米戦車エイブラムスの供与での消極的姿勢は、劣化ウランが原因か。劣化ウラン弾使用の不安と、装甲の問題。
アメリカのバイデン大統領は1月25日、ウクライナに対して主力戦車である「エイブラムス」31両を供与することを発表した。
米国防総省は長らく、「M1エイブラムス」はウクライナの戦場での運用には適さないと主張してきて、供与に否定的だった。
その理由としては、様々なものが挙げられた。このハイテク戦車は世界トップクラスだが高価である、ガスタービンエンジンで動き特殊な燃料を使い、燃料を補給するためのタンカーが同行する必要がある(兵たんの問題)、維持に費用がかかる、取り扱いが複雑でメンテナンスも難しい、広範な訓練も必要・・・など。
ドイツは、単独でレオパルト2を供与することに反対していた。アメリカはドイツと協議する中で方針を変更したと言われるものの、在庫から出すのではないために、いつ届くことになるのかわからない、と述べていた。
なぜなのか。その理由は、劣化ウランが原因なのではないかという声が米欧で上がっている。
これは米欧の識者がネットで情報発信をし、メディアよりも早いほどの勢いで軍事に詳しい人々の間で指摘があり、即座に市民が関心をもったという印象をもっている。
劣化ウランの問題は二つある。一つは劣化ウラン弾、もう一つは劣化ウランを使った装甲(砲塔)である。長くなるが、まず劣化ウラン弾の問題、次に装甲の問題を説明する。
その前に、なぜ劣化ウランが弾薬と戦車の装甲に使われているのか、簡単に説明しよう。
金属ウランは、大変硬くて重いという性質をもつ。
だから、劣化ウラン弾は、鋼鉄を射抜く矢となっている。戦車の装甲がどのような鋼鉄でつくられようと、それを射抜き、戦車を破壊することができるというわけだ。
逆に、だから劣化ウランを使って、戦車の装甲をつくる。どのような鋼鉄の弾も貫くことができない。弾をくい止めて戦車は無事というわけだ。
それなら、劣化ウラン弾で、劣化ウラン装甲をほどこした戦車を攻撃したらどうなるのか。
まさに「矛盾」の語源そのものだ。
矛盾という言葉は、紀元前3世紀の中国の故事からきている。
ある商人が、ほこ(矛)とたて(盾)を売っていた。矛(ヤリのような物)を売るときは「この矛はとても鋭く、どのような盾も貫きます」と言い、盾を売るときは「この盾はとても硬いので、どんな矛でも貫けません」と言った。客の一人が「では、その矛でその盾を突いたら、どうなるのですか」と聞いたという話である。
2000年以上前も現代も、戦争屋は同じことしている。実に嘲笑える話に聞こえるが、劣化ウラン弾も劣化ウラン装甲も、造る側と使う側は、大まじめにその性能を誇っているのである。
1.劣化ウラン弾の問題
1月25日、ウィーンでOSCE安全保障協力フォーラムが開催されていた。
ここで、ロシア代表団のコンスタンティン・ガブリロフ氏が、西側諸国に対し劣化ウラン弾を使う可能性を非難した。
「旧ユーゴスラビアやイラクのように、その使用が地域の汚染につながるのです。もしNATO製のそのような弾薬がキーウに供給されれば、我々はロシアに対する汚い核爆弾の使用とみなし、それが伴うすべての結果をもたらすでしょう」と述べた。
劣化ウラン弾とは何か。広島市のホームページから引用したい。
アメリカ軍などは湾岸戦争、ボスニア紛争、コソボ紛争、イラク戦争などで、劣化ウラン弾を使用しました。
劣化ウランとは核兵器の製造や原子力発電で使われる天然ウランを濃縮する過程で生じる放射性廃棄物で(中略)劣化ウランの成分の約99.8パーセントはウラン238で、その放射能が半分になるまでの半減期は45億年です。
ウランは自然界で最も密度が高い物質で、極めて堅くて重いため、戦車の厚い装甲を破壊する砲弾や、戦車の装甲などに利用されています。
劣化ウラン弾が目標物に当たると爆発し、霧のようになった劣化ウランの細かい粒子が空中に飛散します。これを吸い込むと、化学的毒性により腎臓などを損傷するとともに癌などの放射線障害を引き起こします。
また、土壌などに付着し、半永久的に環境汚染も引き起こします。
今まで米国と英国が、劣化ウラン弾の使用を認めているという。
1991年の湾岸戦争、1999年にはユーゴスラビア戦争、特にコソボやボスニア紛争、そして2003年のイラク戦争などで、主に米軍によって発射された。
劣化ウランーー欧州でこの言葉にすぐに敏感に反応した人たちがいたのは、ユーゴスラビア戦争で、この「核のミサイル」が欧州で使われたからなのだろう。
