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【夫婦別姓議論】親や先祖から受け継いだ姓に誇りや、大切にしたいと思う気持ちに性別や由緒は関係ない。

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
(写真:アフロ)

これまで夫婦別姓の議論には賛否両論さまざまな意見が出てきています。今回は山本さん(仮名)の実体験を通して、選択的夫婦別姓制度の必要性について検証していきます。

山本さんは30代の女性です。2年前に結婚しました。しかし、結婚が決まってから数ヶ月の間は食事も喉をとおらず毎日、「死にたい、死にたい」と言っていたそうです。どうしてでしょうか?

実は山本さんは長女として実家の姓を継ぎたい、結婚で姓を変えたくないと子どもの頃から思っていたそうです。そのため、姓にこだわらないと言ってくれる男性を選んでお付き合いをしてきました。今の夫とも、彼が姓にこだわりがないことを確認してからお付き合いを始めました。しかし、結婚の話になった時、彼のご両親は女性側が姓を変えるべきだと言いました。彼も、自分の姓は変えられないと言うようになりました。

山本さんは父親と一緒に「彼の姓を変えていただけないか」と彼のご両親にお願いしました。しかし、ご両親は「山本さんが女性だから変えなくてはならない」と言い全く聞き入れてもらえませんでした。仕方なく山本さんは事実婚を提案しましたが、それも認めてもらえませんでした。

さらに彼のご両親からは「山本さんの家はたいした名家でもないのにどうして主張するのか」と言われたそうです。その言葉は山本さんの心を深く傷つけました。

最後は父親が37歳の山本さんを心配し、破談になるくらいなら改姓してでも結婚するよう言いました。山本さんは彼と別れる選択を念頭に置いていましたが、父親に心配をかけたくないという理由だけで結婚しました。

「私としては父の望みをかなえることができず、情けない子どもであったと自責の念にかられ後悔が消えません。」と山本さん。このような場合に選択的夫婦別姓制度があれば、ひとつの解決策になるのではないでしょうか。

山本さんは現在、「実家の名前を継承したい姉妹の会(略称:姉妹の会)」に参加しています。今でも胸が詰まるほど苦しくなる日もあるそうですが、苦しんでいる場合じゃないと思えるようにもなりました。

今回、姉妹の会の事務局からも次のようなメッセージが寄せられました。

「親や先祖から受け継いだ姓に小さな誇りを持ち、それを大切にしたいと思う気持ちに、性別や由緒は関係ありません。男性であれ女性であれ、名家であろうとなかろうと、その思いは等しく尊重されなければならないと思います。」

姉妹の会では、実家の名前を継承したいと願う人々の声を国会議員に届ける活動をしていて、ウェブサイトでは当事者の方々の声を集めています。

この会は「姉妹の会」という名称ですが、一人娘さんや、男性(女の子しかいない家の父親、一人娘さんとお付き合いをしている男性など)の声も集めています。

姉妹の会のサイトに寄せられた当事者の声を読むと、山本さんのように夫婦別姓制度の導入を望んでいる方たちがたくさんいらっしゃいます。そろそろ夫婦別姓制度の実現に向けて進み出しても良いのではないでしょうか。

「実家の名前を継承したい姉妹の会」

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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