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女性のはじめて「ひとり温泉」――。「宿選びのポイント」”ここ”を外さなければ温泉を大満喫!

山崎まゆみ観光ジャーナリスト/跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学)
深夜も入浴を愉しめる、福島県東山温泉「向瀧」(撮影・筆者)

「ひとり温泉」の宿滞在で大切にしたい6つのことの中で、筆頭に挙げるのは「深夜の入浴の愉快」だ。

ひとり温泉だからこそ、好きな時間に好きなように、お湯とたわむれたい――。

私の至福の入浴タイムは、深夜だ。

旅館に泊まると、深夜2時半頃に目が覚めることがある。

布団から出て、乱れた浴衣を整える。

眠気眼で、スリッパを「ぱたぱた」と鳴り響かせ、木造建築の旅館なら、歩く度に「きゅっ、きゅ」と音が響く。静けさの中で、自分が立てる音だけが聞こえる。

脱衣所に行くと、誰もいない。 

浴場の扉を開けただけでもわんと湯気が漂う。

かけ湯をして身体を熱い湯の温度に馴染ませてから、お湯へと浸かる。

「ざぶ~~~ん」

お湯の上澄みが熱く、湯船の底の方は適温である。かき混ぜずに、あえて上澄みのフレッシュなお湯をしばし感じる。

この湯をひとりじめできていることが嬉しくなり、にやにやと頬が緩む。

部屋に戻り布団に入ると、すみからすみまで全身が温まっていて、すっと眠りに落ちた。

このように深夜の入浴を体験されたい方は、事前に入浴できる時間帯のご確認をお忘れなく。

温泉と語り合える環境か

「わたしは温泉と会話ができます」

「温泉がわたしに語りかけてくれるのです」

と言うと、まずきょとんとされて、まじまじと顔を見られる。その眼差しは尊敬か、奇異か。

温泉と語ることができるのは、入浴中も入浴後もひとりだからこそ。

入浴中、湯上がりと肌の変化を敏感に感じ取れる。入浴後には肌を触って、入浴前と入浴後の違いを確かめてみて欲しい。

人によっては貸切り風呂に籠って語りたい方もいるだろう。大浴場でもOKな人もいるだろう。

一般的に露天風呂が人気だが、案外、木造りの共同湯もいい。

いい音がする、匂いも強い。

私は入浴すると、まず両手でお湯をすくい上げ、お湯に向けて「ありがとう」と語りかける。こうした一連の動作で周囲から冷たい視線が注がれることがたまにある。

※この記事は2024年9月6日に発売された自著『ひとり温泉 おいしいごはん』(河出文庫)から抜粋し転載しています。

木造の浴場は音響もいい(撮影・筆者)
木造の浴場は音響もいい(撮影・筆者)

観光ジャーナリスト/跡見学園女子大学兼任講師(観光温泉学)

新潟県長岡市生まれ。世界33か国の温泉を訪ね、日本の温泉文化の魅力を国内外に伝えている。NHKラジオ深夜便(毎月第4水曜)に出演中。国や地方自治体の観光政策会議に多数参画。VISIT JAPAN大使(観光庁任命)としてインバウンドを推進。「高齢者や身体の不自由な人にこそ温泉」を提唱しバリアフリー温泉を積極的に取材・紹介。『行ってみようよ!親孝行温泉』(昭文社)『女将は見た 温泉旅館の表と裏』(文春文庫)『宿帳が語る昭和100年 温泉で素顔を見せたあの人』(潮出版社)温泉にまつわる「食」エッセイ『温泉ごはん 旅はおいしい!』の続刊『ひとり温泉 おいしいごはん』(河出文庫)が2024年9月に発売

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