初代ゴジラ映画はパブリックドメインか?
今年(2025年)はゴジラ生誕70周年(最初の「ゴジラ」映画の公開から70年後)にあたるそうです。70年経ったことでこの映画の著作権が切れているのではないかということで、実験的にニコニコ動画に「ゴジラ」全編をアップした人がいましたが、東宝株式会社の申立により削除されてしまったそうです。
「ゴジラ」(の最初の映画)の著作権はいつ切れるのでしょうか?
現在の著作権法であればこの問題は簡単です。映画の著作物は公開から70年後(正確には70年後の日が属する年の大晦日)に権利切れになると明確に規定されているからです(著作者が誰か、いつ亡くなったかには関係ありません)。
しかし、「ゴジラ」の公開は1954年であることから、その著作権存続期間については、現行著作権法だけではなく、1970年まで有効であった旧著作権法が関係してきます。旧著作権法がからむ著作権期限切れネタは地雷(以前にガメラについて書いた時はあまりのややこしさに死にそうになりました)なのですが、「ゴジラ」については比較的情報がそろっています(関連記事等)ので簡単にまとめておきます。
現行著作権法では、映画の著作物の著作権は基本的に「映画製作者」(典型的には映画会社や制作委員会)に帰属するように規定されています。監督、脚本家、演出家等、実際の制作に絡んだ人々は著作者ではありますが、(別途契約で権利譲渡されない限り)著作権者ではありません(そして、前述のとおり、著作者の没年は映画の著作物の権利切れとは関係ありません)。映画の権利管理を容易にしたいという大人の事情に基づく規定と思われます。
一方、旧著作権法においては、映画の著作者および著作権者については特別な規定がないため、創作をした人(あるいは団体)が著作者および(デフォルト状態の)著作権者になるという扱いでした。そして、権利存続期間は著作者の死後38年まで(団体名義の場合は公開から33年まで)でした。
「ゴジラ」については、著作者は東宝ではなく、監督の本多猪四郎氏(1993年没)であることが一応確定しており、その結果、著作権切れの時期は旧法規定と新法規定で遅い方が適用になるという附則があることから、初代「ゴジラ」映画の著作権は2031年末に切れる(2032年正月からパブリックドメインになる)というのが一応の定説です。
なお、2010年に本多猪四郎氏の遺族が、「ゴジラ」の著作権の帰属を争って東宝を訴えた裁判がありました(関連記事)。この裁判は和解で終わっていますが、東宝は「ゴジラ」の著作者が本多猪四郎氏である点については争っておらず、著作権が同氏から譲渡されたかどうかを争っていました(著作者が東宝であるとされてしまうと権利保護期間が短くなってしまうのでそう主張する動機がありません)。
ということで、冒頭の東宝による削除要求は筋が通ったもの(少なくとも今までの主張との一貫性があるもの)ということができます。初代「ゴジラ」映画の無許諾ネットアップロードは、2032年を待たなければいけなさそうです。その時までに(「イマジン」の共作者であると後になって主張しだしたオノヨーコさんのように)本多猪四郎氏より長生きした人が共同著作者として名乗りを上げたりすると状況は変わりますが、さすがにそういうことはないでしょう。
追記:1997年没の田中友幸プロデューサーが共同著作者の1人であるとして、2035年まで権利が存続するという説もあるようです。