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西田哲朗と高橋周平の中で2018年シーズンは始まっていたか【みやざきフェニックス・リーグ取材記】

横尾弘一野球ジャーナリスト
フェニックス・リーグではもどかしく感じた西田哲朗(左)と高橋周平だが……。

 みやざきフェニックス・リーグとして知られるプロ野球の秋季教育リーグは、今年もNPBの12球団、韓国プロKBOの3球団、そして、四国アイランドリーグPlus選抜の計16チームによって、10月9日から宮崎県の各球場で実施され、30日に閉幕する。このリーグの大きな特徴は、若手選手の翌年に期待ができるかどうか、ある程度まで見極められることだろう。

 例えば昨年、中日に育成ドラフト3位で入団した三ツ間卓也は、ウエスタン・リーグで35試合、78回を投げて83三振を奪い、防御率は2.19をマーク。それを評価されてフェニックス・リーグに派遣されると、右サイドハンドからキレ味鋭いボールを左右のコーナーに投げ分け、目立つ結果を残していた。他球団の打者に「あんなにいい投手が育成指名だったの?」と言わせたように、2年目の今季を支配下登録されて迎え、35試合に登板。2勝1敗11ホールドで成長ぶりを示す一方、37回2/3を投げて被安打35、与四死球33という課題にも直面したが、着実に前進したと言っていい。

 三ツ間とは対照的に、一軍で勝ち星なしに終わった北海道日本ハムの斎藤佑樹は、先発を任された試合でもフォームに躍動感がなく、20歳前後の打者にも簡単にヒットを打たれるなどボールにキレが感じられなかった。何より、教育リーグのマウンドに立っていることに気恥ずかしさを感じているような、必死さの伝わってこない姿に翌年(今年)への希望を見出すことができなかった。6試合に登板して1勝3敗、防御率6.75という寂しい今季の数字は、もう昨年のフェニックス・リーグで十分に予測できたと言ってもいい。

 このように、フェニックス・リーグでのパフォーマンスは翌年に飛躍できるか否かを暗示してしまう。ファンやメディアの期待がどんなに高くても、ここで頑張れなければ明るい未来はやって来ないのだ。そんな視点で、今年は東北楽天の西田哲朗と中日の高橋周平を観察した。

西田は深く悩み、高橋は甘さを払拭できない

 西田は強打の遊撃手として、2010年にドラフト2位で入団。2014年には131試合に出場し、松井稼頭央を外野に追いやった。しかし、ケガもあってレギュラーに定着し切れず、昨年は茂木栄五郎にポジションを奪われ、今季も取り返すことはできなかった。首脳陣も何とかきっかけを掴ませたいと起用しているのがわかるのだが、130キロ台のストレートに振り遅れたり、インコースの速球に腰を引いて見逃したりと、もどかしい打席ばかりが印象に残る。挙句、ショートの守備ではイージーなゴロを捕れず、力投する投手の足を引っ張ってしまう。バットを手に何度も首を傾げ、前に進みたくてもどこが前なのかわからない様子だった。

 大型遊撃手として2012年にドラフト1位で入団した高橋は、パンチ力あふれる打撃を生かそうと、1年目から主に三塁手で出場機会を与えられる。だが、今季までの6年間、時折ポテンシャルの高さを示すアーチを描くものの、そこから進化した姿も数字もなかなか見せてはくれない。森 繁和監督がサード・福田永将、ショート・京田陽太のビジョンを明らかにしたため、フェニックス・リーグではセカンドを守ったが、そのポジションを何とか手にしようという必死さは残念ながら感じられず、これまでと同じように忘れた頃の一発を見せるにとどまった。1年目から一軍出場の機会を“与えられた”甘さも払拭できていないようだ。

 西田と高橋は、来季もフェニックス・リーグで見た姿のままなのか。プロ入りから2年間、一、二軍を行き来しながら苦しみもがいた経験のある落合博満は、このような選手が厚い壁を乗り越えるために必要なことを、このひと言で表現する。

「選手本人の気持ちの中で、2018年がすでに始まっているかどうか。それに尽きる」

 フェニックス・リーグのプレーから期待感は得られなかったものの、西田と高橋の内面には、来季のペナントレースと同じギラついた闘志があったと信じたい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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