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【フィギュアスケート】羽生結弦がNHK杯会見で最も和んだ瞬間

矢内由美子サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター
NHK杯フィギュアの会見に臨んだ(左から)羽生結弦、田中刑事、日野龍樹

フィギュアスケートGPシリーズ最終第6戦のNHK杯に出場する日本勢が11月24日、開催地の札幌市内で公式会見に臨み、意気込みを語った。

昨シーズンのこの大会で当時の世界歴代最高得点をマークした羽生結弦(ANA)は、今回も最高得点を更新できる状態にあるかと聞かれ、「はい、できる状態です」と即答。2位だったスケートカナダ以降の3週間余りの期間に「スケーティングの質を上げつつ、ジャンプにもしっかり集中しつつという練習をしてきた」と言い、自信を覗かせた。

よどみない口調の中に、強気とリラックス感を溶け込ませていた羽生だが、この日の会見で和やかなムードをつくり出していたのが、羽生と同学年の田中刑事(倉敷芸術科学大)と日野龍樹(中京大)の存在だ。

94年11月22日生まれの田中、94年12月7日生まれの羽生、95年2月21日生まれの日野の3人は小学生時代からのライバルであり、大切なスケート仲間。この3人が初めてGPシリーズで競う場となったのが今大会なのだ。

以前、羽生は「同期の3人の中で3回転ができるようになったのは僕が一番遅かった」と話していた。羽生は4度出た全日本ノービス選手権では1年目と4年目に優勝しているが、2年目は2位、3年目は3位。「そのときはまったくジャンプが跳べなくて号泣した。なんで僕だけ跳べないんだ、って」。日野や田中に負けたくないとの思いが、羽生のモチベーションでもあった。

羽生が10―11シーズンからシニアに上がり、田中も14―15シーズンからシニアに参戦。その間、苦しい時期の多かった日野も、今回、欠場選手が出たことで出場チャンスをつかんだ。日野は、会見の冒頭で抱負を聞かれると、謙虚な言葉を並べ、会場を和ませた。

「NHK杯は長年出たかった大会。“こんな演技をするなら僕の方が良かった”と他の選手が思うようなことにならないよう、出るに値するような演技をできるように頑張ります」

日野のコメントを聞いて、ずっこけるような笑顔を浮かべ、誰よりも嬉しそうに微笑んでいたのが羽生だった。

3人がそろい踏みを果たしたことについて聞かれた羽生は、「NHK杯という由緒のある舞台で一緒に戦えるのは非常にうれしい。もちろんライバルだが、敵とかライバルとかというよりも、同じ舞台で同期と一緒にスケートができることがうれしい」と、感慨深そうに言った。

日野龍樹が抱負を語ると、思わず表情を崩した羽生結弦(撮影:矢内由美子)
日野龍樹が抱負を語ると、思わず表情を崩した羽生結弦(撮影:矢内由美子)
その後、互いに顔を見合わせた。田中刑事も含めて3人が和んでいた(撮影:矢内由美子
その後、互いに顔を見合わせた。田中刑事も含めて3人が和んでいた(撮影:矢内由美子

「ほとんど同じです」とこちらも笑いを誘いながら話し始めた田中も、「同じカテゴリーで同じ試合で3人で戦うことができてほんとうにうれしい。羽生君がトップに行っているのでもっと追いつきたい。頑張らないといけない」と言葉に力を込めた。

「ようやく同じカテゴリーで同じ国際大会に出られてとてもうれしいですが、僕はまだまだ一緒に競い合える相手になることができていない。いつになれば競い合えるのか分からないけど、そこに向けての弾みになる大会にできたらいい」。日野は最後まで羽生を笑わせ、場を和ませていた。

25日に行なわれる男子シングルSPの滑走順は田中が第1グループの4番滑走、日野は第2グループの2番目となる7番滑走、羽生が第2グループの4番目となる9番滑走となった。

「今できること、今の構成、今の自分の最高を目指してしっかりやっていきたい」と羽生はよどみなく言った。3位以内でGPファイナル進出が決定するNHK杯。同期とともに競い合った少年時代の思いも甦らせ、頂点へ向かう。

サッカーとオリンピックを中心に取材するスポーツライター

北海道大学卒業後、スポーツ新聞記者を経て、06年からフリーのスポーツライターとして取材活動を始める。サッカー日本代表、Jリーグのほか、体操、スピードスケートなど五輪種目を取材。AJPS(日本スポーツプレス協会)会員。スポーツグラフィックナンバー「Olympic Road」コラム連載中。

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