被害全容把握まだ 変化する支援ニーズ 広島県三原市木原では「床下」専門家の助言欲しい
西日本豪雨災害から2週間以上が経過しました。あの日の豪雨以来、全国的に晴れの日が続き、昨日は各地で40度を超える記録的な酷暑に。ニュース番組のトップ項目も次第に豪雨関連から熱中症関連の報道に移っていくのを実感します。
報道量が絞られていく中、今、豪雨災害に見舞われた各地はどのような状況なのでしょうか。
私は、発災当初から自分のLINEのIDをSNSなどで公開し、被災地域で発信の支援が必要な人は連絡を下さいと呼びかけてきました。「うちの地域を取材して欲しい、発信して皆さんに状況を知らせて欲しい」という依頼が愛媛、広島、岡山など各県の方々から今も寄せられ続けています。連絡を下さった方々の地域を一つ一つ訪ねながら発信を続けています。まだまだ支援を必要としている地域ばかりです。
今日、お伝えするのは広島県三原市の「木原」という地区です。現場の動画ルポを記事の終わりに貼っておきますのでぜひご覧下さい。想像以上に深刻な土石流災害だということがわかります。
■土石流、そして火災で集落が深刻な被害に 広島県三原市「木原」を訪ねた
「知って欲しい、それが一番です。同じ三原市内でも本郷はよく報道されているので、木原が埋もれてしまっていると危機感を抱きました。」
つばの大きい帽子にマスク姿、首にタオルを巻いて汗を拭きながら出迎えてくれたのは、三原市木原の住民、河野智哉(ともか)さん。砂埃が舞う中、地域を案内してくれました。河野さん自身も家族で暮らす家が浸水の被害にあいました。
木原は山の斜面に住宅やみかん畑が広がる集落です。今月6日から7日にかけて、深夜、突然の土石流に飲み込まれました。大きな岩や流木などが泥水と共に濁流となって地域に流れ込み、山の斜面を削り取るようにして早いスピードで流れていきました。家々は壊され、火災も発生しました。消防や救急車両も上がってくることができず、家は燃え尽きるまで見守るしかなかったと河野さんは言います。土石流から逃げ遅れた93歳の女性が命を落としています。
■三原市役所「いまだ木原について、被害の全体状況は把握できていません」
「避難の呼びかけは聞こえなかった」と、河野さんは当時を振り返ります。なぜ突然、土石流が木原を襲ったのか。上流でため池が決壊したのが原因だという人もいますが、詳しいことはまだわかっていません。三原市に確認をすると「木原についてまだ被害の全体状況なども把握できていません。住民の方から被害の申し出があったものしか集計できていない状況です」と役所でも情報収集に苦慮している様子がうかがえました。
役所が今のところ把握している三原市全体での被害状況は、床上浸水109戸、床下浸水72戸、損壊は36戸と、200を超える家屋が被害を受けました。今後さらに増える見込みです。上下水道の復旧も遅れています。
今、壊れた道路の復旧、地域の泥かき、泥水に浸かった家財道具の運び出しなど、被災した方々やボランティア、市からの委託を受けた土建業者のみなさんが暑さの中作業を続けています。被害の深刻さから「自衛隊が来てくれたら・・・」と溜息を漏らす方もいます。農業への被害も深刻です。土石流に襲われてから2週間以上が経過しましたが、農地の泥を撤去するなど必要な作業ができておらず、まだ手付かずのところも少なくありません。
■ボランティアニーズも日々変化 「住宅の専門家がいたら・・・」
一方で、ボランティアのニーズも日に日に変化をしています。現在は「床下」の泥をどうやって掻き出し、消毒などを行うかが焦点。災害ボランティアセンターを運営する地元の社会福祉協議会の職員によりますと、住宅の床下に入った泥をどうやって掻き出すのかなど的確なアドバイスをボランティアに指示してくれるうような専門家の力が必要だと言います。特に、床板が簡単に取り外せるような古い日本家屋ではなく、フローリングに覆われた新しい住宅の床下はどのように作業をすれば良いのか、住民からの問い合わせに答えてあげることができないと悩んでいます。
さらに、河野さんによりますと、今、地域の悩みは家屋の解体。補助が出るのか、それとも自腹になるのか、自治体側も被害の全体像を掴みきれていない中、住民の皆さん一人一人も今後の見通しを立てることができずにいます。倒れかかった家屋を下手に解体することもできず、家主も手をつけられずにいます。生活再建に向けた費用負担の問題は、どの災害同様、大きな課題です。
西日本豪雨災害から2週間以上が経過。復旧・復興への道のりはまだ始まったばかりです。