女性のはじめて「ひとり温泉」――。「宿選びのポイント」”ここ”を外さなければ温泉を大満喫!
「ひとり温泉」の宿滞在で大切にしたい6つのことの中で、筆頭に挙げるのは「深夜の入浴の愉快」だ。
ひとり温泉だからこそ、好きな時間に好きなように、お湯とたわむれたい――。
私の至福の入浴タイムは、深夜だ。
旅館に泊まると、深夜2時半頃に目が覚めることがある。
布団から出て、乱れた浴衣を整える。
眠気眼で、スリッパを「ぱたぱた」と鳴り響かせ、木造建築の旅館なら、歩く度に「きゅっ、きゅ」と音が響く。静けさの中で、自分が立てる音だけが聞こえる。
脱衣所に行くと、誰もいない。
浴場の扉を開けただけでもわんと湯気が漂う。
かけ湯をして身体を熱い湯の温度に馴染ませてから、お湯へと浸かる。
「ざぶ~~~ん」
お湯の上澄みが熱く、湯船の底の方は適温である。かき混ぜずに、あえて上澄みのフレッシュなお湯をしばし感じる。
この湯をひとりじめできていることが嬉しくなり、にやにやと頬が緩む。
部屋に戻り布団に入ると、すみからすみまで全身が温まっていて、すっと眠りに落ちた。
このように深夜の入浴を体験されたい方は、事前に入浴できる時間帯のご確認をお忘れなく。
温泉と語り合える環境か
「わたしは温泉と会話ができます」
「温泉がわたしに語りかけてくれるのです」
と言うと、まずきょとんとされて、まじまじと顔を見られる。その眼差しは尊敬か、奇異か。
温泉と語ることができるのは、入浴中も入浴後もひとりだからこそ。
入浴中、湯上がりと肌の変化を敏感に感じ取れる。入浴後には肌を触って、入浴前と入浴後の違いを確かめてみて欲しい。
人によっては貸切り風呂に籠って語りたい方もいるだろう。大浴場でもOKな人もいるだろう。
一般的に露天風呂が人気だが、案外、木造りの共同湯もいい。
いい音がする、匂いも強い。
私は入浴すると、まず両手でお湯をすくい上げ、お湯に向けて「ありがとう」と語りかける。こうした一連の動作で周囲から冷たい視線が注がれることがたまにある。
※この記事は2024年9月6日に発売された自著『ひとり温泉 おいしいごはん』(河出文庫)から抜粋し転載しています。