エルニーニョ発生 日米豪の見解分かれる
気象庁は2年ぶりにエルニーニョ現象(以下、エルニーニョと記述)が発生したと発表したが、米豪の気象機関は発生に慎重な見方を示す。海洋と大気の結びつきが不明瞭だからだ。エルニーニョは発生しても規模が小さく、短期で終わる可能性もある。
2年ぶり、エルニーニョ発生
気象庁は9日、定例のエルニーニョ監視速報(10月の実況)を発表し、海洋と大気の状態からエルニーニョが発生したとの見方を示しました。発生の根拠として、太平洋赤道域の海面水温がエルニーニョ発生に必要な基準値を上回ったこと、そして赤道付近を吹く貿易風(東風)が平年より弱いことを挙げています。エルニーニョの発生は2016年春以来、2年ぶりのことです。
米豪の気象機関は慎重な見方
一方、NOAA(米海洋大気庁)の見方は違います。10月は太平洋赤道域の広い範囲で海面水温の上昇がみられたものの、大気の状態はエルニーニョが発生したときにみられる特徴が明瞭ではないとしています。
エルニーニョは海洋と大気がそろって、その特性を示すことが重要で、片方だけではエルニーニョとは呼べません。
また、オーストラリア気象局も同様の見方を示し、海面水温はエルニーニョの発生を示しているが、大気はほぼ平常な状態で、海洋と大気がしっかりと連動していない点を指摘しています。このような状態が続けば、エルニーニョの自立的な発達は危ういとしています。
発生しても規模が小さく、短期で終わる可能性
今後の見通しをみてみると、日米豪で微妙な温度差があります。日本は2019年春(5月)まで続く可能性が70%と予想しています。また、豪は少なくとも2019年3月までは続くだろうと述べています。
一方、米はこの冬にエルニーニョが発生している確率を80%とし、来年春まで続いている可能性は55%から60%とやや低く見積もっています。エルニーニョが続かない理由として、規模が小さいことを挙げています。
ないとはいえないが、強くもない
エルニーニョ発生で、この冬は暖冬と断定するような報道も見受けられます。でも、冬の天候にエルニーニョが影響する割合は3割程度で、「日本の天候とエルニーニョの関係はないとはいえないが、強くもない」という緩やかなつながりです。
現在、太平洋赤道域のほぼ全域で海面水温が高く、典型的エルニーニョとは言い難いです。この変則的なエルニーニョが大気にどのように影響するのか。予想がつかないことのほうが大きいと思っています。
【参考資料】
気象庁:エルニーニョ監視速報(NO.314),2018年11月9日
NOAA(米海洋大気庁):EL NINO/SOUTHERN OSCILLATION (ENSO) DIAGNOSTIC DISCUSSION,8 November 2018
NOAA Climate.gov:El Nino & La Nina (El Nino-Southern Oscillation)
オーストラリア気象局:ENSO Wrap-Up,El Nino ALERT continues; positive Indian Ocean Dipole,7 November 2018