新しい意味や使い方の「引く」「盛る」「推し」使ったことある?
環境の変化や何かの出来事をきっかけに、言葉が本来の意味とは別の意味を持つようになったり、違った使われ方をしたりすることがある。それらの言葉はどれほどまでに使われるようになっているのだろうか。文化庁が2023年9月に発表した「国語に関する世論調査」(※)の結果を基に、その実情を確認していく。
次に示すのは、既存の言葉を使った短い言い方で、新しい意味や使い方が辞書に記載されるようになった5つの言葉について、それを使うことがあるか否かを尋ねた結果。今回挙げた選択肢の中では「引く」がもっとも多くの人に使われており、70.0%が回答している。
「盛る」「寒い」「推し」も、普段からよく使われているように思う人も多いだろうが、実際には5割前後しか使っている人はいない。もっとも設問では単に「使うことがあるか否か」だけであって、使用シーンまでは問われていない。日常生活の中での雑談でなら使ったことがあっても、仕事でのやり取りでは使わないとの人も少なくないだろう。
一方、「詰んだ」は30.5%にとどまっている。元々使うシーンが他の言葉と比べると限定されているのと、フランクな雰囲気が強いため、日常会話以外では使えないとの判断をする人が多いものと思われる。
これを回答者の年齢階層別に見たのが次のグラフ。
今回取り上げた意味の言葉が、いずれも新しいものであることから、いずれもおおよそだが若年層ほど使った人が多く、年上に連れて少なくなっていく。「詰んだ」は16~19歳では82.3%もいるのに対し、70歳以上では7.4%しかいない。「寒い」の40代の値はおそらくイレギュラーだろう。
一方で(イレギュラーと思われる値をのぞけば)「寒い」「推し」「詰んだ」は16~19歳がもっとも高い値で、年齢とともに使う人の割合が減っていくのに対し、「引く」は30代、「盛る」は20代がピークとなっている。その言葉の意味から、使われる場面が学生ではあまり無いのだろうか。
これらの言葉は元々の意味から転じたものが多いため、文脈を読み取ればそれとなく理解できるものも多い。とはいえ、知っている人と知らない人の間でこの言葉が交わされると、意思の齟齬が生じることもあるだろう。いわゆる世代間ギャップのたぐいであり、使う際には注意するに越したことはない。
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※国語に関する世論調査
直近の2022年度分は2023年1月16日から3月15日にかけて、全国16歳以上の個人に対して郵送法で行われたもので、有効回答数は3579人。年齢階層別や男女別などの属性別区分の内容は非公開。
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