Yahoo!ニュース

15年ぶりリメイク『パパとムスメの7日間』に主演。TBSで9000人から選ばれた飯沼愛の胸の内

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)「パパとムスメの7日間」制作委員会

2007年にヒットしたドラマのリメイク『パパとムスメの7日間』。オリジナルでは新垣結衣が演じた、父親と人格が入れ替わる女子高生役で主演しているのが飯沼愛。昨年、TBSスター育成プロジェクト『私が女優になる日_』で約9000人から選ばれた18歳の新人だ。清廉で理知的なたたずまいを持ちつつ、今回は中身はサラリーマンのおじさんという役に奮闘中。抜擢が続く中での心境を聞くと、やはり女優としての適性がうかがえた。

上京して谷中銀座にハマってます

――この春に香川から上京して、東京暮らしには馴染みました?

飯沼 人の多さにはまだ慣れないですね。駅のホームや満員電車に戸惑います。でも、東京には大きいお店やオシャレなカフェがたくさんあるので、いろいろなところに出掛けて楽しんでいます。

――香川では、食べに行くのはうどんが多かったり?

飯沼 そうですね(笑)。うどん屋さんが多かったので、食べる頻度は高かったです。

――東京では、どんなところに遊びに行っていますか?

飯沼 最近は日暮里の谷中銀座にハマっています。商店街のレトロな雰囲気が好きで、雑貨屋さん巡りや食べ歩きもできて。東京でお気に入りの場所です。

商業科で資格をいろいろ取りました

――高校は商業科だったそうですか、入学したときに何か将来設計があったんですか?

飯沼 いえ、特に意味はなく、何となくで商業科に行きました(笑)。

――普通科でなく商業科を選んだのは、意味があったのでは?

飯沼 行きたい高校に普通科がなかっただけです(笑)。将来のことは特に考えていなくて、その学校の雰囲気が好きだったので受験しました。

――『私が女優になる日_』のオーディションの自己紹介では、資格取得のために努力しているとのことでしたが、どんな資格を取ったんですか?

飯沼 電卓、パソコン、簿記など学校で決められた検定を取得しました。今、資格を何個持っているのか、よくわかってないんですけど(笑)。

――飯沼さんは成績も優秀だったんですよね? お母さんもインタビューで「小さい頃から頭が良かった」と話されていました。

飯沼 そんなことはないです(笑)。高校では勉強がちょっと好きになって、頑張ってはいました。

オーディションは締切ギリギリに応募しました

――昔から女優を目指していたわけではないんでしたっけ?

飯沼 ドラマや映画を観るのは好きだったんですけど、お芝居に興味を持ち始めたのは、オーディションを受ける半年くらい前でした。

――どんなドラマを観ていたんですか?

飯沼 すごく好きだったのは、森七菜さん主演の『この恋あたためますか』です。登場人物みんなが恋や仕事に一生懸命奮闘している姿に勇気づけられて、「自分も頑張ろう」と思えました。あと、ドラマの中に出ていたシュークリームが実際にコンビニでも発売されていて、当時は買い漁っていました(笑)。スイーツが好きなので、そこも楽しめましたし、今でもたまに観返しています。特に4話が好きです。

――4話はどんなお話でしたっけ?

飯沼 登場人物の関係がいろいろ動いていくんです。あれこれあって、主人公の樹木ちゃんの感情が忙しい回になっています。好きなシーンがたくさんありました。

――オーディションを受ける1年くらい前に、スカウトをされたとか。

飯沼 大阪に遊びに行ったとき、声を掛けていただいたことがありました。それがハッキリしたきっかけかはわかりませんけど、少しずつ女優への興味が湧いてきました。自分でオーディションを受けてチャンスを掴みたいなと思っていて、見つけたのが『私が女優になる日_』だったんです。ギリギリまで迷って、締切直前に自己紹介動画を送りました。

演技のことばかり考えるのが苦でなくて

――演技の経験はなかったんですよね?

