日本代表、フランス代表に敗れて「キャパ」を増やしたいと反省。収穫と課題は。【ラグビー旬な一問一答】
ワールドカップフランス大会を来年に控えるラグビー日本代表は、現地時間11月20日午後、本番でも試合をおこなうスタジアム・ド・トゥールーズで秋のツアー最終戦を実施。世界ランクで8つ上回る2位のフランス代表に、17―35で敗れた。
試合後、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチとフッカーの坂手淳史主将が会見した。
以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
——今回のツアーでは、ティア1(伝統的強豪国)に1勝もできませんでした。率直に。
ジョセフ
「素晴らしいラグビーでした。目標意識が見えた。特にフィジカルでは、自分たちの先週からの反省点を活かす部分があり、ここでプレッシャーをかけられた。フランス代表も強かったですが、トゥールーズでできたことはプラスになった。来年、ワールドカップでここへ来ます(予選プール2試合を実施)。その意味ではいい経験ができた。ティア1を相手に試合することに慣れてきた。今年はたくさん試合ができたので。いままで(2020年以降)あまりできていなかった、クオリティの高いチームとの試合がたくさんできた。新しい領域だった。このようなチームと戦えることに、慣れてきている。去年はブリティッシュ&アイリッシュライオンズ、アイルランド代表、オーストラリア代表、スコットランド代表、そして今年はフランス代表などと戦っていけている。ワールドカップに向けてはいい方向に向かっている」
坂手
「今回の6試合(10月は上旬から「JAPAN A」名義でオーストラリアA・3連戦を実施し、29日にはニュージーランド代表に31―38と応戦。11月12日にはイングランド代表ともぶつかっていた)は強度の高いゲームができた。いい経験になった。そのなかで、自分たちの通用する部分もあった。もちろん、それが(長い時間)継続できていない部分も正直、あります。成長しないといけない部分がたくさんあるし、もっとチームのキャパを増やしていかなきゃいけないのもわかっています。ただ、(練習で)やっているラグビー、ジェイミーのフィジカルの部分はいい感じで進んでいる。ここからレベルを上げたいですが、まだこの3試合(ニュージーランド代表戦以降の代表戦)を経験できたことは自分たちにとってプラスになっている。またトゥールーズでできたことで、芝の感触、雰囲気も肌で感じる部分があったので、それもいい経験になったと思っています」
12日に世界ランク5位のイングランド代表に13―52で大敗(トゥイッケナムスタジアム)した日本代表は、ファーストプレーの攻撃で敵陣ゴール前に攻めあがるも逸機。序盤はキック後の防御、接点でのボール保持で相手の脅威を受けて前半12分までに0―8とリードされる。
0―11で迎えた前半21分には、自陣の深い位置から敵陣に蹴り込んでからのカウンターラックを機に自軍ボール保持。そのままペナルティーゴールを決めて3―11と差を詰めた。守っても組織的に前に出るシステム、モールの進路を塞ぐ献身で際立った。
しかし、3―14とされていた同36分。相手ボールラインアウトで圧力をかけながら、ルーズボールを対するスクラムハーフのマキシム・ルクに拾われる。突破を許す。
最後はフランカーのシャルル・オリボン主将にトライを決められた。3―21でハーフタイムを迎えた。
後半は2分にスクラムハーフの齋藤直人、アウトサイドセンターの中野将伍が相手の間隙を突く形で齋藤のトライを生み(10―21)、10―28で迎えた22分には、相手の反則で得た敵陣ゴール前左でのラインアウトからサインプレーを決め、ウイングのシオサイア・フィフィタのフィニッシュを促した(17―28)。
しかし、それを前後してエラーを犯してもいた。
10―21で迎えた後半18分頃、敵陣22メートル線付近左でのラインアウトでノットストレート。好機をつぶし、相手ボールを与えた。
直後の蹴り合いでは、フルバックの山中亮平が対するスタンドオフ、マチュー・ジャリベールの絶妙なキックの処理を誤る。
フランス代表の28得点目(ウイングのダミアン・ペノーのトライ、フルバックのトーマ・ラモス)が生まれたのは、その直後のことだった。
日本代表は終始、献身的に守った。相手のミスがかさんだのもあり、終盤まで競った。
ただ35分には、鮮やかな連係攻撃からトライを許した。17―35。来秋のワールドカップフランス大会に向け底上げが求められるなか、指揮官も船頭も前向きに語っていた。
