにある。
小学生が事故に遭っている
柔道教室の事故実態がまったくわからないということは、深刻な事態である。なぜなら、柔道にたずさわる小学生の事故実態が見えてこないからである。小学生の場合、学校で部活動がおこなわれていること自体が数少ないし、柔道部を設置しているところはきわめて稀である。「30年間に118人」は、すべて(学校の部活動での)中高生の事例であり、そこに(柔道教室の)小学生の事例はまったく含まれていない。
今日の刑事裁判は、まさにその小学6年生(当時11歳)の事例である。松本市の柔道教室にて、初心者で身長146cm・体重43kgの子どもを、柔道4段で身長180cm・体重80kgの指導者が「片襟体落とし」という変則技で投げ、事故は起きた。午前10時から、指導者に対する被告人質問がおこなわれ、さらに父親も証言台に立つ。
[写真:第四高等学校武術道場「無声堂」 Photo by (c)Tomo.Yun http://www.yunphoto.net ※写真は本文の内容に直接関係するものではありません。]