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エルニーニョ発生近づく 豪州気象局は警戒呼びかけ

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
豪州気象局はエルニーニョ発生に警戒を呼びかけている(著者作成)

 エルニーニョの発生が近づく。豪州気象局は熱波と森林火災に警戒するよう呼びかけた。豪州は小麦の主な輸入先のため、エルニーニョが私たちの食卓に影響する可能性も。

エルニーニョ発生 さらに高まる

 オーストラリア(豪州)気象局は23日、エルニーニョ現象の発生見通しを発表しました。太平洋赤道域東部の海面水温は10月以降、急上昇し、10月21日までの一週間は基準値と比べ0.8度高くなりました。

エルニーニョ監視海域 海面水温の基準値との差(オーストラリア気象局データ、著者作成)
エルニーニョ監視海域 海面水温の基準値との差(オーストラリア気象局データ、著者作成)

 また、赤道付近の貿易風も弱まる傾向がみられ、海洋と大気の相互作用が強まっています。エルニーニョ現象が今年末までに発生する確率は70%と9月末の予測より20ポイント高くなりました。

オーストラリアは熱波と干ばつ

 エルニーニョ現象は世界各地に異常気象をもたらすことが知られています。

 こちらはエルニーニョ現象が発生した冬(12月-2月、北半球)の天候の特徴を示した図です。赤で示した地域は気温が高くなり、黄色は雨が少なくなる地域です。

エルニーニョ現象が冬(12月-2月、北半球)に発生した時の天候の特徴(気象庁ホームページより、著者が一部を加工)
エルニーニョ現象が冬(12月-2月、北半球)に発生した時の天候の特徴(気象庁ホームページより、著者が一部を加工)

 日本は西日本を中心に、気温が高くなりやすいことがわかります。一方、南半球のオーストラリアでは赤色と黄色がみられ、気温が高く、そして雨も少なくなる傾向があります。オーストラリア気象局は今後、熱波と森林火災が起こりやすくなるとして、警戒を呼びかけています。

パンやうどんが高くなる?

 世界四大穀物のひとつ、小麦。日本は国内で消費される小麦の約8割を輸入に頼っています。主な輸入先はアメリカ、カナダ、オーストラリアです。

小麦の輸入額(2017年、金額ベース:著者作成)
小麦の輸入額(2017年、金額ベース:著者作成)

 日本では小麦の約7割がパンとめん類によって消費されます。最近はコメ離れが進み、ますます家計への影響が大きい。世界有数の小麦生産国であるオーストラリアが干ばつになると、小麦の国際価格が上昇しやすくなるでしょう。

 世界の穀物を取り巻く環境は近年、大きく変化しています。

 世界的な人口の増加に加え、生活が豊かになると肉を多く食べるようになるため、家畜のえさとしての需要も増える。そこへ、地球温暖化やエルニーニョ/ラニーニャ現象などの異常気象が拍車をかける。エルニーニョ現象が発生することによる影響はすそ野が広いと実感します。

【参考資料】

オーストラリア(豪州)気象局:ENSO Wrap-Up,23 October 2018

気象庁ホームページ:エルニーニョ/ラニーニャ現象等発生時の天候の統計的な特徴

農林水産省国際部国際経済課:農林水産物輸出入概況 2017年(平成29年),平成30年3月29日

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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