知識のある欧州市民は恐怖をもつ。
ーーアメリカの戦車が、欧州の紛争地にまたやってくる。以前のユーゴスラビア戦争や中東の戦争の時と同じように、また劣化ウラン弾を使うことがあるのだろうか。
そんなアメリカの戦車が欧州にやってくることそのものが、ロシアに対して核の威嚇をするのと同じではないのか。そうなったらロシアの側も、核攻撃のさらなる威嚇や、もしかしたら使用をするのではないか。
このような疑問に対し、実際にはロシアが配備しているT-90Mという戦車も、劣化ウラン弾をコアとする砲弾も発射できると『ル・モンド』は解説している
そのうちの一両は、既にウクライナに捕らえられている。昨年12月7日にロシアのテレビチャンネルNTVが放送した映像によると、ロシアは自称「ルハンスク人民共和国」軍に、200機のT-90Mを納入しているという。
ということは、ロシアのほうが先に「核のミサイル」を使用できる戦車をウクライナで使っている。それに対抗できる西側の戦車を、ウクライナ側も投入しようとしている状況なのか。それならば、「核」の使用の恐れが、一層増すということだろうか・・・?
今後、必ず欧州のどこかからエイブラムスの使用に懸念や反対の声が上がり、西側の結束に複雑さを与えるのではないかと思う(特に配備され始めたら)。
市民が劣化ウラン弾の懸念や反対を表明するのは当然のことだ。
政治の場では、NATOの雄で、ウクライナや近隣国の頼みの綱であるアメリカの批判につながるので、あいまいで間接的な言い方になるかもしれない。
また、欧州の真性極右は反米親露の傾向があり、彼らにアメリカ批判への燃料を与えることになりかねない。
こういう事態をバイデン政権は避けたいために、供与に慎重だった可能性があるのではないか。
それでは、米英露の戦車以外は、劣化ウラン弾を搭載できないのだろうか。特にドイツのレオパルト2はどうなのだろうか。
調べてみたところ、あるNATO規格で造られた特定の大きさの砲をもつ戦車なら可能なようだ。この点は戦車の専門家の確認を待ちたいと思う。
ゼレンスキー大統領は、突然戦車の供与を大声で主張し始めた印象がある。もしかしたら、ロシアの戦車による劣化ウラン弾の使用の恐れもあったから、あれほど西側の戦車を要求したのだろうか・・・。
劣化ウラン弾を問題にし続けた国連総会
国際的には、劣化ウラン弾には厳しい批判の目が向けられてきた。放射能や毒性化学物質汚染の影響で、長期に渡って苦しむのは、現地の人達なのだ。
そして、放射能や毒性化学物質は敵味方を区別しない。国と上官の命令に従って戦地に赴いた英米の兵士も、被害を受けている。
国連総会は2007年に初めてこの問題を取り上げて、2008年からは隔年で取り上げている(詳細は国連のホームページ参照)。
2008年、国連総会の決議では、国連環境計画(UNEP)、世界保健機関(WHO)、国際原子力機関(IAEA) の3つの国連機関に対し、2010年後半までにウラン弾の影響に関する研究を更新するよう求めた。
141か国が支持した。4カ国が反対、34カ国が棄権、13カ国が欠席で可決された。反対を投じた4カ国とは、米国、イスラエル、英国とフランスだった。ロシアは棄権、中国は欠席だった。
近年では劣化ウラン弾の使用はないとはいえ、ウクライナ戦争では双方への警戒が必要だろう。
なにせ、アメリカの『ナショナル・インタレスト』誌には、2021年9月という最近に、劣化ウラン弾を賛美するようなことが書かれているのだ。
「(劣化ウラン弾の)M829シリーズの最新世代弾であるM829E4は、正確な範囲は機密だが、従来よりもさらに貫通力を高め、最新のロシア戦車に組み込まれているようなアクティブ・プロテクション・システムを打ち破れるよう設計されている」
「劣化ウランを(敵の戦車の装甲を壊す)貫通弾として使用することで、戦場を横断する米軍戦車の武装はより優れたものになった」
「劣化ウランの優れた徹甲弾の性能を考えれば、次世代の陸軍戦車も、劣化ウランで武装するのはかなり確実だろう」
(カイル・ミゾカミ著『How Depleted Uranium Rounds Make the M1 Abrams Even Deadlier』より)。
アメリカは、劣化ウラン弾を放棄しているわけでは全然ない。
ロシア側が心配するのも無理はないという実績と現状が、米(英)にはある。
(それでも「どの口が」とは思うが・・・)。
EU加盟国は一度も使用経験が報告されていないので、NATO内での歯止めになるかもしれないと期待したいところだが、どうだろう。
