インドが弾道ミサイル防衛用の「PDV MK-2」迎撃ミサイルで人工衛星破壊実験
3月27日、インドは高度300kmの軌道を周る人工衛星を破壊する実験「シャクティ作戦」を実施したと発表しました。発表された動画から使用したミサイルは「PDV MK-2」と表示されており、インド独自の弾道ミサイル防衛システム用の迎撃ミサイル「PDV(プリトビ・ディフェンス・ビークル)」の改良型であると推定されます。これはプリトビ弾道ミサイルを迎撃用に改造したPAD(プリトビ・エアー・ディフェンス)から続く系統のミサイルで、「PAD」「PDV」「PDV MK-2」は迎撃弾頭部分の外見に共通性が見られます。
シャクティ作戦の公式発表からは「PDV MK-2」は固体燃料ロケット推進部分が2段、その上の迎撃弾頭(固体燃料ロケット推進部分およびサイドスラスター付き)と合わせた3段式迎撃ミサイルと説明されています。従来型の「PDV」と比べるとロケット推進部分がかなり大型化しています。
「PDV MK-2」はあくまで弾道ミサイル防衛システム用の迎撃ミサイルであり、本格的な対衛星破壊兵器(ASAT)ではありません。それでも実験を行ったのはアメリカ、ロシア、中国に続く4番目の人工衛星破壊実績を得ればインドの国威発揚になり、仮想敵国である中国を牽制できると考えられたからでしょう。
インド当局は今回の衛星破壊実験で発生したスペースデブリについて、破壊高度が300kmと比較的低いので破片は数週間以内に地表に落下するとしています(筆者補足:この高度では希薄な空気があるので破片は空気抵抗を受けて速度を失い軌道に長く留まれず、大気圏に落下して燃え尽きる)。しかし正当な理由も無く軌道上に破片を撒き散らした行為に対して、批判の声も上がっています。