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ストレスフルな生活がニキビを悪化?フランスの大規模調査から見えてきたこと

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

ニキビは思春期の若者に多くみられる皮膚疾患で、QOL(生活の質)に大きな影響を与えることが知られています。少し古いデータですが、フランスで行われた大規模な調査により、ニキビと生活習慣の関係について興味深い結果が報告されています。今回はその調査結果を皮膚科医の視点から解説したいと思います。

【ニキビはストレスと関係がある?】

フランスの研究チームは、15〜24歳の若者2,266人(男性884人、女性1,382人)を対象に大規模な調査を実施。現在ニキビがあると回答した1,375人と、ニキビがないと回答した891人の2群に分け、ストレスを感じる頻度を比較しました。

すると、ニキビがある群では「毎日ストレスを感じる」人の割合が18.0%だったのに対し、ない群では13.9%と、統計学的に有意な差がみられました。つまり、ニキビのある人はない人に比べ、日常的にストレスを感じている可能性が高いのです。

ストレスとニキビの関係は以前から指摘されていました。ストレスにより皮脂の分泌が増えたり、男性ホルモンが増加したりすることがその原因と考えられています。しかし、ニキビ自体がストレスの原因となっている可能性も否定できません。いずれにせよ、ニキビ治療と並行して、ストレス対策を行うことが大切だと言えるでしょう。

【ニキビは性交渉の頻度と関係がある?】

同調査では、ニキビの有無と性交渉の頻度についても検討しました。その結果、ニキビのない群では週1回以上性交渉をする人の割合が41.2%だったのに対し、ある群では25.9%にとどまりました。

つまり統計的に見ると、ニキビのある人はない人に比べて、性交渉の頻度が低い傾向にあるのです。ニキビは見た目に大きな影響を与えるため、それが性的魅力の低下や自信喪失につながり、ひいては性交渉の機会が減ってしまうのかもしれません。

【ニキビのある人は朝の疲労感が強い?】

もう1つ興味深い結果が、ニキビと朝の疲労感の関係です。調査の結果、ニキビがある群の65.4%が朝の疲労感を訴えたのに対し、ない群では58.4%と、こちらも有意差がみられました。

ニキビのある人になぜ朝の疲労感が強いのか、その理由は今のところ明らかではありません。睡眠の質の低下が関係している可能性もありますし、ニキビによるストレスが疲労感につながっている可能性もあります。いずれにせよ、ニキビ治療とともに生活習慣の改善を図ることが大切だと考えられます。

以上、フランスの大規模調査から明らかになった、ニキビとストレス・性交渉・朝の疲労感との関係について解説しました。ニキビは単なる皮膚の問題ではなく、生活の質に大きな影響を及ぼす疾患だと言えます。もしニキビに悩んでいるなら、皮膚科専門医に相談し、適切な治療を受けることをおすすめします。

<参考文献>

Misery L, et al. Consequences of Acne on Stress, Fatigue, Sleep Disorders and Sexual Activity: A Population-based Study. Acta Derm Venereol 2015; 95: 485–488.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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