コ・ウソクのメジャー行き容認をLG球団が発表 日本の新聞記事の見出しに並ぶ「あの文言」の背景は?
ポスティングシステムを利用してメジャーリーグ(MLB)球団への移籍を目指す、韓国KBOリーグ・LGツインズの抑え投手コ・ウソク(高祐錫)の交渉期限が迫っている。期限はアメリカ東部時間3日午後5時(日本時間4日午前7時)だ。
そんな中、所属球団のLGは3日の午後2時過ぎに「コ・ウソク投手の意志を尊重し、メジャーリーグのチームに送り出すことを決めた」と発表。「メディカルチェックと契約手続きを進めるため3日に渡米した」とした。またMLBを取材する記者がSNSで、「パドレスと契約間近」と伝えている。
昨季は「キャリアロー」 予想外のメジャー行き
コ・ウソクは直球の平均球速152キロ、146キロ台中盤のカットボールと、130キロ台のカーブを主な持ち球とする韓国を代表する「高速守護神」だ。しかしコ・ウソクのメジャー行きを想像していた人は非常に少なかった。なぜなら昨年のコ・ウソクは韓国メディアの言葉を借りると「キャリアハイ」とは反対の意味を持つ「キャリアロー」の1年だったからだ。
2023年のコ・ウソクは3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で代表入りするも、大会直前のオリックスとの強化試合で途中降板。首の後ろを痛めて大会での登板はなかった。
昨年の公式戦初登板は開幕から2週間以上経過した4月18日。その後腰痛などでの離脱もあり、年間成績は44試合に登板し3勝8敗15セーブ、防御率3.68だった。2年連続30セーブ以上となる42セーブを挙げてタイトルを獲得し、防御率1.48だった前年2022年と比べると明らかに見劣りした。
しかし昨年11月14日にメジャーリーグ事務局から韓国野球委員会(KBO)に身分紹介の申請があった。同時に名前が列記されたイ・ジョンフ(李政厚)は以前からメジャー進出を公言していたが、コ・ウソクの名には驚かされた。LGはその6日後の22日にコ・ウソクの意向を承諾した。
イ・ジョンフとコ・ウソクは1998年8月生まれの同い年。プロ入り前から親交がありどちらも高卒入団だ。コ・ウソクは昨年1月にイ・ジョンフの妹と結婚し、二人は義兄弟となった。国内の代理人(リコスポーツエージェンシー)も同じだ。
日本での見出しは「大谷に…」の投手
この2か月弱、日本のメディアでもコ・ウソクのMLBポスティング移籍を目指す動きなどについて記事化された。以下がその見出しだ。
韓国LG“大谷翔平へ死球予告”した高佑錫投手のポスティング容認、通算139セーブ(日刊スポーツ)
大谷翔平に“故意死球発言”の高佑錫投手がメジャー挑戦か?韓国メディアが報道 来季は直接対決も?(スポニチアネックス)
「韓国のイチロー」がジャイアンツ入り正式発表!超イケメンの「韓国の至宝」…義弟は大谷翔平への「故意死球」発言で波紋(スポーツ報知)
大谷翔平に“故意死球”発言…韓国の高祐錫がパドレス移籍へ 松井裕樹に続くブルペン補強、開幕戦ソウルでドジャースと激突(中日スポーツ)
WBCで大谷翔平に死球予告の韓国投手 MLB挑戦が大苦戦…残り1週間で進展なし(東京スポーツ)
コ・ウソクは東京オリンピックの日本戦で登板したことはあるが、日本で知名度がある方ではない。そのため日本の大手スポーツ紙は、昨年1月に韓国のニュース番組でのインタビューの発言を拾った一部メディア記事の刺激的な文言を繰り返し引用したようだ。
その内容とは2月のキャンプインとWBCを控えたコ・ウソクに対し、「大谷翔平選手と対戦した場合、どう対峙するか?」といった質問への回答だ。
コ・ウソクは笑いながら「(大谷に)真ん中に投げたらホームランを打たれるのではないかと思います」と話し、尋ねた記者も笑った。
続く記者の質問に対し、「実際にマウンドに上がって投げるところがなかったら、痛くないところに当てるしかないですね」と言って笑い、「塁に出して次の打者と勝負します」と話した。
映像:KBS Newsの当該のインタビュー。41秒頃(韓国国外からの視聴不可)
旺盛なサービス精神 プレーで挽回を
韓国のプロ野球選手はコ・ウソクだけではなく、メディアに対して概ね丁寧に対応する。日本の記者やアナウンサーは国際大会の度に「韓国の選手ってみんな機嫌よく、たくさん喋ってくれるんですね」と驚く。
その中で抑え投手は気持ちの切り替えが早く、打たれた後もサバサバと語ってくれる人が多い印象がある。一方で人一倍負けず嫌いで、その背景を詳しく喋ってくれるかは人それぞれだ。
コ・ウソクはというと「そこまで教えてくれるのか?」とこちらが思う程、「自分のここがダメだった」と詳しく配球や心境について語ってくれる(すべてが本心かはわからないが)。サービス精神が非常に旺盛な選手と言えるだろう。
しかし「わざと当てる」という趣旨の発言は冗談めいた記者とのやり取りとはいえ、映像で使われる可能性を考えると不用意な言葉だった。
今後、日本の大手スポーツ紙が繰り返しその言葉を見出しに使うことは、さすがにないだろう。一方のコ・ウソクも過去の発言を忘れさせるような投球を、メジャーの打者を相手に見せることを期待したい。
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参考 LGツインズ紹介(ストライク・ゾーン)