2001年1月NATO本部で記者会見する劣化ウラン委員会のレイティ報道官(左)とスペックハード政治問題担当事務次長。NATOがこの2週間前に急遽設置した50カ国による委員会は、劣化ウラン弾が癌を引き起こす証拠を発見しなかった、と発表した。
でも、核保有国は信用できないところがある。英国も、一度も劣化ウラン弾を使用したことがないとするフランスも同じだ。
もちろん、核保有国ロシアも同じである。それに、今までの実績から考えると、ロシアが言いがかり的に西側を非難しだすと、それはこれから自国が行うことであったというケースが見られるので、警戒が必要だ。
ちょっとでも双方に危険信号が出たら、すぐに一市民として声を上げて非難できるようにしておきたい。たとえ一つは小さな声でも、世界中で集まって国際的な批判となって、抑止ができるように。これ以上「核兵器」の使用を許さず、犠牲者が一人も出ないように。
劣化ウラン弾に反対する市民の写真を探していたら、珍しく日本人のデモの写真があった。本拠地東京のNGO「ピースボート」の方達だった(所有する船の前)。2つの湾岸戦争で米軍が使用した劣化ウランによって病気になったというイラク人女性の写真を、ボンベイで開催された世界社会フォーラム(WSF)の開会式時に掲げている。ロイターによって世界中に配信されたようだ。日本人の核反対の声が世界に届くのは嬉しい。
2.劣化ウランによる装甲の問題
もう一つは、アメリカの戦車・エイブラムス・M1シリーズには、装甲・砲塔に劣化ウランが使われているという問題である。
この問題に対し、すぐにアメリカでは数々の発信がなされた。アメリカは自分の国の戦車だから知っている人が一定数おり、特に識者はこの問題に気づいて情報発信をしたのだろう。
そして欧州では「劣化ウラン」という言葉に敏感な人達がいるので、それらの発信にすぐにネットで気付いて、米欧で話題になった、という流れだと思う。
バイデン大統領は供与を発表する際に「エイブラムスは世界で最も強力な戦車だ」と言った。
劣化ウランを使った装甲・砲塔で、大変高い防御力ももっているし、劣化ウラン弾が装備可能で、ほぼ全ての戦車の装甲を貫徹する能力を持つと言われるからだろう。劣化ウラン尽くしである。
ただしアメリカは、劣化ウランが装甲に使われたものを輸出していない。その部分を取り替えて輸出するのだが、手順にも、安全とセキュリティのために厳しい基準を設けているという。
こちらのほうが、米政権がエイブラムスの供与に対して歯切れの悪かった直接の原因かもしれない。
現段階では戦車供与の詳細がわからないので、メディアは様子見になっているようだ。
問題は、これが原因で、供与にどのくらい遅れが生じるのかということになるだろう。西側の戦車が供与される前に、ロシアは大攻勢を行うと予測されている。
付け加えるなら、納期に関する今後の経緯で、ドイツや欧州とアメリカが、戦車供与でどういう話し合いをしたのか、どういう経緯だったのかを知る手がかりになるだろう。この点は謎が多いので。
以下に、劣化ウラン装甲の戦車と、ウクライナへの輸出問題について、ジョセフ・トレヴィシック氏の記事『M1 Abrams Tanks In U.S. Inventory Have Armor Too Secret To Send To Ukraine』から、内容をできるだけわかりやすい言葉にして、短くまとめたものを紹介したい。かなり詳しい内容になる。
装甲・砲塔を変える難しさとは
エイブラムスの正確な納入スケジュールはまだ不明だが、アメリカ政府関係者はこのプロセスが数週間ではなく数カ月かかると明言している。最初の戦車が到着するのは、今年2023年末か来年初めかもしれない。
ウクライナ軍が受け取るエイブラムスの具体的な車種はまだ明らかになっていないが、この戦車は輸出用の独特な構成である必要がある。
米軍仕様の戦車には劣化ウランを含む極秘の装甲パッケージがあり、主要な同盟国にも容易に輸出できないことが大きな要因である。
ウクライナに渡る前に輸出可能な構成にする必要があるのだ。最終的にはどのようなプロセスであれ、装甲パッケージが大きな部分を占めることになるだろう。
さらに、ウクライナ向けのエイブラムスが、完全に新規生産された戦車なのか、それとも他の供給元(販売した国のこと)から調達するのかは、すぐには明らかにならない。
米陸軍には数千台の旧式エイブラムスが保管されている。業者に依頼して新品同様の状態に改修したり、新品と再生部品を混合した戦車の製造に協力するドナーとしたりして利用することができる。
