爆弾低気圧がカリフォルニア州で猛威 増える「天気のむち打ち」
その昔、孔子はこう説きました。
「中庸の徳たる、其れ到れるかな。民鮮きこと久し」
(バランスよく行動できるのは最高の人徳です。しかし最近はそんな人を見かけなくなりました…)
どうもこの言葉が、このところのカリフォルニア州の空模様にも当てはまるような気がしてならないのです。
強烈な爆弾低気圧
急速に発達した低気圧が5日(木)、カリフォルニア沖の海上に出現しています。
タイトルの写真がその嵐です。「,(コンマ)」の形をした巨大な雲が見えています。この低気圧の中心気圧は、一時956hPaに達しました。24時間では24ヘクトパスカル以上も気圧が下がり、「爆弾低気圧(Bomb cyclone)」の基準に達しています。
これほどの発達は非常に珍しく、過去に緯度40度以下の北太平洋上で発生した爆弾低気圧の中では、観測史上最強クラスといわれています。
強風の影響で木が家に倒れ、幼児1人が死亡したほか、車を運転していた19歳の女性も亡くなったと伝えられました。
この低気圧の中心からは、長い雲の帯が伸びていて、その元をたどるとハワイ周辺に行きつきます。
熱帯由来の大量の水蒸気を含んだ「大気の川」で、別名「パイナップル・エキスプレス」と呼ばれるものです。この影響で山間部では、この時期としては数十年ぶりとなる大雪となっています。
今回の雨雪は6日(金)には収まりますが、週末には次の低気圧、そして来週前半にも別の低気圧がやってきて、災害の危険がさらに上がります。
大晦日の豪雨
カリフォルニア州では非常事態宣言が発表されるなど、警戒が呼びかけられています。実は同州は、数日前にも大雨に見舞われました。
大晦日に史上稀に見るほどの大量の雨が降り、その量たるやサンフランシスコで140ミリ、これは1日に降った雨としては観測史上2番目の記録となりました。洪水や土砂崩れの影響で、複数の死者も出ています。
(↑元日のサンフランシスコ周辺の様子)
22年間続く干ばつ
災害のリスクは高まっていますが、一方で同州は、ここ22年間、深刻な干ばつにあえいでいます。
過去1200年でもっとも深刻な干ばつ、と学者がいうほど歴史的な干ばつです。それほどの規模ですから、この雨で一気に問題が解消するわけではありませんが、干天の慈雨であることは間違いなさそうです。
天気のむち打ち
強烈な干ばつから、猛烈な大雨。まるでシーソーのように揺れる極端すぎる天候は、昨今しばしば見られるようになっています。6年前の冬にも、記録的な大雨が突如襲ったことがありました。
こうした現象は「天気のむち打ち(Weather whiplash)」などと呼ばれますが、今後、温暖化によって頻繁になっていくだろうと、UCLAのダニエル・スウェイン博士は2018年に論文で発表しています。
バランスの良い天候が理想ですが、このところ見かけなくなりました…。孔子様と同じような嘆きを、カリフォルニアの人たちは抱いているのかもしれません。