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藤井聡太棋聖、防衛5連覇&永世棋聖資格取得か? 山崎隆之八段、巻き返すか? 7月1日、棋聖戦第3局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月1日。愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」において、ヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負第3局▲山崎隆之八段(43歳)-△藤井聡太棋聖(21歳)戦がおこなわれます。棋譜は公式ページをご覧ください。

 第1局は山崎八段先手で相掛かりに。結果は90手で藤井棋聖の快勝となりました。

 第2局は藤井棋聖先手。後手の山崎八段は向かい飛車に振りました。藤井棋聖は攻防ともに完璧に近い指し回しを見せ、111手で勝利をあげました。

 ここまで2連勝の藤井棋聖はあと1勝をあげるとシリーズを制し、防衛、5連覇を達成します。

 第3局の先手は山崎八段となります。対局開始は9時。持ち時間は各4時間(ストップウォッチ形式)です。

藤井棋聖、史上最年少で永世称号資格取得なるか

 将棋界のタイトル戦において、抜群の成績を残した棋士は、永世称号の資格を得られます。

 永世棋聖の条件は、通算5期獲得です。過去にそのハードルをクリアした棋士は大山康晴、中原誠、米長邦雄、羽生善治、佐藤康光の5人しかいません。

 棋聖戦が1年2期だった1971年。中原誠棋聖(当時23歳11か月)は通算5期目の棋聖位を獲得して、永世棋聖の資格を得ました。これが全タイトル戦を通じての、永世称号獲得の最年少記録です。

 もし今期、藤井棋聖(現在21歳11か月)が永世棋聖の資格を得ると、中原永世棋聖の最年少記録を更新することになります。

 将棋界の主要な最年少記録を次々と更新してきた藤井棋聖。ここでもまた、新たな金字塔を打ち立てることになるのでしょうか。

藤井棋聖、八冠から後退して初の一局

 藤井棋聖の今年度成績は8勝4敗です。

 6月20日、藤井叡王は叡王戦五番勝負第5局で伊藤匠七段に敗れ、2勝3敗で叡王位を失いました。

 藤井七冠にとって本局は、叡王戦閉幕以後、最初の一局にもなります。

山崎八段、ちょいワルの状況を跳ね返せるか?

 将棋界では七番勝負で3連敗した側が4連勝を返した例は、過去に2回ほどしかありません。しかし五番勝負で2連敗した側が3連勝を返した例は、しばしばあります。「ちょいワル」の状況からの逆転が山崎将棋の真骨頂。ここからカド番をしのぎ、巻き返しとなるでしょうか。

 藤井棋聖と山崎八段のこれまでの通算対戦成績は、藤井3勝、山崎1勝です。

6月30日夜追記

 6月30日午前に放映されたNHK杯1回戦▲山崎隆之八段-△藤本渚五段戦は216手という大熱戦の末に、藤本五段の勝ちでした。山崎八段の今年度成績は8勝5敗となりました。

 6月30日の前夜祭では、両対局者は次のようにあいさつしていました。

山崎「3局目、残念ながら追い詰められてきてしまったんですけども。体調とか、調子がわるいわけではなく。ただ自分の力を、読みを上回られた手を指してっていうことがありますので」「自分のベストを尽くして戦いたいと思います」

藤井「明日の対局は本当に多くの方に注目していただけるものにもなるかなと思いますし。また地元での対局でもありますので、いい将棋をお見せできるよう、全力を尽くしてがんばりたいと思っています」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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