1980年代後半から、米軍向け「M1A1」の新造車両には、高密度の金属として知られる劣化ウランなどを含む複合装甲パッケージが多く採用されるようになった。その後の新型バージョンである「M1A2」でも、劣化ウランを組み込んだ装甲パッケージが採用された。
アメリカの旧式「M1A1」の多くは、後に新型の装甲などに改良され、最終的に数百両が「A2」規格に引き上げられた。
「高度な機密」だったのだが、1988年にレベルは「機密」に格下げされた。そのことで、内容の一部がわかるようになってきたのだ。
それから35年経った2023年の今。エイブラムスの新しい装甲パッケージの多くは、高機能セラミックスを組み込んでいる。その保護機能をめぐる運用上のセキュリティ対策は、今でも非常に厳しいものがある。
現在、オーストラリア、エジプト、イラク、クウェート、モロッコ、サウジアラビアでM1シリーズが使用されているが、どの国でも劣化ウランを使用した装甲は確認されていない。
劣化ウランの代わりに、それを含まない輸出可能な装甲パッケージが、M1シリーズ用に開発されている。また、イラク軍が運用する「M1A1Ms」のように、米国で運用されている最新型よりも性能を落とした、完全なエイブラムス亜種が、輸出専用に開発されたこともある。
ウクライナ向けにM1シリーズが倉庫から引き出されて再建されたとしても、装甲パッケージの変更が必要になる可能性がはるかに高いのだ。これは複雑なプロセスであることは、ポーランドにエイブラムス戦車を売却することに関して、最近公開された契約文書で証明されている。
(ポーランドは去年2022年7月、「M1A2」エイブラムス戦車の最新バージョンである「SEPv3」(システム拡張型バージョン3)を250両購入することを発表した。さらに今年の1月には、116両の追加購入を発表した。経緯や詳細が複雑だが、最新のものと旧型の「M1A1」の両方を購入するようだ)。
ポーランドが将来保有するM1A2 SEPv3エイブラムス戦車には、M1A1テュレット(砲塔。機関銃、砲を擁しており通常は回転できる)を改修したものが含まれる。
この売却の一環として、米陸軍は外国軍への売却に承認された装甲パッケージをこれらのテュレットに取り付けることを促進している。
米国陸軍は、ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(GDLS)社に単独で発注することを検討している。
他の3社が却下された理由は、正当化の一環として、かなりセンシティブな内容まで陸軍は公表している。
ある社については「車両装甲の経験は、鋼鉄と軽量複合装甲に限られ、劣化ウランの装甲の仕事は含まれていない」とある。
別の社については、「M1A1装甲の取り外しと取り付けを含むM1A1フィールド・サービス担当の経験をもつスタッフがいて、劣化ウランの認定も受けている」のだが、「劣化ウランの装甲に関する作業を行うための、適切な安全施設へのアクセスを持っていない」とある。
こういった理由で、選考から外されたことがわかる。
米陸軍は、これら他の請負業者のいずれかを(受注ができる状態にするために)スピードアップさせるためには、64ヶ月、つまり5年強はかかると見積もっているという。この時間の大半は、作業を行うための安全で認定された施設の設立に費やされるだろう。セキュリティの問題だけでなく、劣化ウランの取り扱いには、健康や安全に関する要件も追加されるのだ。
それでは時間がかかりすぎるというのなら、他の国に売った戦車を、ウクライナにまわしてもらうという手段もある。
エイブラムスの外国での二大オペレーターは、エジプトとサウジアラビアである。エジプト軍は、少なくとも書類上では約1360両の「M1A1」を保有している。国際戦略研究所(IISS)の『The Military Balance』2016年版によると、サウジアラビア軍は約370台を保有しており、そのうち170台は保管されているとされる。
どちらの国も米国の主要なパートナーであるが、同時に、両国はロシアと複雑な関係にある。そのため、モスクワとの関係を悪化させるという非常に現実的なリスクから、この取り組みに協力するよう両国を説得するのは非常に難しいかもしれない。
エイブラムスと比較して、独製レオパルト2は欧州の多くの国で使用されているため、米国の戦車よりも早く譲渡される可能性がある。米国製は、結局はゼロから造るか、徹底的に製造されなければならないかもしれない。
