日本の学歴・年齢階層別完全失業率の最新情報(2024年公開版)
最新の学歴・年齢階層別の完全失業率
世間一般には高学歴ほど就職は容易で、また失業もし難いとのイメージがある。そのイメージが確かなものかを確認するデータの一つが、総務省統計局が毎年発表している労働力調査。その最新年次平均値となる2023年分が先日発表された。今回はその値などを基に、実状を確認していく。
まず「完全失業率」の定義を確認しておく。これは「完全失業者÷労働力人口×100(%)」で算出する。総務省統計局では「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「調査週間中に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)」のすべてに当てはまる人を「完全失業者」と認定している。例えば仕事についておらず仕事があればすぐに働くことができるが、雇用に関するニュースを見聞きして「今就職活動をしても徒労に終わるだろう」とあきらめ、就職活動をしていなければ、完全失業者としてはカウントされない。
学歴区分では大学と大学院を分けるべきとの意見もある。しかし公開値が万人単位であるのに加え、大学院の失業者数はゼロか1万人との事例が多く、単独では異常値が計算結果として算出されてしまうため、過去の公開値の区分に習い、大学と大学院をまとめている。
完全失業率に関する全体的な構造「高学歴ほど低失業率」「若年層ほど高失業率」に変わりはない。ただし高齢層の失業率では学歴の差があまり出ていないどころか、むしろ高学歴の方が失業率が高い場合があることが確認できる。これは多分に「定年退職・早期退職後の再就職をこれまでの職場、新規職場を問わずに果たし、その際には学歴はさほど影響しない」からに他ならない。実際、この年齢階層における就業者の多くは非正規雇用となっている。
さらには「元々高学歴≒高年収であり、定年退職以外で失業・早期退職して再就職を望む場合、できる限り以前に近い待遇を望む傾向が強く、条件がかなう職に就き難い状況が生じている」こともあり、高学歴がかえって仇となっている(当人が自ら足かせをしている)ことの表れとも考えられる。再就職のハードルをあえて自ら上げ、結果としてそのハードルを飛び越えられない状態と表現できよう。
大卒・大学院卒の15~24歳における、つまり大学卒業後間もない新社会人の失業率は4.7%であるのも目にとまる。たとえ高学歴であったとしても、若年層の就職難の状況にさほど違いはないようだ。ただしこの年齢階層の高学歴、とりわけ「大学・大学院」の完全失業者は元々数が少ないのに加え、万人単位までの公開のため、値が多分にぶれやすい(総務省統計局でもかつて公開していた時には万単位で計算をしていた)。実数としては2023年分の失業者数は大学と大学院を合わせて5万人。前年の2022年は5万人であり、失業者数に限れば前年と変わらない状態。
完全失業率は改善
昨年発表された2022年分の値から算出した完全失業率と、今回算出した2023年分の算出値の差異を計算した結果が次のグラフ。これは2022年から2023年の1年間における失業率の変化を表す。数がプラスに大きく振れるほど失業率が増加、つまり雇用状況が悪化していることを意味する。
多くの属性で前年比マイナスとなり、失業率の観点では改善が見られたと読み解ける。しかし大学・大学院では55~64歳以外すべてでプラスとなっており、大学・大学院の悪化ぶりが見て取れる。
なお今件データでは「完全失業者」の定義に従い、就職をあきらめて大学院入りした人、就職を一時留保し就職活動をしていない人などは考慮されていないことに留意する必要がある。
今回分となる2023年においては、前年比に限れば、大学・大学院の学歴で悪化の動きが確認できた。経年グラフの通り、これはここ数年の傾向で、気になる動きではある。一方で若年層の雇用状況が中高年と比べると悪い、低学歴者の雇用状況が高学歴者と比べると悪いとの状況に変わりはない。
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