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堀田真由は青春恋愛映画のヒロインの友だち役で光る 「屈折してひと筋縄でいかない役が楽しいです」

斉藤貴志芸能ライター/編集者

人気少女マンガを実写映画化した『ハニーレモンソーダ』が公開される。塩対応だが人気者の男子と内気な自分を変えようとする女子が恋をする王道ストーリーの中で、堀田真由がヒロインのライバルで友だちという役で出演している。数々の作品で印象を残す若手実力派女優だが、屈折を抱えた役は特に冴えわたる。

王道は気恥ずかしくなってしまって

――いろいろな作品に出演している堀田さんですが、4年前には「恋愛映画は苦手かも」と発言してました。

堀田 相変わらず、ちょっと苦手意識はあるかもしれません。気恥ずかしくなってしまいます……(笑)。

――でも、今回の『ハニーレモンソーダ』も含め、恋愛映画でも印象的な演技を見せています。

堀田 私は王道ヒロインというより、屈折していたり、ひと筋縄ではいかないような役が多いので。だからこそ、恋愛映画もできている気がします。

――自分で恋愛系の作品を観るのは好きですか?

堀田 韓国のラブストーリーが大好きで、自粛期間に流行ったじゃないですか。『愛の不時着』とか、しっかりハマって(笑)、今も新しい作品を観ては、キュンキュンしています。

――日本の作品は観ませんか?

堀田 少女マンガは学生時代によく読んでいて、『ハニーレモンソーダ』も知っていました。本当に人気の作品で、本屋さんでも必ず目につく場所にあって。私が10代の頃から今も(『りぼん』で)連載が続いているので、ずっと読んでいます。

――もともと馴染みがあった作品なんですね。

堀田 でも、まさか芹奈の役が来るとは、本当に思ってなかったです。

――学校で話題の美少女というキャラクターで。

堀田 責任の大きさを感じました。

気持ちの矢印を台本に書き出しました

累計700万部を突破した村田真優のコミックが原作の『ハニーレモンソーダ』。中学時代に“石”と呼ばれていた自分を変えるため、自由な高校に入学した石森羽花(吉川愛)は、レモン色の髪のクールな人気者・三浦界(ラウール)と出会い、距離を近づけていく。学校で話題の美少女・菅野芹奈(堀田)は実は界の元カノだった。

――青春ラブストーリーならではの演じ方って、あるものですか?

堀田 『ハニーレモンソーダ』は村田真優先生の原作が素晴らしいので、そこに敬意は払いつつ、実写化だからこそできる世界観も必ずあると思いました。原作モノをやらせていただくときは「あまり引きずられない。でも、世界観を壊さない」というのを意識しています。

――原作を改めて芹奈目線で読んだりしたんですか?

堀田 そうですね。マンガのシーンと台本を照らし合わせました。映画は2時間くらいに収めないといけない中で、台本になかった原作の台詞も多くて。それを一度書き出して、「何でこういう行動に出たのか?」「何を思って、この言葉を言ったのか?」と紐解いていきました。その作業は、原作があると必ずしています。

――書き出すというのは、ノートか何かに?

堀田 台本の余白に書きます。芹奈はとにかく界が好きなんですけど、羽花ちゃんが現れたりして、いろいろな感情を持ち合わせているので、「ここは気持ちの矢印がどう向いているんだろう?」と考えました。芹奈の過去も出てきて、「自分は強くなれなかったけど、羽花ちゃんはそうじゃないな」とか。私はたぶん、思ったことを言葉にして、いったん出す作業をしないと、うまく伝えられないんです。監督とディスカッションもしたいので、すべてを準備しておくために、書き込んでいました。

――台本が真っ黒になりました?

堀田 書く作品は書きますし、まったく書かずにフラットにいく作品もありますけど、今回は原作もあったので、多めでした。

自分が弱いから察知能力があったのかなと

――芹奈の人物像はどう捉えました? 最初のレストランのシーンでは、羽花をからかう友だちに「やめろっつってんだろ!」とコップの水をかけていましたが。

堀田 水をかけたのも友だちが嫌いだからではなくて、自分が弱いからこそ察知能力があって、昔の自分と同じような羽花ちゃんを助けたかったんですよね。そのあとで「あの子たちも悪い子じゃないからね」って、フォローもできる。やさしくて、強くて、欠点がないなと思いました。

――人に水をかけたことって、実際あります(笑)?

