岸田内閣の支持率は続落、その原因と今後の見通しは
岸田内閣の支持率を問う主要報道機関の世論調査が週末行われ、各社の数字が出揃いました。すべての報道機関で内閣支持率は下がっており、支持率の下落傾向に歯止めがかかりません。旧統一教会の問題が顕在化した今年7月以降、下落傾向は4ヶ月以上続いており、特にこの1ヶ月には閣僚が2名辞任するなど、事態は収束に向かうどころかより悪化しているようにもみえます。この低調な支持率の原因と、今後の見通しについて考えていきます。
報道各社の世論調査が指し示す内閣支持率
まず、報道各社が今週末に行った世論調査の結果をみていきたいと思います。NHK、FNN、朝日新聞が行った今週末の世論調査では、いずれも内閣支持率は下落傾向にあり、先月に引き続いて不支持が支持を上回っている状況が続いています。特にNHKの調査は官邸などもベンチマークとして取り扱う数字ですが、支持率が5pt下落し、「不支持ー支持」の乖離が5ptから13ptに増えたことでより厳しさが増したという認識です。
この前週に読売新聞が行った世論調査でも、内閣支持率は36%(前回10月よりー9pt)、不支持率は50%(前回10月より+4pt)となっており、各社が同じ傾向を示していることから、支持が減り不支持が増えていることは明らかです。すなわち、葉梨康弘法務大臣の失言からの辞任の流れがなくても、下落傾向は続いていた可能性があります。
先月あたりから「臨時国会が始まれば下落傾向は止まるだろう」「経済対策を打ち出せば下げ止まりになるだろう」と言われてきましたが、臨時国会も中盤に差し掛かるなかで下げ止まらない状況は、政府与党にとってやや危機的ともいえます。
支持率の下落を今回は止めたかった岸田首相
さて、11日には、葉梨康弘法務大臣の失言による辞任・交代がありましたが、岸田首相が「この時期は勘弁してほしかった」と漏らしたとされる(FNN)ように、時期的には「最悪」のものだったといわざるをえません。
まず、旧統一教会の問題で支持率が下落しているなかで、全く関係のない点での不祥事であったことです。配慮に欠ける発言で法務行政の信頼を損ねる発言であっただけでなく、厳しい国会運営となっている中で新たな火種をつくってしまったことは、政権にとって新たなマイナス材料となりました。
10月28日には「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を岸田首相が打ち出しており、これが最近のインフレに対する具体的な経済対策として目玉政策となる見込みでした。実際のところ、家庭の電気代補助や出産時の補助などは来年から始まるということですぐに国民に実感が感じられるものではないことから、近い将来への期待感を寄せる内容としつつ、統一地方選挙に向けた布石的政策とも言われていました。これをきっかけにしつつ、コロナ禍で縮んだ旅行、宿泊、エンタメ等の消費の取り戻しや中小企業支援対策を強化することで、個人事業主や中小企業経営者の支持基盤を固めていく方針とみられていましたが、このような打ち出しをした直後の葉梨法相の失言は、積み上げてきた戦略が無駄になるという意味でも「この時期は勘弁してほしかった」という発言に繋がったものとみられます。
さらに、先ほど述べたように官邸もベンチマークとするNHKの世論調査の直前の失言だったことも今回の数値にダイレクトに影響を及ぼしたとみることもでき、このこともまた「この時期は勘弁」という発言につながったものとみられます。
山際大臣・葉梨大臣の更迭にかかる岸田首相の対応は
さらに今回の件で注目をされているのが、大臣更迭に至るまでの経緯と首相の判断です。山際大臣と葉梨大臣の更迭に際し、岸田首相はその判断をする日の午前中までは国会の答弁で更迭を否定したものの、昼以降に翻意をし、夕方には更迭の見通しとの一報が報じられ、夜には辞任という流れまで一緒でした。一度は否定した更迭をその日の夕方には実施する朝令暮改の対応に対し、野党だけでなく与党からも「もっと早く対応しておけばよかった」との声が聞かれました。自民党幹部の意見などを聞いたものと言われていますが、短期間に2度も同じような形で更迭にいたった点について、任命責任や朝令暮改の責任が今後問われることは間違いなく、与党内でも更なる辞任ドミノにつながることを警戒する声が多く上がっています。
旧統一教会の対応については後手の対応が続いており与党の中でも批判的な意見が多かったものの、最近では質問権の行使表明など対応が進み始めており、少しずつですが旧統一教会の問題に関する着地点が見え始めていました。与野党協議が今後うまくいくのか、また旧統一教会以外の問題も含めて審議中の法案が多く国会審議が厳しいなか、この臨時国会をきちんと乗り切れるかどうかがまず鍵となります。臨時国会は2度の延長が認められますが、民法改正案をはじめとする様々な法案を無事に通すことができるのか、また与野党協議となっている旧統一教会関連の救済法案などを無事可決成立までもっていけるのか、与党側による国会運営のハンドリングの出来が、来月のさらなる内閣支持率の行方を決めることになりそうです。