スマホがトップでパソコン超え、60代前半では80.4%が利用…高齢者のインターネットアクセス機器動向
団塊世代が定年退職を迎え、人口構成比率上でもさらに高齢層の割合が増加し、高齢社会化が進む中で、高齢層のインターネット利用状況に注目が集まりつつある。就業時と比べてプライベートの時間を多く取れるメリットがある一方、新しい技術には腰が引ける傾向がしばしば見受けられること、さらには身体的な老化に伴い操作に難儀する事例もあることなど、年齢階層間のギャップの原因となる点も指摘されている。今回は総務省が2023年5月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を基に、高齢者がどのような機器を使ってインターネットを利用しているかを確認する。
今調査ではパソコンでインターネットを利用している人は48.6%、携帯電話(従来型携帯電話とPHS、スマートフォン)でインターネットへのアクセスをしている人は75.4%に達している。
高齢層においては中年層までと比べて従来型携帯電話によるインターネットの利用が多く、インターネットの利用をけん引している一面がある。そこで60歳以上に限定して年齢区分を細分化し、「携帯電話」を「従来型携帯電話(フィーチャーフォン)とPHS」と「スマートフォン」に分割し、上記のグラフを再構築したのが次の図。「6歳以上全体」とは調査対象母集団全体のこと。このグラフでは60歳以上の年齢階層がメインとなっており、単に「全体」とすると60歳以上全体と誤解する可能性があることから、あえてこの表記にしている。
すべての年齢階層でスマートフォンの利用がトップ。パソコンの利用率が高めなのは、現役世代の時に使っていた端末を利用し続けている、技術が流用できるのに加え、大きな画面で操作できるため視力が落ちても安心して使えるからだと考えられる。入力時に小さなタッチパネルを使わなくても済むのもメリットに違いない。それでもスマートフォンの利用率には届かない。
6歳以上全体ではスマートフォンによるインターネット利用者は71.2%だが、65~69歳では67.5%と全体よりも下、そして70~74歳では53.3%と5割強になる。また従来型携帯電話(・PHS)の利用率はそれなりに高く、60-74歳では全体値の10.3%よりも高い値を示している。これは「今まで使っていた従来型携帯電話をそのまま利用し続けている」「スマートフォンへ買い替えをすることにより、多くの新しい操作を覚えるのは面倒」「メールや簡単なソーシャルメディアへのアクセスができれば十分」など、高齢者の利用実情が理由であると考えられる。
「メールや簡単なソーシャルメディアへのアクセスのみで十分ならば、どのみちすべての機能が使える、新型のスマートフォンを従来型携帯電話から買い替えても、特に弊害は無いのでは」との意見もあるだろう。スマートフォンでもそれらのサービスは十分以上に利用できる。しかしスマートフォンは従来型携帯電話と比べて多機能=覚えねばならないことが多い。その上、タッチパネル製品が使いにくいなど、高齢層ならではの問題点が、スマートフォンを忌避する理由として挙げられる。さらに豊富な機能を使わなくても料金体系の上で、スマートフォンは従来型携帯電話と比べて割高になるのも、高齢層でスマートフォンが敬遠される一因でもある。
もっとも昨今ではいわゆる「格安スマホ」の展開により、料金面でのスマートフォンのハードルは以前よりも低くなりつつある。ただしその分、利用時のハードルが高く、その点で高齢層は、単純なスマートフォンよりも「格安スマホ」の方が難儀するかもしれない。
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※通信利用動向調査
2022年分は2022年8月末に、「世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、満20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に」「企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に」対し、郵送あるいはオンラインによる調査票の配布および回収の形式によって行われている。有効回答数はそれぞれ1万5968世帯(3万9557人)、2428企業。各種値には国勢調査や、全国企業の産業や規模の分布に従ったウェイトバックが行われている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。