堀田 あります。他の作品で(笑)。あれが2回目で、失敗したら服を着替えてもらわないといけないんですけど、ワンテイクでできました。

――芹奈は羽花と仲良くなりましたが、同じ男子を好きな同士で、ああいうふうになれるものですかね?

堀田 私はそういう状況は経験ないのでわかりませんけど、芹奈はすごく大人ですよね。相手の気持ちを汲み取りつつ、界のことを「好き」と言える羽花ちゃんの強さもあって。お互いが思っていることを言い合えて、これこそ真の友情なんでしょうね。

――あと、羽花の親友のあゆみも含めた3人で話すところでも、あんなに恋愛のことを考えているのって、女子的にはリアルですか?

堀田 女性はやっぱり恋バナが好きで、恋愛の占める比重も大きいと思います。でも、この映画には女の子3人や男の子のほうの友情だったり、恋愛模様だけでない10代の揺れ動く感情も出ていて、いいなと思いました。

偶数の男女で海に行くのは青春ですね

――そうした感情は、堀田さん自身には懐かしいもの?

堀田 私は今年23歳になって、高校生だったのは5年前ですからね。でも、芹奈たちは人のことを許せたり、自分の学生時代より大人だなと思います。

――青春映画の定番で、海やお祭りに行ったり、クリスマスパーティーをするシーンもありますが、そういうことは高校時代にやってました?

堀田 海に遊びに行ったことはないですね。修学旅行がハワイで、そこで海に行けましたけど、私はすごく肌が弱くて皮膚炎になってしまって。「イエーイ!」みたいな感じには全然なれませんでした。クリスマスパーティーは友だちとカラオケで楽しんだりはしました。

――映画の中で、撮影とはいえ楽しめました?

堀田 楽しませてもらいました。ああいうふうに男女6人で海に行くのは、偶数だから恋が始まりそうで、本当に青春という感じがしました。

――堀田さんも「私も過去の記憶を辿ると、自分ではない誰かのために紡いだ日常がありました」とコメントを寄せてました。

堀田 それは高校時代のことですね。友だちとか家族とか、いろいろな人への想いを考えながら過ごしていて。仕事を始めて迷ったときに手を差しのべてくれる人もいたり、人生の中で出会いがどんどん増えたことが、私にもありました。

涙だけでなくグシャッとなれて良かったです

――芹奈は海辺で界に想いを伝えるところが山場でした。ああいうシーンを撮るときは、やっぱり緊張しますか?

堀田 しますね。あそこは大事なシーンだと、マンガを読んでいても思ったので。実はその日の予定では最後に撮るはずだったんです。でも、天気が悪くなってきたので、急きょ朝イチに撮ることになりました。雲が出てきて雨が降りそうで、現場が慌ただしい中で、ワンカットで一発撮りだったんです。

――役者さんとしては、スリリングな状況ですね。

堀田 わりと長いシーンで、大事な言葉ばかりで、緊張感がありました。でも、焦りたくなくて、1回しかできないからこそ、鍛えられました。試写を観るまでは、「大丈夫だったかな?」ってドキドキでしたけど。本当に朝イチで現場に行ったら、「今からここを撮るよ」となったので、構えずにできて良かったかもしれません。

――涙だけでなく鼻水も出ていて、胸に迫るものがありました。

堀田 あれは本当に良かったです。芹奈はすごく気高くて、みんなが憧れる女の子なのに、きれいな涙を流すだけでなく、あんなにグシャッとなるくらい、界のことを想っていたのが出せました。界からは「引き止められなかった」という言葉以上も以下もなくて、もっと何か言われていたら、芹奈も吹っ切れなかったかもしれません。界がそこで留めてくれたのもやさしさで、「あなたを好きになって良かった」と吹っ切れて、良いシーンになったと思います。

――堀田さんは普段は泣かないほうですか?

堀田 表には出しませんけど、感情の起伏は激しいほうです。泣いたほうがストレス発散になるし、お芝居で涙を流すシーンが多かったりもするので、感情の引き出しはいろいろ持っておきたくて。家で映像作品を観て、意図的に泣くこともあります。最近も韓国ドラマの『トッケビ』を観て泣きました。

二面性のある役は人間らしいと思います

――堀田さんは青春ラブストーリー系では、ヒロインの友だちやライバルの役が多いですね。

堀田 そうなんです。最初にお話しした通り、私はThe王道ヒロインみたいな役は痒くなるというか(笑)、ちょっと気恥ずかしくなってしまうので。自立していて、そばで支える役のほうが、性に合っているのかなと思います。

――普段もそういうタイプなんですか?