つまり、米国政府がM1エイブラムス戦車をウクライナに供与するのは間近に迫っているように見えても、実際にいつ到着するかはわからないのである。
もし本当に米国の在庫から出すのなら、その装甲の機密性から、かなり長い時間がかかるかもしれない。
いずれにせよ、ドイツがレオパルト2を供与するなら、アメリカはエイブラムスを供与するという条件は満たされるはずだ。ただし、納入は何年も先かもしれないが。
(トレヴィシック氏の記事内容はここで終わり)。
米国防総省のシン報道官の説明
さて、ウクライナに供与するエイブラムス戦車の型式は、「M1A1」の改良型である「M1A2」になると、米国防総省のシン副報道官は1月26日確認した。CNNが報じた。
シン氏によると、米国にこの戦車の余剰在庫はなく、ウクライナへの供与には「数カ月」を要する見通しだという。
「M1A1」がアナログシステムなのに対し、「M1A2」はデジタルシステムで運用される点が主な改良点となる。
在韓米軍前司令官のロバート・B・エイブラムス退役陸軍大将は、両戦車の違いについて、ダイヤル式の電話とアップルのスマートフォン「iPhone」ぐらい違うと説明した。
「M1A2」には3つの種類があるが、どれが供与されるのかは明らかにされていない。
陸軍調達部門幹部のダグ・ブッシュ氏は、エイブラムスの供与で難色を示す理由となっていた戦車に関連する兵たんや維持の懸念について、今回の供与の決定で重荷にはならないと語った。
ーーこのブッシュ氏の発言は、今までよく説明されていた内容が、供与をためらっていた理由ではなかった、理由は他にあったという裏付けになりそうだ。それは劣化ウランの問題ではなかったか。
ただし、ロシア相手の戦争で、劣化ウランを使った装甲を本当に取り替えるのかという疑問もわく。規則・法律や合意があったとしても、改定すればいいだけなのではないか。
戦争屋にとっては、どれだけロシア相手に、劣化ウラン装甲の戦車が実力や威力を発揮できるか、「実践」で使えるまたとないチャンスだ。軍産複合体も、使えるし売れるし開発はできるし、大喜びかもしれない。予定より相当早く供与されたら要注意だ。
でも、米軍側にとっては、供与によって高度な技術の機密漏洩を防ぐため、やはり取り替えるのが必須なのだろうか。
逆に、イラク軍が運用するという「M1A1Ms」のように、最新型よりも性能を落とした「M1A2」の完全なエイブラムス亜種が送られる可能性もあるのではないか。
どの型をウクライナの戦地に送るかで、バイデン政権の本質と本心が見えてくるように思う。
ロシアからの核兵器使用の脅しは、今までも何度かあったが、現実味は(まだ)あまり感じられなかった。核の脅しは、むしろ原発近辺への攻撃や、原発の電源喪失によるものだった。
しかし、今回の戦車供与で、劣化ウラン弾なら本当に使用がありうるかもしれないと思わせる事態になってしまったようだ。
チェルノブイリ事故で苦しんだウクライナ人が、今度は戦争で、また放射能で苦しむ事態になってしまったら・・・。なんだか日本みたいだ。
それに、そんな劣化ウランを使った戦車に乗って、兵士の身体は大丈夫なのだろうか。そして、弾薬によって地面が汚染されたら、「世界の穀物庫」と言われるウクライナの豊かな土壌はどうなってしまうのか。そこで育つ穀物は、アフリカを含む世界の人々が輸入しているのに。
安全な所で、戦争屋や死の商人たちが喜んでいる姿が目に浮かぶようだ。
こんな戦争を一刻も早く終わらせるには、いったいどうしたらよいのだろう。
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【追記】アメリカはポーランドに、6万個の劣化ウラン弾を売却する手続きを進めている。
アメリカ国防安全保障協力局の公式発表によると、昨年12月6日、「米国務省はポーランド政府に対し、M1A1エイブラムス主力戦車と関連装備を、推定37億5000万ドルで、「対外有償軍事援助」の可能性を承認する決定を下した。国防安全保障協力局は本日、この売却の可能性を議会に通知する必要な証明書を交付した」とある。
この文書の中に、売却する物の一覧があるのだが、そのうちの一つに「sixty thousand (60,000) 120mm M829A4 Armor Piercing(6万個の120mm M829A4徹甲弾)」とある。
これは、2015年に生産に入ることを発表した、劣化ウラン弾のことだという。