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紅白出場者ゼロ報道の裏側で注目すべき、Travis Japanとなにわ男子の新しい一歩

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:Travis Japan公式サイト)

年末が近づき、出場者が注目されている今年のNHK紅白歌合戦ですが、旧ジャニーズ事務所所属タレントが今年は出場しないことが濃厚という報道がされ、話題になっています。

参考:旧ジャニーズ事務所、NHK紅白歌合戦「出場者ゼロ」濃厚 方針変わらず近日中発表 44年ぶり

まだ公式発表ではありませんので、現時点では真偽のほどは分かりませんが、NHKは、地上波テレビ局の中では、過去に局内でも性加害問題があったと告発されたこともあり、最もジャニーズ性加害問題に対して厳しい姿勢を見せているため、報道の通りになる可能性は低くないと言えるでしょう。

現時点では、旧ジャニーズ事務所の所属タレントの移籍先となる予定の「新エージェント会社」が、設立時期はもちろん名称すら公募の結果が出ていないことを踏まえると、仕方が無い状況と言うこともできます。

ただ「新エージェント会社」の来年の活動を占う上で、大きな分岐点となるニュースが今週立て続けに発表されましたのでご紹介しておきたいと思います。 

「D.U.N.K. Showcase」にTravis Japanの出演決定

まず、一つ目の大きなニュースと言えるのが、12月に開催される音楽フェス「D.U.N.K. Showcase」にTravis Japanの出演が決定したというニュースです。

参考:Travis Japan、『D.U.N.K. Showcase』初出演へ 京セラ大阪2日目に登場「かましたいと思います」

ある意味、1つの音楽フェスに、1つのグループが出演するという意味では、そんなに大きなニュースに聞こえない方も少なくないかもしれませんが、これは業界的には非常に大きいニュースと言えます。 

業界への問題提起とともに立ち上がった「D.U.N.K. 」

なにしろ、「D.U.N.K.」を立ち上げたのはBE:FIRSTやMAZZELなどが所属するBMSG代表のSKY-HIさん。BMSGは、従来であればジャニーズ事務所の所属タレントとの共演が忖度によって避けられる存在だった事務所の1つになります。

しかも、「D.U.N.K. 」自体が、「ダンス&ボーカルシーンに垣根のない新たなカルチャーを作る」というビジョンで立ち上げられた企画。

発表会ではSKY-HIさんが「所属しているコミュニティ以外とのコミュニケーションが何かタブーであるかのような、あってはいけないかのような空気があったかと思うんですが、そういったものをなくしていこう」と発言されていたように、あきらかに従来のジャニーズ事務所に対する忖度的なものへの問題提起としてはじまったものです。

第1回の開催が発表された当時、ジャニーズ事務所がこの企画に参加することはないだろうと多くの業界関係者が口を揃えて話していたことを良く覚えています。

その「D.U.N.K. 」にTravis Japanが参加を表明したことは、非常に大きな一歩であると言えるでしょう。

「D.U.N.K.」の成功による空気の変化

この状況の変化の背景には、間違いなく、3月に開催された第1回の「D.U.N.K. Showcase」に、LDHやHYBEなど様々な事務所に所属するアーティストが参加して、大成功のスタートを成し遂げたことがあります。

この「D.U.N.K. Showcase」の成功を受けるように、7月にはTBSが放送した「音楽の日」において、さまざまな事務所から参加した90名によるダンスコラボ企画が開催。

この企画において、Travis Japanが、BE:FIRSTと自らの楽曲である「JUST DANCE」のコラボを披露するなど、事務所の壁を越えたコラボを行ったことは大きな分岐点と言えます。

参考:「音楽の日」でTravis JapanやBE:FIRSTなど90名が、ダンスコラボを披露した意義

今回のTravis Japanの「D.U.N.K. Showcase」出演は、ある意味この時から予想できた出来事と言えるかもしれませんが、テレビの音楽番組でコラボをするだけでなく、他事務所が主導するイベントへのTravis Japanの出演にGOがでた意味は間違いなく小さくありません。

ただ、一方でTravis Japanは、旧ジャニーズ事務所所属タレントとしては、初めて米国の音楽レーベルから世界向けにデビューを行った「特別な」グループであり、だからこそ、こうした事務所横断コラボが容易なのだという見方もありました。

そういう意味で、もう一つ重要なのが、今週発表されたコラボ企画です。

ベストヒット歌謡祭で、なにわ男子がコラボ発表

二つ目の大きなニュースと言えるのが、11月16日に生放送される「ベストヒット歌謡祭2023」において、なにわ男子が、INIとBE:FIRSTとコラボメドレーを実施すると発表されたものです。

(出典:ベストヒット歌謡祭公式SNS)
(出典:ベストヒット歌謡祭公式SNS)

参考:INI×なにわ男子×BE:FIRST、同期3組コラボメドレー決定「ベストヒット歌謡祭2023」特別企画発表

なにわ男子は、Z世代が選ぶ2023年上半期に流行ったアイドルランキングで1位に入るなど、これからの「新エージェント会社」でも中核の1つになると考えられているグループです。

旧ジャニーズ事務所の社長であった藤島ジュリー社長のお気に入りと報道されることも多かったグループでもありますが、そんなグループが、今回Travis Japan同様に異なる事務所とのコラボを実施するというのは非常に大きなニュースと言えるでしょう。

Travis Japanが作った他事務所とのコラボという新しい道に、なにわ男子が一歩を踏み出そうとしているわけです。

事務所横断のコラボが普通になる日に向けて

今回のTravis Japanの「D.U.N.K. Showcase」出演や、なにわ男子の他グループのコラボが成功すれば、間違いなく他のグループも同様の取り組みを来年以降増やしていくことになるでしょう。

ベストヒット歌謡祭には、今回元SMAPの香取慎吾さんも出演が決定しており、旧ジャニーズ事務所の所属タレントとの退所後の共演が初めてであることが注目されていました。

参考:日テレ系「ベストヒット歌謡祭」で旧ジャニーズ3組と独立後の香取慎吾が初共演! 一部でNG報道もNO忖度

こうした動きを踏まえると、「新エージェント会社」設立にむけて、すでに所属タレントの方々は、新しい活動への準備を始めていると言えます。

最近では、「新エージェント会社」の社長に、のんさんのエージェント契約を成功させたことでも知られる「スピーディ」の福田淳氏の就任が報じられるなど、所属タレントの方々にとって来年に向けて明るいニュースも増えてきています。

参考:旧ジャニ新会社 福田淳新社長、情熱スピーチ「この事務所にはまだまだ可能性がある」 社員集会であいさつ

性加害問題をめぐっては、被害者の方への補償など、まだ不透明なことが多くありますが、少なくとも「新エージェント会社」が立ち上がれば、所属タレントの方々が従来の忖度の常識を打ち破って活動する未来が見え始めていると言えるかもしれません。

今回のようなコラボが、もはやニュースにならないぐらい普通になる未来がくるのか。

来年は、日本の芸能界にとっても大きな分岐点となる年になりそうです。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

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