大人のお出かけウォーキング 年末の忙しい日常の中で自分の心を癒す 自然と景色を楽しむ歩く旅
何だか、遠く離れた自然の中に行きたいと思った。
朝からふらっと車に乗って出かけた。空には青空が広がる絶好のドライブ日和。少し遠出になる場所なのに、出発時間が遅くなると言う計画性のなさが私の特徴でもある。
毎年、年末になると理由もなく慌ただしいと感じる。
子育てを卒業する年代になり、自分に時間が持てるようになってからは家事もそこそこしているので、年末に特別な大掃除をすることもなくなり、クリスマスやお正月も大きなイベントではなくなってきた。なのに、年末は何故かせわしなく感じるので、その日常から離れたくなった。
自分が背負った人生の役割は、少しずつ終わっていくと感じる。子育てや仕事にと大変な日々だったけれど何とか終わろうとしているし、そろそろ卒業したいと思うのも本音。十分な事は出来なかったかもしれないけれど、私は私なりに頑張ったつもり。もちろん誰も褒めてくれないので、自分で自分を褒めた。これからの自分は自分を大切にしようと思うようにしているが、長年使ってきた頭はすんなりと切り替えが出来なくて困ることも多い。
意味が無い事でも自分がしたいと思う事をして、自分を大切にしても良いじゃないか。そう、もう一度自分に言った。
シングルおばさんの私の旅は誰に気を使う事も無いひとり旅。1人は寂しくないの?と、聞かれる事も多いし、1人なんて…とネガティブな意見を言われることもあるけれど、ひとり旅の良さもある。
先日、知人が気の合う友人と2人で旅行に出かけたけれど、予定通りにならない事が重なってしまい空気が重くなり疲れたと言っていた。
誰かと旅に出る時にはお互いの距離感が近く、一緒過ごす時間も長いので、楽しい時間を共有できると良い思い出になるが、ネガティブな感情を感じてしまうと逃げ場も無いので空気が重くなる。このような事態ではせっかくの旅が台無しになるので、そんな事態にならないように計画が必要だろうと思うけれど、ひとり旅ではネガティブな感情も自分次第でどうにでもなるので、無計画でもなんとかなると思っている。
真っすぐに伸びる遊歩道と、今では電車が走ることがない線路。線路脇の木々は桜並木だろうか。葉が散っている木々を見ると、冬がやってきていると実感させられる。もちろん、紅葉の時期も過ぎているが、所々で足元に残る紅葉の深紅の落ち葉を見ると、ここは紅葉も名所だと解る。
静かな山間にある廃線跡の遊歩道はアプトの道。群馬県安中市にある。歴史の道としても有名なアプトの道であるが、到着時間が遅くなったこともあるのか、シーズンが過ぎているからなのか、辺りはとても静かだ。
空の青さと浮かぶ雲、山へと向かっていくまっすぐな直線がきれいだなと思いながら、淡々と歩き進む。
気温は10度以下なのに、暖かい日差しを受けながらのウォーキングは次第に体が温まりポカポカしてきた。首元のマフラーを外し、リュックの中に押し込んだ。
しばらく歩くと、高速道路の橋が見えてきた。
遊歩道が造られた廃線跡が残る谷を、近代技術の象徴と言える高速道路の高架橋が一気に走り抜けている。今と昔が折り重なっている景色。そして、緑豊かな自然の中を抜ける高速道路の直線と、高架橋を支える白い橋脚が青い空へとまっすぐに伸びる姿を眺めてきれいだなと思った。
何だか、楽しくなってきた。
子育てが落ち着いたころより歩く旅を楽しんでいる。何故、歩く旅なの?と聞かれることも多い。当初の私自身も歩く事で何があるのか解らなかったが、実際に歩いてみると結構楽しい。そして、このような自分が自分の感性で奇麗だなと思う景色に出会えると、何だか得したような気持ちにもなる。
アプトの道のアプトとは、アプト式と呼ばれる鉄道方式の1つであり、登山鉄道として明治26年(1893年)に碓氷峠に造られた。鉄道の開通は、生糸などの産業製品の大量輸送が出来るようになり日本の近代化に大きく貢献している。
その後、1963年(昭和38年)に碓井新線が開通するとアプト式鉄道は廃止され、1997年(平成9年)に北陸新幹線(当時は長野新幹線)の開業に伴い、碓氷峠の急勾配区間だったJR信越本線横川駅~軽井沢駅間は廃止となっている。その廃線跡に造られているのがアプトの道であり、開通当時の明治時代の鉄道に関する文化財が残っている場所でもある。
遊歩道を歩き進むとレンガ造りの建物が見えてきた。空の青さと森の緑にレンガ色が良く映えて、シンプルで落ち着いた外観に気品を感じる。この時代の建物は美しい。
建物の名前は、旧丸山変電所。明治45年(1912年:大正元年)に建てられているので、2024年の112年前である。
明治時代のレンガ造りの建物は日本の近代化を象徴する建物だと言われており、東京駅を始めとして今でも残っている建物もあり、その美しさも魅力の1つである。
この丸山変電所は工場建築のように建てられている為に東京駅のような華やかさはないが控えめながら装飾が施されている落ち着いた格調の高い建物と説明版にあった。
アプトの道は、終点の旧熊ノ平駅までの約6kmの遊歩道の為、折り返して歩くと約12kmのウォーキングとなる。
朝の早い時間に出発して終点で折り返してきたのだろうか、登山仕様のリュックを背負った2人連れとすれ違い、先へと歩き進んだ。