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リーグワン開幕は新型コロナウイルスで受難&ディビジョン1第1節ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
昨季シャイニングアークスからイーグルスへ移籍のマフィ。頼れる突破役。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 本来なら華々しいスタートが期待されたジャパンラグビーリーグワンは、いきなり災禍に見舞われた。

 開幕前には、NECグリーンロケッツ東葛の元選手が違法薬物所持の疑いで逮捕された。連帯責任による試合中止といった過去の前例を踏襲しなかったのが、せめてもの救いだったか。

 それ以上に頭を悩ませるのが、コロナウイルスの感染拡大だ。

 1月7日の東京・国立競技場での開幕戦に出るはずだった埼玉パナソニックワイルドナイツからは、計9名の感染者が発生した。14日までの時点で計2節を辞退。いずれも不戦敗となっている。

 静岡ブルーレヴズでは、1月4日の選手、スタッフ全員へのPCR検査により4名に陽性反応が確認された。当初は9日の第1節に臨むつもりだったが、遠征メンバーに感染が疑われる体調不良者が出たために中止となった。

 また、9日までの自主検査で計25名に陽性疑いの反応が、11日の医療機関のPCR検査によって23名に陽性反応がわかり、13日には新たに新型コロナウイルス感染症の陽性反応が確認される。第3節までの開催中止が決まった。

 さらに3部相当のディビジョン3では、宗像サニックスブルース、九州電力キューデンヴォルテクス、クリタウォーターガッシュ昭島で陽性判定者が出たため全ての開幕節が中止となり、それぞれの対戦相手に勝ち点5が付与される。

 なお、試合の中止理由がウイルス感染などの「チームの責に帰す場合」「帰責性のあるチームに勝ち点は付与されず、対戦チームに5点を付与する」ことは、開幕前に決まっていた(すなわち、再試合をすべきだというクレームは成り立たない)。

 昨年末から感染力の強いオミクロン株が流行し、3度目のワクチン接種の目途は流動的。不確定要素の多い現在、ウイルスに負けずに試合ができるかどうかの鍵は濃厚接触者の有無だろう。

 トップリーグ時代にクラスターを出したあるチームの関係者は、「まず、(ウイルスを)持ち込まないこと(が重要)」としながら「濃厚接触者を増やさないこと」が必要だという。

 というのも管轄の保健所に濃厚接触者と判定された選手、スタッフは、2週間の隔離を命じられるからだ。今度のワイルドナイツの場合、感染した9名のほか全ての選手が濃厚接触者だったとリリースされている。ブルーレヴズでは、濃厚接触者の判定に関する発表はまだない(14日時点)。

 前出の関係者は、自身の経験をもとに「感染者の行動履歴は48時間前までさかのぼられる」とも語る。つまり、検査結果が出るまでの48時間以内に陽性反応者と行動をともにしていた人物は、濃厚接触者となる可能性が高いというわけだ。

 そのため前出のクラブは、毎週月曜日のリーグ主催のPCR検査に備え、週末の試合後は分散して行動するよう求めているという。やむを得ず複数選手が行動を共にする場合、さらに検査前のウェイトトレーニング時はマスク着用を徹底する。そうすれば、万が一、感染者が出ても活動を止めるリスクは減るのだという。各部のマネジメント、保健所との連携が試合催行の可否を占う。

 リーグ側の要職者は8日の時点で、リーグの成立要件について改めて周知するつもりだと言及。これ以上、試合の中止が重なった場合を鑑みてのことだ。

■ディビジョン1第1節 私的ベストフィフティーン

 実施された計4試合から選抜。( )内はチーム愛称のみ。背番号は出場時と異なる場合あり。

1、岡部崇人(イーグルス)…スクラム。

2、三浦嶺(シャイニングアークス)…スクラムが安定。好ラインブレイクを披露。

3、津嘉山廉人(イーグルス)…スクラム、自陣ゴール前での好守。スクラムハーフから球をもらった後のパスさばき。

4、ジミー・トゥポウ(シャイニングアークス)…接点へ強烈な打ち込み。

5、ジェイコブ・ピアズ(ブレイブルーパス)…防御網を埋め、ランナーを正面から受け止める。攻めてもドリブルを交えたものを含めて2トライ。身軽なワーナー・ディアンズとのコンビで大暴れの予感。

6、アマナキ サウマキ(イーグルス)…ロックで先発し、強烈なタックルとランを重ねる。

7、小澤直輝(サンゴリアス)…海外選手のスイープにも屈せぬジャッカル、勝負どころでのロータックル。

8、アマナキ・レレイ・マフィ(イーグルス)…強烈なランを重ねて好調ぶりアピール。

9、齋藤直人(サンゴリアス)…先発の流大がばたつく展開を落ち着かせてきたのを受け、途中出場するや自陣からの「50/22」のキック、突破役を援護してのトライで魅する。

10、アイザック・ルーカス(ブラックラムズ)…左右へパスを放ち、受け手の前進を促す。強烈なタックルをもらいながらボディバランスを保ち、大外へキックパスを放った。

11、ラリー・スルンガ(レッドハリケーンズ)…速さと強さでビッグゲインを重ねる。

12、ミフィポセチ パエア(レッドハリケーンズ)…得点を生むパス。試合終盤のジャッカル。

13、セタ・タマニバル(ブレイブルーパス)…防御に囲まれてもきれと強さで前進! サンゴリアスのサム・ケレビとのマッチアップは迫力満点。

14、尾崎晟也(サンゴリアス)…防御が内側を向くなか、死角で球を呼び込み快走を重ねる。

15、イズラエル・フォラウ(シャイニングアークス)…ハイボールキャッチと突破力。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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