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なぜハーランドは”ビッグクラブ移籍”を決断しないのか?バルサ、シティ、レアルや代理人などの思惑。

森田泰史スポーツライター
ドルトムントでプレーするハーランド(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

ゴールを保証してくれる選手を、多くのクラブが欲するのは当然だろう。

この夏の移籍市場で”目玉”になりそうなのがアーリング・ハーランド(ボルシア・ドルトムント)だ。今季、ブンデスリーガで28試合27得点を記録。得点王の座こそロベルト・レヴァンドフスキ(バイエルン・ミュンヘン/41得点)に譲ったものの、移籍二年目のドルトムントで再びインパクトを残した。

テルジッチ監督とハーランド
テルジッチ監督とハーランド写真:代表撮影/ロイター/アフロ

ハーランドに関しては、すでに複数クラブが獲得に向けて動き始めている。レアル・マドリー、バルセロナ、ユヴェントス、マンチェスター・シティ、リヴァプール、マンチェスター・ユナイテッド、バイエルン・ミュンヘン、チェルシー、パリ・サンジェルマン...彼をめぐる獲得競争は激化の一途を辿っている。

「レアル・マドリーが、ハーランド獲得を許容できるかは分からない。私はマドリーの資金調達の事情を調べていないからね。ただ、私は『イエス』だと思う。というより、異なる質問をしなければならない。問題は『マドリーがハーランド獲得を拒否できるか』だ。チャンスは一度しかないんだよ」と語るのはミーノ・ライオラ代理人である。

「我々はドルトムントと真剣に話し合った。彼らのスタンスは明確で、それは『ハーランドを売るつもりはない』というものだ。だが私のスタンスは彼らとは異なる。仮に好機が訪れた場合、そして全員が納得するなら、我々は交渉の席につく」

■旅する代理人

「ライオラとハーランドの父親の旅を止めることはできない」

これはエディン・テルジッチ監督の言葉だ。4月のインターナショナルウィークに、ライオラ代理人とハーランドの父親であるアルフ=インへ・ハーランドがスペインとイングランドに渡り各クラブと接触していたといわれているが、その動きに対するドルトムント指揮官の発言である。

ライオラは現在、代理人の世界でクリスティアーノ・ロナウドやジョゼ・モウリーニョ監督の代理人であるジョルジュ・メンデスと”双璧”をなす存在である。ズラタン・イブラヒモビッチ、マリオ・バロテッリ、ヘンリク・ムヒタリャン、ジャンルイジ・ドンナルンマ...。多くのビッグプレーヤーを抱えてきた代理人、それがライオラだ。

近年では、ポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド/移籍金1億500万ユーロ/約136億円)、ロメル・ルカク(インテル/移籍金7400万ユーロ/約96億円)、マタイス・デ・リフト(ユヴェントス/移籍金8550万ユーロ/約111億円)らのビッグディールを成立させてきた。

”曲者”という印象が強いライオラだが、実は選手とは良好な関係を築いている。「彼に代理人を頼む選手たちで、契約を解除した者は非常に少ない。頻繁に電話で話したり、アドバイスをしたり、時には一緒に旅行したりしている。とても親しい間柄になんだ」とはイタリア人ジャーナリストのマルコ・コンテリオの弁である。

ザルツブルクでゴールを量産
ザルツブルクでゴールを量産写真:ロイター/アフロ

ストライカーの価値は、ゴールで決まる。サイズや重さで測れるものではない。彼らの製造物であるゴールが、時に美しさで、時に豪快さで彩られる。だが具体的な数がなければ、彼らの評価は高まっていかない。

その意味で、現在、最も価値が高いのがハーランドであり、キリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン)だ。22歳と20歳。左利きと右利き。しかし、いずれもフィジカルベースの高さと決定力を兼ね備えている。

ハーランドの特徴は、スペースを突く速さと強さにある。「ここ」というポイントに、誰よりも先に現れる。そして、幼少時代に小柄だったこともあり、身体の使い方が巧みだ。ゴール前での仕事に限らず、ポストプレーでタメをつくり、チームに攻撃を促す。

自らのエゴに溺れない。加えて、得点力がある。ゆえに、ビッグクラブがこぞって彼を欲するのだ。

■C・ロナウドの言葉

以前、ハーランドとムバッペについて問われたクリスティアーノ・ロナウドが「どちらがベストプレーヤーになるかだけど、一人の選手を選ぶのは難しいね。だけど、ハーランドやムバッペのような新しい世代の選手を見ていると、興奮を覚えるよ」と話していた。そして、若手の台頭を歓迎するとともに、トップレベルの厳しさを付け加えた。

「選手によっては、1シーズン、2シーズン、良いパフォーマンスをするかも知れない。しかし、毎シーズン、継続的に良いプレーをして結果を残せるのは、本当に優れた選手だけだ。それは決して簡単なことではない。多大な労力とコミットメントが必要なんだ」

昨季のPSG戦のハーランド
昨季のPSG戦のハーランド写真:ロイター/アフロ

先日、スペイン『アス』の表紙にハーランドが載っていた。移籍金は2億ユーロ(約260億円)に上るという。本当にそれが実現すれば、ネイマール(パリ・サンジェルマン/契約解除金2億2200万ユーロ/約286億円)に次いで、史上2番目の高額移籍になる。

ドルトムントとハーランドの現行契約は2024年夏までだ。しかしながら、ハーランドの周囲は騒がしくなるばかりだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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