——「フィジカル」に手応えがあったと話していましたが、具体的には。
ジョセフ
「特に前半、なかなかボールを持てずにディフェンスをたくさんしていました。(前半開始早々に敵陣の深い位置で組んだ)ファーストスクラムでは、グラウンドがめくれてしまいましたが、スクラムでは全体的に対応できた。モールもある程度、止められた。その後のディフェンスも機能していた。先週もそういったところ(セットプレー)でプレッシャーを感じていましたし、これからもそうだと思うので、きょうのことは大変よかった(手ごたえを掴めた)と思っています。アタックでもモメンタム(勢い)を作れますし、ボールを速く動かせた。ただ、最終的にフィニッシュが…。ここ(決定力)は、成長させられる部分だと思います」
——チームの現在地は。
ジョセフ
「自分たちとしてはこの期間をベースキャンプにたとえています。コロナのパンデミックで自分たちのスタートが遅れ、タフな部分もあり、(いまは)ベストチームとの試合で結果を出していくのは難しいと思っています。フランス代表は他のチームに勝っている。いい結果を出すのは難しい。ただ、練習内容をどうゲームで出すかを試している。それが出せれば、自信になる。強い相手に全てを出すのは、難しいとも思っていますが。ワールドカップへの準備は、いい方向に行っています。来年もパシフィック・ネーションズカップなどの国際試合がある。いい形でワールドカップを迎えられたら」
——このレベルの相手に勝つために必要なことは。また、それをどう向上させたいか。
ジョセフ
「ティア1と戦うにはミスが多い。プレッシャー下でミスを犯すと、勝つのが難しくなる。また修正すべきはセットピース、タックルをしっかりと決めることです。相手が身体が大きいので、(相手を倒し切れずに)オフロードをされて、下がりながらディフェンスをするようになると(止めるのが)難しくなる。今日は大概、よくできたとは思いますが、自分たちのソフトモーメント、気を緩めた瞬間があった。そのメンタルの部分も(課題)。ティア1に勝つのにチャンスは1回しかない。それをしっかり仕留めないといけない。それが今回、思ったことです」
坂手
「ほとんど同じなんですけど、僕たちに対して仕掛けてくる部分は明確です(肉弾戦やセットプレーか)。そこで対抗しないといけない。そうしてタイトなゲームをしながら、ここぞのところでトライを獲る、そのディテールを大事にしたい。(直近の)2試合を通してできた部分、できなかった部分は多々あるので、そこに関しては修正していきたいです。
ソフトモーメント、スイッチが切れた瞬間にイージーなトライを獲られている。そこで点数が開いてしまっている部分はあります。きょうも、オールブラックス(ニュージーランド代表)戦でも、イングランド代表戦もそうでした。
ただ収穫としては、自分たちの練習してきたプレー、セットプレーからのディテールを詰めればトライが獲れること。たくさんの選手がプレーしたのも大きな収穫でした。ティア1とアウェーで試合ができたのも、大きな経験でした。
プレーは、どのレベルも上げていきます。スクラムも、ラインアウトも。ディフェンスはもっと脅威になるし、怖いアタックもできるようになると思います」
チームは初めて8強入りした2019年の日本大会以来、2度連続でのワールドカップ決勝トーナメント行きを最低目標に掲げる。
9月上旬からの秋の活動では、日本大会時から選手を入れ替えたなか、リーダー陣を軸に自主的にハードワークする文化を継承したり、緻密な戦術を磨き直したりするのに時間を割いてきた。
これで日本代表は、ワールドカップ前年の最後のツアーを終えた。選手はこれから各所属先へ戻り、12月中旬からのリーグワンを見据える。5月中旬までの国内シーズンを経て、大会直前期の準備に移るのだ。
ジョセフは、リーグワンに関しても言及した。
「(今後は)まずはしっかりと休んでもらいたい。チームとしても60日以上、合宿をしてきましたし、大きな試合もしている。リカバリーをして欲しい。リーグワンのスタイルはティア1と違う。速くボールを動かすラグビーが主流です。一方、ティア1はパワーゲームになる。そのためリーグワンはワールドカップへの準備として考えると難しい部分もありますが、選手にはワールドカップまでにいい準備をしてきてもらいたいです」
ひとまず、日本で戦う代表選手が国際基準を保てるかが注目される。リーチ マイケルは「個人の課題をどれだけ(改善する)か。僕の場合はフィジカル。シーズンを通して、一生懸命やりたいです」と話していた。