ネタ勢からガチ勢まで勢揃い! 世界コンピュータ将棋オンライン大会は杉村達也弁護士開発の水匠が優勝
新型コロナウイルスの影響により、将棋界では多くの対局、イベントが延期、中止となっています。
記念すべき第30回を迎える予定だった世界コンピュータ将棋選手権(WCSC)もまた、残念ながら中止となりました。大会を主催するコンピュータ将棋協会(CSA)にとっても苦渋の決断でした。
その代わりに5月3日・4日。「1年間の成果を披露したい方、プログラムの実力を試したい方が多い状況を考慮して」(CSA)、世界コンピュータ将棋オンライン大会が開催されました。WCSC申し込み55チームのうち40チームが参加を表明しました。
昨年優勝のやねうら王は、開発者の磯崎元洋さんがいろいろお忙しいようで、残念ながら不参加でした。
1日目は28チームによる8回戦。恐ろしく強いソフトから、人間にはちょっと理解できない妙な手(妙手にあらず)を連発するソフトまで、多士済々の感があります。
詳しい棋譜は公式ページをご覧ください。
「ソフトが強いのは、もううんざりするほどよく知ってるよ! 強いばっかりの棋譜を並べたって面白くないよ!」
そう思われる方。たとえば「きふわらべ」というソフトの棋譜をご覧になってはいかがでしょうか。開発者の高橋智史さんは、以下の開発画面を公開しています。
初手で3九の銀がワープして相手の5一玉を取り、▲5一銀成まで。将棋の初手は30通りしかないという人間の常識を軽く超えています。将棋のルールもまた超越している点だけが残念です。
きふわらべはいわゆる「ネタ勢」の星として、毎年注目を集めています。本大会でも、合法手ながら人間では絶対に当てることのできない次の一手を何度も披露して、ギャラリーを沸かせました。
1日目を勝ち上がったのは16チームです。
2日目はシードの「ガチ勢」12チームが加わって、合計28チームが熾烈な戦いを繰り広げました。
5回戦ではHefeweizen-2020と水匠(すいしょう)が全勝同士で対決しました。昨年WCSCでの成績はHefeweizenは2位。水匠は7位。いずれも現代を代表する強豪ソフトです。
上図はどちらがいいのか、果てしなく難しい終盤戦。筆者が使ってきた以前のバージョンの水匠は△3二金▲2一龍△3一金▲2三龍△3二金・・・という千日手の順を最善と読みました。
今年の水匠は、昨年のバージョンには7割勝つそうです。パワーアップした水匠は、代わりに△3三金が最善と読みました。
「なるほど、わからん」
そう言いたくなるところです。棋力つたなき人間の筆者には、正直、何がなんだかわかりませんが、ここから水匠は優勢に持ち込んで、勝ちきりました。
水匠はこの後、elmo(昨年4位)と究極幻想アルテマタヌポン(昨年3位)を相手に、いずれも入玉宣言勝ちで勝利しています。
強豪同士の対戦は互いの玉がなかなかつかまらず、長手数、相入玉となりやすい傾向にあります。
「将棋は互いに最善を尽くすと、相入玉となる」
もしかしたら将来、そうした結論が出る可能性もあるのかもしれません。
水匠は最終8回戦でQhapaq from Neo-Saitama(昨年5位)に敗れたものの、7勝1敗という見事な成績で優勝を飾りました。
水匠開発者の杉村達也さんは、千葉県の弁護士さんです。
新しいバージョンの水匠は既に公開され、誰でもダウンロード可能となっています。
また現在はインターネット対戦サイト「将棋倶楽部24」でも指すことができます。
水匠に大駒落ちで勝つことができれば、人間界では間違いなく、上位クラスの技量の持ち主です。