堀田 何人かで集まっているときは、自分がしゃべるより聞き手に回るタイプです。そこは芹奈とちょっと似ているかもしれません。みんなをそばで見ていたいところはあります。

――女子高生役をやるときに、若いモードに切り替えたりはするんですか?

堀田 それは意識しません。普段の自分がガッとギアが上がることがあまりないので、現場でも一定のテンションでいます。だから、盛り上げ役のようなキャラクターはなかなかできなくて。でも、私が制服で出て作品が良くなるなら、高校生役をやれるうちはやりたいです。

――今は年齢的に高校生も大人も演じられますが、自分でハマる感覚があるのは、どんな役ですか?

堀田 いただく役がどこか屈折していたり、強く見えて弱い部分があったり、陰影や裏表があることが多いんですね。そういう役のほうが、演じていても楽しくて。きっと人間は誰しも表に出してない面はあるので、ある意味、人間らしい役をやらせていただけていると思います。

同世代を応援する作品をやってみたくて

――出演作がどんどん増える中で、演技への考え方が変わってきたところはありますか?

堀田 気づくと台詞の言葉尻を、自分の言いやすいように変えてしまっていた時期がありました。でも、“。”や“、”にも、きっと脚本家さんの意図があるので。前は監督に「この言葉はどうなんですかね?」と聞くこともあったのが、今は聞くより先に自分で「どんな意図で入れた言葉なんだろう?」と考えるようになりました。それは良いことでもありますけど、考え込むと瞬発力がなくならないか……ということもあって。

――その場の感情から出る言葉も大事なんでしょうね。

堀田 それがなかなか出せなくて。私は性格的に、「こういう言葉を言おう」とか何でも用意するタイプなんです。だからこそ、アドリブとか瞬発力が問われる作品に、1回挑戦しておきたいと思っています。

――韓国ドラマの話がありましたが、映画やドラマを観て「自分もこういう役をやりたい」と思うこともありますか?

堀田 『スタートアップ:夢の扉』というNetflixで観られる韓国ドラマが、本当に好きです。起業家のお話で、若者を応援するような作品ですけど、私も今23歳で、同世代の友だちが4月から新社会人になったんですね。だからこそ、私も同世代の皆さんを応援する作品をやってみたいです。あと、『ここに来て抱きしめて』というドラマは、主人公の男の子のお父さんがサイコパスで、男の子が好きになった女の子の家族を殺してしまって。そういう真っすぐにいかない恋愛模様にも惹かれます。どこか欠けている人間の話は好きで、自分でも演じたいです。

いつか大人のラブストーリーを演じられるように

――やっぱりど真ん中のヒロイン志向ではないんですね。

堀田 『いとしのニーナ』でヒロインをやらせていただきましたけど、あれも強気だけど弱い部分を抱えていた役で、そういうほうがやりたいかもしれません。

――「恋が叶った!」となる役よりも。

堀田 自分がそういうのが苦手だから、皆さん、すごいなと思います。でも、私も大人になったとき、高校生役ではできなかったラブストーリーを演じられるようになりたいとは思っています。

――さっき出た韓国ドラマではありませんが、堀田さんが最近スタートアップしたことはありますか?

堀田 始めたいことだと、4月に23歳になったとき、兄が「誰ともかぶらないプレゼントを贈る」ということで、ぬか漬けのキットをくれたんですね(笑)。私が自粛中にお料理をするようになったので。初心者用のキットですけど、ぬか漬けって、手を加えたら毎日やらないといけないんです。いつから始めようか考えていて、それは絶対スタートさせたいです(笑)。

*写真はすべて映画『ハニーレモンソーダ』と撮影オフショットより。

Profile

堀田真由(ほった・まゆ)

1998年4月2日生まれ、滋賀県出身。

2015年にドラマ『テミスの求刑』でデビュー。主な出演作はドラマ『わろてんか』、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』、『いとしのニーナ』、『危険なビーナス』、映画『虹色デイズ』、『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』、『劇場版 殺意の道程』、『ライアー×ライアー』など。2020年より『non-no』専属モデル。リクルート『ゼクシィ』13代目CMガール。『坂上どうぶつ王国』(フジテレビ系)に出演中。映画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ファイナル』が8月20日より公開。

『ハニーレモンソーダ』

7月9日よりロードショー

監督/神徳幸治 出演/ラウール(Snow Man)、吉川愛、堀田真由、坂東龍汰、岡本夏美、濱田龍臣ほか

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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