飯沼 まったくなかったです。オーディションでの審査のときに、初めてお芝居をしました。

――でも、『私が女優になる日_』の演技バトルでは終始上位で優勝。自分の才能を見つけた感じでした?

飯沼 そういう感覚はなかったです。自分がこのお仕事に向いているのか、自分がこの役を全うできるのか、今も考えることはあります。でも、演技はすごく楽しいし、できないことがたくさんあるからこそ、もっと頑張っていきたいなと思っています。

――演技が楽しい感覚は最初からあったんですか?

飯沼 オーディションのときは必死だったので、正直、楽しいと思う余裕はありませんでした。ただ、演技バトルの期間はお芝居のことばかり考えていて、それが全然苦ではなかったんです。たぶん私はお芝居が好きなんだろうな、とは感じていました。

――それはテレビからも何となく伝わりました。すごく生き生きして見えたというか。

飯沼 本当ですか? 母からも「お芝居が好きなんだね」と言ってもらいました。

――主演デビューした『この初恋はフィクションです』では、どんな心境でした?

飯沼 一緒にオーディションを乗り越えたメンバーに、経験豊富なベテランの方ともお芝居ができて、本当に撮影が楽しかったです。たくさん刺激も受けました。放送されてから「ドラマを観て、私も頑張ろうと思えました」といったコメントもいただけて、とても素敵なお仕事だなと感じました。

役のために日常でおじさん観察をしました

――『パパとムスメの7日間』の小梅役で主演が決まってからは、撮影に入るまでに準備でしていたことはありましたか?

飯沼 パパと入れ替わるということで、日常の中でおじさん観察をしていました(笑)。電車に乗ったときに周りのサラリーマンの方を見て、「このくらい脚を開いて座るのか」とか。スマホをどう使うのか見ていたら、意外とパパパッと文字を打つのが速い方もいれば、指1本で打っている方もいました。

――そのおじさん観察は撮影で役立ちましたか?

飯沼 具体的にはわかりませんけど、仕草とかで何かしら役立っている気はします。現場でパパ役の眞島(秀和)さんにも、たくさんアドバイスをいただきました。座るときや立つときに「はーっ」と息が出たり、「よいしょ」とか言うとおじさんっぽいと、教えてくださいました(笑)。

――舘ひろしさん、新垣結衣さんの2007年版は観ましたか?

飯沼 放送当時、私は3~4歳でしたけど、再放送か何かで観たことがあって、もともと知っていた作品でした。リメイクされることに驚きましたし、自分が主演をやらせていただくことに最初はプレッシャーを感じていました。今はあまり気にせず、楽しんでやらせていただいています。

――記憶に残っていた場面もありますか?

飯沼 台詞やパパとのやり取りで「確か昔もこういうのがあったな」と、たまに思うことはあります。今回はラブコメ中心で、だいぶ変わりましたけど、15年前に観ていた方には「懐かしい!」と思っていただけそうな掛け合いもありますね。

待ち時間も脚を開いているようになって(笑)

――観る分には面白い作品ですが、たぶん演じるのは大変でしょうね。

飯沼 クランクインして、特に最初の数日はおじさんが全然掴めなくて「どうしよう……」と悩んでいました。今も難しくて、ずっと探り探りです。でも、ママ役の羽田(美智子)さんに「探り探りの感じがいいんじゃない?」と言っていただいて、救われました。

――パパも小梅と入れ替わって、探り探りだからですかね。撮影が進むうちに、おじさんぶりも板に付いてきたような?

飯沼 まだ「大丈夫かな?」と思いながら探っていますけど、仕草はちょっと板に付いてきたかもしれません。待ち時間でも腕を組むようになっていたり、スタッフさんに「また脚が開いてるよ」と言われたりします(笑)。

――電車に乗っていたりしても、ついそうなっていたり?

飯沼 撮影以外のときは、そういうことはあまりないんですけど、なぜか現場だと、そうなりがちで。雰囲気か何かのせいですかね?

