強力エルニーニョ 影響拡大に懸念
エルニーニョ マグロ漁に影響か
世界気象機関(WMO)は16日、記録的な規模へと発達を続けるエルニーニョに対して、太平洋の島々に警戒を呼びかけました。
リスクが高まることとして、熱帯低気圧(台風)、大雨、干ばつ、海面の上昇などを挙げていますが、この異例ともいえる呼びかけは、エルニーニョの影響の拡大、深刻さを物語っていると思います。
そのなかでも、目に留まったのがマグロ漁への影響です。
エルニーニョは海面水温が高くなるだけでなく、海洋内部の水温も大きく変化します。海洋内部、数100メートルまで水温が高くなり、「水温躍層」と呼ばれる、上下方向に水温が激しく変化する層の位置も変わります。これらがマグロの漁獲に影響するとみられています。
もともとのエルニーニョとは、南米ペルー沖の海面水温が毎年、クリスマス頃になると高くなり、アンチョビ(カタクチイワシ)が取れなくなってしまう季節的な現象を、漁民が「El Nino」と呼んでいたことから始まりました。
今では世界的な異常気象を引き起こす現象として有名になりましたが、海洋への影響がより直接的であることは間違いないでしょう。エルニーニョが私たちの食卓にも関係すると思えば、そう遠い話ではなくなります。
強力に影響? この冬の天候に
台風シーズンが終わると、冬の天候予想に注目が集まるようになります。
気象庁は23日、向こう3か月間の天候予想を発表しました。
11月から1月までの気温は東日本、西日本、沖縄・奄美で高くなる見通しです。
北極からの寒気が日本列島に流れ込みにくくなるためで、エルニーニョを強く意識した予想です。
この冬の天候に、エルニーニョが強く影響すると予測しているのは日本だけではなく、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドでも同様です。
エルニーニョはまもなく12月ごろ、ピークを迎えるとみられています。過去最大だった1997年ー98年に匹敵する規模で、気象関係者の熱い視線が集まっています。
しかし、エルニーニョだけで冬の天候が決まるわけではなく、ひとたび、偏西風が大きく蛇行すれば、日本列島に強い寒気が流れ込む可能性も十分にあります。
米気象専門家の「El Nino is not the only player」という言葉が心に残りました。
【参考資料】
気象庁:エルニーニョ監視速報(No.277),平成27年10月9日発表
気象庁:向こう3か月の天候の見通し11 月~1 月,平成27年10月23日発表
世界気象機関(WMO):Regional Statement on the El Nino and Potential Impacts for the Pacific Islands,16 October 2015
欧州中期予報センター(ECMWF):Strong El Nino continues to warm,16 October 2015
米海洋大気庁(NOAA):Strong El Nino sets the stage for 2015-2016 winter weather,October 15 2015
オーストラリア気象局:Climate outlooks ー monthly and seasonal
エルニーニョと漁業(1989):水産海洋研究会報,53(1),56-87