新型コロナウイルスの緊急事態宣言による休業、時短営業でラーメン店は大打撃を受けている。

イートインでの売上を戻すことが難しい中、テイクアウトやデリバリーに力を入れるお店が増えているが、合わせて顕著な動きを見せているのが「通販ラーメン」である。お店のスープや麺を冷凍し、店頭やECで販売することで、売上の回復を図っている。

ただ、体力のない個人店では通販までカバーすることはなかなか難しい。そういったニーズに応えるため、「宅麺.com」「RAMEN STOCK」「おうちラーメンバンク」など、各社が通販ラーメンサイトを立ち上げ、プラットフォーム化することで全国のお店の通販ラーメンの販売に乗り出している。

これまでは東京の通販サイトがメインだったが、このところ関西のサイトも売上を伸ばしている。

新型コロナウイルスの「第4波」が全国で猛威を振るう中、特に大阪への影響は大きかった。

累計の死者数は5月22日の時点で2114人で、東京都（2015人）の数を超え、全国で最多となっている。毎日新聞の調査によると、大阪府が第4波とする3月1日以降、5月21日までの死者数は計973人で全国の22・7％を占めており、2位の東京都（634人）を大きく引き離す。

今まで以上に関西圏の中食需要が増えてきているのだ。

昨年11月には関西の人気店を中心にそろえた通販ラーメンサイト「menjoy」がオープンしている。

業務用厨房機器や冷蔵・冷凍ショーケースなどを販売、レンタルしている会社・株式会社クールランド（兵庫県神戸市）が新規事業としてスタートしたサービスだ。関西の店舗だけでも43店舗の取り扱いがあり（関東は2店舗）、他の競合と比較しても、関西エリアでは圧倒的な店舗数を誇る。

「弊社は今までもラーメンイベントの仕事をしてきましたが、出店者様の数もお客様の数も限られていて、もっとたくさんの美味しいお店のラーメンを、もっとたくさんのお客様に味わっていただきたいという想いが以前からありました。昨今の飲食業界を取り巻く厳しい情勢を目の当たりにし、より一層お客様に美味しいものを届けたいという想いが強くなり、『menjoy』を立ち上げるに至りました」（株式会社クールランド 常務取締役・山田浩平さん）

購入者の4割以上は関西からだが、一方で、関西の名店のラーメンの取り扱いが多いことから注目が集まり、関東も3割を超えてきている。

サイトオープン以降売上は伸びてきたが、「まん延防止等重点措置（まん防）」が適用された4月5日以降さらに伸び、緊急事態宣言が発令された4月25日は通常の2倍以上の購入件数となった。

基本的に、ラーメンは店舗で作り込んで配送してもらうのがベストだが、店が狭かったり人が足りなかったりして、通販ラーメンをどうしても店で作ることのできないところもある。そういう店のニーズにも合わせて、クールランドの工場で1から作り込む方法と、ライセンス契約を結び、店舗のレシピ通りに作る方法にも対応している。

「冷凍技術に関しては、急速凍結機を2種類導入しています。そして、工場内には新たに製造キッチンを建設し、そこでスープを炊き、パウチしています。最近は冷凍車でお店に回収に伺うことも始めております」（山田さん）

冷凍された麺と具材入りのスープがパッケージされていて、添付の作り方の通り作れば完成だ。関西のお店をここまでラインナップしているサイトはこれまでなかったので貴重である。

しかも関西エリアの顧客に支えられているというのが、ある意味地産地消な動きで面白いところだ。

今後は関西のみならず全国の人気店のラーメンを少しずつ増やしていくほか、ラーメンという枠にとらわれず、中華惣菜などの販売も検討しているという。さらに、うどん・そばやパスタ、洋食などさまざまな冷凍食品を取り扱うECサイトにしていきたい考えだ。