――役のモードに入っているんでしょうね。おじさんっぽい口調はどうですか?

飯沼 すごく苦戦しています。言い慣れていないと、聞いたら一発でわかると思うので、そうならないように練習でいっぱいしゃべって、馴染むように頑張っています。

――特に戸惑った言葉はありますか?

飯沼 「モチのロンだよ」ですかね。いかにもおじさんが言いそうな言葉だなと思いました。でも、眞島さんは「俺でも言わないよ」とおっしゃってました(笑)。

普段はポーカーフェイスで役では殻を破って

――普段の飯沼さんは落ち着きがある感じですよね。

飯沼 小梅ちゃんほど感情が上がったり下がったりは、あまりないかもしれません。テンションがわりと一定で、喜怒哀楽を表に出さないほうだと思います。ポーカーフェイスというか。

――でも、役に入れば殻を破れると?

飯沼 破るように意識はしています。『この初恋はフィクションです』のときは縮こまってしまう感覚があって、表情が固まったり、お芝居が一定になってしまって。監督に指示をいただいても、どうしたらいいのかわからなくて、殻を破れませんでした。そこから比べると、『パパムス』で少しは成長できたのかなと思います。

――面白い表情も見せて振り切ったり、飯沼さんの成長速度は速いようで。

飯沼 いえ、前と比べたらちょっとは……というくらいです(笑)。

メイクを始めて1周して興味なくなりました(笑)

――飯沼さん自身が、デビューしてから変わったところはありますか?

飯沼 少し大人になったかなと思います。友だちと遊ぶときも、高校生の頃は何も考えず、ただただふざけていましたけど、今はいろいろ気にするようになって。地元の友だちには、ちょっとつまらなくなったと思われているかもしれません(笑)。大人になるのは悪いことではないでしょうけど、まだ子どもでいたいなと思うときもあります。

――『私が女優になる日_』以前は、メイクをしたこともなかったそうですが。

飯沼 『この初恋はフィクションです』の撮影期間中にヘアメイクさんに教わりました。その時期は一気に興味を持ち始めて、メイク用品を集めたり、メイクコーナーを回るのも楽しくて、いろいろチャレンジしていたんですけど、なかなか難しくて。下手な人がメイクしても良くならないんですよね。だから1周回って、最近は興味なくなってしまいました(笑)。上手くなりたい気持ちはあるので、自分に合うメイクをゆっくり研究中です。

人との関わりを大事にしていきたいです

――さらなる活躍が期待されている飯沼さんですが、ご自分で目指していることはありますか?

飯沼 人との関わりは大事にしていきたいです。このお仕事を始めて、大人の方たちがこんな18歳の女の子にフレンドリーに話してくださるのが、最初は意外に感じて。『この初恋はフィクションです』のスタッフさんも、お芝居のことを丁寧に教えてくださいました。今でもTBSでお会いすると、『パパムス』のことをすごく喜んでくださって、「頑張ってね」と言っていただきます。幸せだなと感じました。

――そういう関係が広がるといいですよね。

飯沼 お仕事をするうえでも、それ以外でも、周りでたくさんの方が支えてくださっているので。一期一会を大切に、感謝を忘れず、地に足付けて頑張っていきたいです。

Profile

飯沼愛(いいぬま・あい)

2003年8月5日生まれ、香川県出身。

2021年 にTBS スター育成プロジェクト『 私が女優になる日_ 』 で初代グランプリ。同年にドラマ『この初恋はフィクションです』に主演してデビュー。放送中のドラマ『パパとムスメの7日間』(TBS)に主演。

ドラマストリーム『パパとムスメの7日間』

TBS/火曜24:58~

出演/飯沼愛、長尾謙杜(なにわ男子)、小栗有以(AKB48)、松本怜生、羽田美智子、眞島秀和ほか

公式HP

(C)「パパとムスメの7日間」制作委員会
(C)「パパとムスメの7日間」制作委員会

*写真は『パパとムスメの7日間』より

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事