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ストレスは老化を加速させる?皮膚への影響と対策

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
Ideogramにて筆者作成

【慢性的なストレスは肌の老化を加速させる】

私たちの肌は、紫外線やタバコ、大気汚染など様々な外的要因にさらされています。それに加えて、栄養不足、睡眠不足、そして慢性的なストレスなどの内的要因も、肌の老化を促進することが知られています。

今回は、慢性的な心理ストレスが肌に与える影響について、最新の研究結果をご紹介したいと思います。

フランスのCoty社の研究チームは、慢性的な心理ストレスを感じている人とそうでない人の肌の状態を比較しました。その結果、中程度のストレスを感じている人は、軽度のストレスの人と比べて、肌の抗酸化力が有意に低下し、肌のテクスチャーや細かいシワが増えていることがわかりました。肌の粗さを表すパラメーターは最大で32.9%も増加していたのです。

さらに、ストレスホルモンであるコルチゾールとエピネフリンが、肌の細胞レベルでDNAにダメージを与え、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を抑制することも明らかになりました。

慢性的なストレスは、老化を加速させるだけでなく、シミやくすみ、ニキビなど様々な肌トラブルの原因にもなると考えられます。ストレス社会と言われる現代において、ストレスマネジメントは美肌を保つ上でも重要なポイントだと言えるでしょう。

【ストレスは肌のバリア機能を低下させる】

心理ストレスは、肌のバリア機能にも悪影響を及ぼします。

Coty社の研究では、中程度のストレスを感じている人は、軽度のストレスの人と比べて、経表皮水分損失量(TEWL)が14.4%も高かったのです。TEWLとは、肌から水分が蒸発する量のことで、肌のバリア機能の指標となります。

また、人工皮膚モデルを用いた実験では、コルチゾールにさらされた皮膚で、バリア機能に関わるフィラグリンやロリクリンのタンパク質の産生が最大で32%も減少していました。

肌のバリア機能が低下すると、肌の乾燥や炎症、アレルギー反応などを引き起こしやすくなります。アトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚疾患の悪化にもつながる可能性があるのです。

ストレスを完全になくすことは難しいかもしれません。しかし、ストレスと上手に付き合い、肌への悪影響を最小限に抑えることは可能です。

美肌を保つためにも、ストレスマネジメントを日々の生活に取り入れていきたいですね。

参考文献:

Pujos, M., et al. (2024). Journal of Cosmetic Dermatology. 2024; 0:1–8.

https://doi.org/10.1111/jocd.16634

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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